武闘家①
命を弄ばれる、ロッカス。
その様を見つめ、ジークはロッカスの記憶を収納しようとした。
ゴウメイの居場所。それを探る為に。
しかし、そこでジークは気づく。
自分の足元。そこにひらめく一枚の紙の存在に。
拾い上げ、目を通すジーク。
果たしてそこに書かれていたのは、ジークが求めるゴウメイの居場所の情報だった。
〜〜〜
宴を開く。
今晩、俺の武闘道場に来い。
酒池肉林の宴。楽しいぜ。
場所は、俺の収める街。
俺の師匠。拳聖様のお膝元。
招待状はこの紙だ。
〜〜〜
くしゃりと。
ジークはその紙を握りしめる。
そのジークの姿。
それを横目に見、レオナは声を響かせた。
「ジーク、さま。どうかナされましたか?」
レオナに答えない、ジーク。
それにレオナは、ロッカスへの弄びを続行する。
「ハイ。ツヅけます。続けます」
ロッカスの舌。
それを引きちぎり、ひらひらと揺らすレオナ。
そしてその足はロッカスの股間を踏み締め、ぐりぐりとすり潰していた。
白目を晒し、全身を痙攣させるロッカス。
しかし、死ぬことはできない。
なにがあっても、絶対に。
「……」
無言で、ジークは窓際へと歩み寄る。
なにかの気配。それを感じて。
ロッカスの顔面。
そこに剣を突き立て、ジークの後を追うレオナ。
「イきます。レオナは、ジークさまといっしょに」
「イきます。いきます。ジーク、さま。と、いっしょに。いき、ます」
そんな声を響かせ、親の後を追う子どものように。
刹那。
外から響く、勇ましい掛け声。
「アレン様によればッ、この屋敷に化け物が居るとのこと!!」
「此度の物騒な出来事!! その元凶がこの中に!!」
「ガルーダ様とココネ様ッ、そのお二方を屠った罪!!
そしてッ、ディアナ殿と街ひとつを無き者にした所業!! 許すわけにはいかない!!」
「火を放てッ、魔法部隊は後方で待機!! 波状攻撃に備えよ!!」
「「かしこまりました!!」」
窓際に立った、ジーク。
その視界に広がるは、【化け物討伐】の王命を受け勇者より力を与えられし者たちの姿。
その数、およそ数百。
その者が皆、アレンよりーー
【剣術×100】
【魔力×100】
【弓術×100】
【魔法知識×100】
を与えられ、一段上の強者に格上げされていた。
「ジーク、さま。なぜ、みんな。ここに?」
「勇者の力……あいつのことだ。いくらか金を積まれたんだろう」
「ゆうしゃの、ちから」
ジークの言葉。
それを反芻し、しかし怖気付くことはないレオナ。
「殺します。みんな、レオナが」
窓を開けようとする、レオナ。
しかしそれを遮る、ジークの闇。
ジークの足元。
そこから闇が広がり、同時にジークに収納されし【世界中の魔物】の轟きが世界を震わせる。
同時に、ジークは呟く。
「奴等の存在を収納してやってもいい。だがーー」
「たったの数百でなにができる。オレと殺りてぇなら、てめぇを勇者に選んだ神様でも引っ張ってくることだな」
呼応し、ジークは一体の魔物を取り出す。
【魔物誘引×∞】
それと共に、かつて世界を飲み込みしモノの名をジークは響かせる。
「出てこい、天狼」
と、躊躇いなく天狼の名を呼んだのであった。