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武闘家③

時刻は夜の9時をまわったところ。

壁にかけられた時計がそう告げている。


鳴り響く、時計の音。

それを聞き、ジークは違和感を覚えていた。


ゴウメイは、倒れない。


ジークの力。

それが行使された時、あがったのは悲鳴或いは絶叫。

そして鮮血が舞い、周囲が赤く染まる。

しかし、ゴウメイは足を失ってもなお笑っていた。

加えて、血すらもそこには現れない。


「なぁ、ジーク。これがてめぇの力か?」


片足立ち。

その格好で声を響かせ、声のしたほうを仰ぎ見るゴウメイ。


「成程な。こいつは中々の力だ。ココネとガルーダがヤラれたのも合点が行く」


再生した、ゴウメイの足。


「収納する。お前の目を」


漆黒に包まれ、消滅するゴウメイの両目。

ココネに対し使用し、無様は最後を演出したその収納。

だが、ゴウメイの余裕は崩れない。

むしろ益々陽気になり、鼻歌まで囀るゴウメイ。


再生される、両目。


「収納するーー」


響き続ける、ジークの言葉。

しかしゴウメイはそれを全て再生し、元に戻った。


その姿。

それに、「ジーク、さま」そう声をあげ、ジークの前に身を置くレオナ。

そして剣を抜き、レオナはゴウメイへと刃先を向ける。


だが、そのレオナの肩に手を載せたジーク。

そして、呟く。


「剣を、俺に」


「カシこまりました」


ジークの言葉。

それに頷き、自らの剣をジークに譲るレオナ。


剣を受け取り、ジークはレオナの前に歩み出る。

その光景。

それを、ゴウメイは笑った。


「おい、ジーク。負け組でゴミの分際でも女の前じゃいい格好がしてぇのか? 笑わせてくれるぜ、全く」


見開かれる、双眸。

そこに愉悦を宿し、まるで馬鹿を見るかのようなゴウメイの小馬鹿にしたような雰囲気。


「ココネとガルーダ。その二人を殺っていい気になってんじゃねぇぞ、負け組。言っておくが、てめぇに俺は殺せねぇ。負け組でゴミなてめぇじゃぜってぇにな」


ゴウメイの嘲り。

それにジークは、剣の一振りをもって応えた。


【剣術×999】


それを取り出し、自身に付与して。

闇色の斬撃。

それが放たれ、瞬きの間にゴウメイを両断。

ずるりとズレ落ち、二つの肉塊と化すゴウメイ。


しかし、声は収まらない。


「ジーク。てめぇに俺を殺せねぇ」


「何故かって? そりゃ、てめぇが負け組でゴミくずだからだ」


周囲を見渡す、ジーク。

視界にうつるのは、倒れ伏した子どもたちの姿。

おかしなところはなにもない。


瞬間。

ジークは見る。


両断された、ゴウメイ。

それがまるで時間を逆巻きにしたかのように元の姿に戻っていくのを。はっきりと。


ゴキッメキッ


くっつき立ち上がり、両手を広げ嗤うゴウメイ。


「はははッ、ははは!! どうだッ、負け組!! 驚いたか!?」


「殺したい。コロす」


響く、嗤い。

それに殺意を覚える、レオナ。


「何回でもコロス。殺してやる」


「無駄だッ、お嬢ちゃん!!」


手のひらをかざし、ゴウメイはレオナに力を行使する。


【時間操作……対象の時間を操作する】


「ここに来る前の時間に、あんたを戻す。時間はそうだな。1時間前にしておこうか」


刹那。

レオナは、1時間前に居た場所へと飛ばされてしまう。

ロッカスの屋敷の玄関口。その場所へと。


「この力があれば俺は無敵だ。自分の時間を操作し、何時間前でも何十年前でも何時間先でも何百年先でも自在。さっきのアレも。俺がてめぇに力を行使した瞬間に、時間を遡行させたんだよ。わかるか? 負け組。まぁ、わからねぇだろうな。てめぇのそのゴミ溜めみてぇな脳みそではな」


ぺらぺら。

自慢げに言葉を並べた、ゴウメイ。

自ら墓穴を掘るその姿。

それをじっと見据え、ジークは闇を纏う。


「まぁ、いいぜ。来いよ、負け組。次はどんなことしてくれるんだ?」


「収納する。この空間における時間という概念を」


響く、ジークの言葉。

途端。

空間が歪み、時間そのものが収納される。


【収納物】

 空間内の時間


しかし、ゴウメイは未だ自信満々だった。


「おい、負け組。どうした? ビビってんのか?」


中指を立てる、ゴウメイ。


「そりゃそうだろうな。強すぎる俺様が怖くーー」


なったのか?


瞬間。


時間という概念。

それがなくなり、時間が引き戻されゴウメイの右足が消滅する。

目を見開く、ゴウメイ。


途端。

その両目も消滅。


叫びをあげ、ゴウメイは時間を戻そうとする。

だが、それは叶わない。

行使されたジークの力。

それが次々と引き戻され、ゴウメイを壊していく。


腕。左足。耳。舌。内臓。骨。


声にならぬ悲鳴。

それをあげ、その場に砂上の楼閣のように崩れ潰されるゴウメイの身体。


しかし、ジークは止まらない。


「一回で済むと思うなよ」


吐き捨て、ジークは時間を再び元に戻す。

倣い、ゴウメイの身体は元のカタチに戻っていく。


「や、やめてくれ。た、頼む。こ、このまま」


後退り、ジークに懇願するゴウメイ。

だが、ジークに容赦などない。


「収納する。この空間における時間という名の概念を」


「いッ、いやだぁぁぁぁ!!」


虚しくゴウメイは再び崩れていく。

その様。

それをジークは数十回と繰り返し、最後に吐き捨てた。


「収納する。この空間を」


こうしてゴウメイは、ジークの【収納物】の中で永遠に終わらぬ苦痛を味わうことになったのであった。


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