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阻む者②

「君、はやいね」


月に照らされたジークの無機質な顔。

それを見上げ、メイリンは微笑む。

そしてその眼差しに宿るは、ジークに対する好奇。


「今のどうやったの?」


声を響かせ、姿勢を起こそうとするメイリン。

しかし、ジークは間髪入れずメイリンの顔面に拳を叩き込む。


「収納する。お前の反射神経と動体視力。そして」


「物理耐性を」


という声を残して。


メキッ


骨が軋む音。

それが響き、メイリンは後方へと殴り飛ばされる。

そして枯葉のように転がり、壁へと激突。

拍子に、壁に亀裂が走る。それは蜘蛛の巣のように広がり、ジークの拳の威力が凄まじいことを物語っていた。


拳に付着した、メイリンの血。

それを滴らせ、ジークはメイリンを見る。


壁に背を預け崩れ落ち、頭を下げるメイリン。

ぽたぽたと滴る大量の鼻血。

それはメイリンの軽装を赤黒く染め、まるで最初からそんな色だったと錯覚させる程だった。


そのメイリンの姿。

それを見定めてもなお、ジークは止まらない。


「収納する。お前の心臓を」


染み渡る、ジークの言葉。

倣い、メイリンの心臓が収納されーー


刹那。


「ぎゃあああ!!」


という悲鳴が周囲に響く。

そして更に響く、声。


「どッ、どうした!?」


「い、いきなり人が倒れたんだ!! む、胸を抑えて。突然」


「な、なんだと?」


「い、今すぐメイリン様を呼べ!!」


焦燥したやり取り。

その後に続く、人々の地を駆ける音。

それを聞き、ジークは感じた。


視線の先。

そこでぴくりとも動かなくなった、メイリン。

そこにどこか違和感を覚える。


「ジークさま」


ジークの側。

そこに佇み、レオナはなぜか剣を抜く。


「ワタしは、あなたをコロします」


響く声。

それにジークが視線を向けた、瞬間。


「ねぇ、荷物モチさん。今のはイタかったよ。中々、いいモン持ってるね。どう? ワタしのトコロにこない? いっしょに、このセカイをタノしまない?」


レオナの口調。

それがメイリンのソレに代わり、ジークへと問いがなげかけられる。


ぽとりと剣を落としーー


「ねぇ、イイよね。ワタシ。あなたのヨウな、強い人。スキなんだ。フツウの人間じゃない、チカラ。ダイすきなんだ」


そう呟き、ジークの身に絡みつくレオナを借りた【メイリン】。

それを振り解き、ジークはレオナの目を見据える。

肩に手を置き、その瞳に闇を宿しながら。


「コワい目。でも、ソレも素敵だな」


ジークの頬。

そこに手を触れ、レオナは微笑む。


「もっとミせて。その、目」


メイリン。

拳聖の名を冠するその存在。

天賦の肉体を持ち、そして己を見たモノの精神と肉体を支配する存在。

だとするならば、この街の住人すべてがメイリンに肉体と精神を支配されし者。


「わたしはシなないよ。君のその得体の知れない力を使ったとしてもネ。この世界でワタシを見た、存在。それを全て殺すこと。君に、そんなコトできるかな?」


響く、楽しそうなメイリンの声。

それにジークは、吐き捨てる。


「その程度でオマエが死ぬなら、容易いことだ」


「収納する。メイリンを見たモノ全てを」


そう殺気に満ちた声を発し、力を行使したのであった。

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