横流しの代償①
幼い悲鳴と絶叫。
そして肉が裂かれ、骨が砕かれる音。
それを聞きながら、ジークは二人の記憶を収納する。
〜〜〜
"「ゴウメイさーん。はやく餌を横流ししてくださいっ。みんなお腹空いたって騒ぐんです」"
"「勇者様の後ろ盾。それをもっと使ってくださいませんか? 貴方の顔があれば、なんでもできる世の中なんだから」"
ゴウメイの両腕。
それを左右から引っ張り、ゴウメイに愛らしく甘えるルリとマリ。
それに記憶にうつる武闘家はいい気になって笑っていた。
"「全く。お前らはうめぇな。俺が幼いガキに弱いって知っててそんな態度をとりやがる」"
"「知ってますよっ。ゴウメイさんがちっちゃい子どもたちが好きなことぐらい」"
"「何人ぐらい。欲求処理で弄んでポイってしたんですか? 横流しされる、餌。その中に幼い子たちが極端に少なかったですけど? ふふふ。両手の指で数えられるんですか?」"
"「えーっと。俺の指を全て足して、×10したぐれぇだな。世界を救った後、溜まってたモンを掃き出す為に」"
"「きゃーっ、こわーい。わたしも食べられちゃう」"
"「ぼくはタべても美味しくないですよ」"
大人びた上目遣い。
それを駆使し、二人はゴウメイに抱きつき甘え続ける。
それにゴウメイは上機嫌になり、声を響かせた。
"「がははは。可愛いな、てめぇら。よっしゃッ、サービスとして10人くらいタダで横流ししてやる!! 知り合いのお偉いお方に頼んでな」
それに笑い合う、3人。
そしてそこでジークは瞼を開ける。
〜〜〜
響き続ける、幼い断末魔と魔物たちの咀嚼音。
飛び散り続ける、ルリとマリの血肉と骨。
その光景。
それをジークは、収納する。
【収納物】
ルリとマリが喰われ続ける光景×1
闇に包まれ、収納される光景。
そして、ルリとマリはジークの収納物の中で永遠に魔物たちに喰われ続けるのであった。
静かになった、周囲。
「……」
無言でジークは、踵を返す。
そのジークに、レオナは問う。
「ジークさま。どこへ。ドコへ行かれるのですか?」
その声に足を止め、ジークは後ろを仰ぎ見る。
そこには、未だ腹から血を流し「ジークさま。レオナも。レオナも。いっしょに」そう言ってふらつき微笑む壊れたレオナの姿があった。
それに、ジークは答える。
「人身売買。それを行っているお偉いお方。そいつのことを知ってるか?」
「はい、ハイ。知っています。むかし、むかし。ワタシが王室の晩餐会に招かれたトキ。誇らしげにお話しサレていた人がイました。その時、トても。とても。そのお方を、殺したいと思いました」
「そいつの場所は?」
「ゴ案内。いたします」
頷き。
ふらつき、壊れた人形のようにジークの元へと近づいてくるレオナ。ぽたぽたと血を滴らせながら。
その姿に、ジークは行使する。
「収納する。腹の傷を」
傷が収納され、ふらつきが収まるレオナ。
それに、レオナは感謝した。
「ありがとうございます、ジークさま。ズイぶん。ラクに、なりました」
レオナの記憶。
それを収納するという選択肢もジークにはある。
しかし、ジークは敢えてレオナと共にそのお偉いお方の居る場所に向かうことを選んだのであった。
〜〜〜
「ゴウメイ様。また、なにか御用でも?」
「あぁ。また、横流しをしてほしくてな」
「また、ですか。ゴウメイ様も物好きですなぁ」
人里離れた森の奥。
そこに佇む、古臭くも大きな屋敷。
その玄関口で、二人は互いに欲望に満ちた笑みを浮かべていた。
「数は100、魔物の餌にする用。それと」
「貴方の欲求処理用。それの幼い子どもを10人。ですかな?」
「わかってるじゃねぇか。流石、売人だぜ」
欲に満ちた、二人。
しかし二人はまだ知らない。
これから降り注ぐ、最悪の災厄。
そのことをつゆとも知らないのであった。
〜〜〜