魔物使い②
〜〜〜
「レオナさんが行方不明? あの団長様が?」
「らしいぜ。しかも、レオナさんが率いていた騎士たちも行方をくらませてるみてぇだ」
「近頃、物騒なことが多いな。聞いたところによると、辺境の村が女、子どもを残し、全滅したらしい」
「こえぇな、おい。この王都は大丈夫なのか?」
「大丈夫だろ。世界を救った勇者様が結界を張ってくださってるみてぇだし」
「流石、勇者様。ならこの王都は安泰だな」
「あぁ、よかったぜ」
道ゆく人々。
その会話を聞き足を止め、ルリとマリは手を繋ぎ鼻歌を囀る。
赤と青の髪。そして、赤と青の双眸。加えて赤と青のローブ。
背丈も同じなら、顔立ちもそっくり。
唯一違うのは、ルリが女でマリが男だということ。
「ねぇっ、お兄ちゃん」
「なんだい?」
「今のお話。聞こえた?」
「うん。聞こえたよ」
「どう思う?」
「うーん。最高」
聞こえてきた物騒な出来事。
それに笑顔を見せ、「女、子どもを残して全滅。聞くだけで楽しそうじゃないか」そう声を響かせ、マリは瞳を輝かせる。
それに倣い、ルリもまた瞳を輝かせ続けた。
「お兄ちゃんっ。その村に行ってみようよ」
「いいね、それ。行こう行こう。女、子ども。ついでに餌の調達も捗りそうだ」
「うんっ。ゴウメイさんの横流し。それを待つより早いかも」
互いに頷き合う、二人。
そして二人は無邪気に駆け出し、惨劇という名の喜劇が行われた村にその胸を高鳴らせたのであった。
〜〜〜
「グルルル」
血の臭い。
それに誘われ、廃れた村へと現れたダークウルフの群れ。
その群れを見渡し、ジークは無機質に行使する。
「収納する。お前たちの記憶を」
ダークウルフ。
一度喰らった獲物の味を覚え、その匂いを覚えどこまでも追跡する漆黒の狼。集団で行動し、帰巣本能が強い。
その魔物がこれほどまでに群れを為し、この廃れた村に現れた理由。それをジークは知る必要があった。
【収納物】
ダークウルフの群れの記憶×25
ジークを囲む、25頭のダークウルフ。
その記憶を収納し、ジークは取り出す。
そして瞼を閉じ、記憶を再生するジーク。
"「ほらっ、今日は食べ放題だよ。たくさん食べろっ。この村は勇者様に仇を為した村。勇者様が壊滅を進言した村。だからなにをしても許される」"
"「あはははッ、泣いてるの!? 痛いの? 苦しいの? もっと泣き叫んでよ。魔物たちの食卓。それを華やかにする為にね」"
ぐちゃッ
べきッ
朧げに見える、二人の幼い者の姿。
赤と青に身を包み、歪んだ笑顔を浮かべる幼い魔物使いの姿。加えて、故郷の村人たちが食い散らかされる様。それをはっきりと。
開かれる、ジークの瞼。
そこに蠢くは、闇。
じりじりとジークに詰め寄る、ダークウルフたち。
その魔物たちを見据え、ジークは呟く。
「収納する。24頭の心臓を」
瞬間。
24頭ダークウルフたちは目から光を無くし、即死。
その場で卒倒し、口から泡を吹きその命を散らす。
残った一匹のダークウルフ。
「……っ」
死んだ仲間たちに表情を変え、脱兎の如き速さでその場から逃げ去っていく。
それを見据え、ジークは更に力を行使した。
【収納物】
千里眼×2
透視×2
それを取り出し、逃げるダークウルフを目で追うジーク。
ダークウルフの帰巣本能。
それを辿れば、奴等の居場所が掴める。
そうジークは確信していた。