魔物使い①
ガルーダの死を見届け、しかしジークは更に収納する。
【剣の才】
勇者が見定めたガルーダの才能。
それをジークは、自身へと収納する。
そして、手のひらをかざし、ジークはガルーダの死体へと火球を撃ち放つ。
ココネの魔法知識×999999
魔力×999999
を取り出して。
燃え上がる、亡骸。
立ち昇る、黒煙。
その光景を見つめ、ジークは「軍団召喚×∞を俺の中に収納」そう呟く。
倣い、軍勢は皆、闇に包まれその場から消失。
残るは、ジークただ一人だけとなった。
「剣の才。それを取り出し、俺に」
呟かれる、ジークの言葉。
呼応し、ジークの中に【剣の才】が芽生える。
それを感じ、ジークは足元に転がる木の枝を拾う。
そしてそれを【あらゆるモノを剣にする力】で剣にし、軽く振るう。
瞬間。
ジークの身長ぐらいの闇色の斬撃。
それが放たれ、飛来先の大きな岩を真っ二つにしたのであった。
〜〜〜
薄暗い、路地裏。
そこでその三人は、ひそひそと会話をしていた。
一人は軽装にがっしりした体格。髪は茶色。短髪。
他の二人は小柄で赤と青のローブをその身に纏っている。
その三人の正体。
それはーー
「ゴウメイさまぁ。また新鮮な餌を流してくださいよ。わたしの可愛いペットたちがお腹を空かせちゃってぇ」
「やっぱり生きた人肉が一番いい。でも、この世界じゃ魔物に人肉を与えたら罪になっちゃう。よくて終身、悪ければ死刑になっちゃうからね」
「でも、でもぉ。勇者様のお仲間の一人の貴方様なら……勇者の仲間ってだけでバれても捕まらない」
「いいぜ。金さえ払えばいくらでも餌を横流ししてやる」
魔物使いのルリとマリ。
そして勇者パーティーの一人、武闘家ゴウメイだった。
三人はその顔を欲に歪め、勇者のもたらした平和の恩恵に預かっていた。
魔王が存在している頃。
その時は魔王という巨悪に目が向けられ、治安の悪化には目が向けられていなかった。
しかし、魔王が倒され平和になった世界では目が瞑られることがなくなってしまった。
「流石、ゴウメイ様。話がわかるぅ」
ゴウメイの身体。
それに抱きつき、上目遣いをさらす赤目のルリ。
そのルリに、ゴウメイは笑う。
「はははッ、してることは真っ黒なのに見た目だけは純真無垢だな!!」
「純真無垢? うんっ。わたし、見た目だけでいろんな人を騙してきたからねっ」
歪んだ笑顔。
それをたたえ、兄である青目のマリを仰ぎ見るルリ。
「ねっ、お兄ちゃん。わたしたち色んなことをしたよねっ?」
「した。とある村の仲の良かった二人。それを生きたまま、魔物の餌にしたこともあったっけ?」
嗜虐に満ちた、マリの笑み。
「他にも。泣き叫ぶ母の前で、ぼくのケルベロスにクソ餓鬼を食べさせたこともあったな。あれは楽しかったよ。心地よい悲鳴。とても、心が洗われた」
「お兄ちゃんっ」
「またしてみたいな。あの、喜劇を」
二人揃って、楽しそうに笑うルリとマリ。
その姿に、ゴウメイもまた笑う。
そしてそのゴウメイの胸中。
そこではーー
"「あの負け組の故郷だったか? 生きたまま食われた村人ってやつは。まっ、んなことどうでもいいか」"
そう呟かれていたのであった。
〜〜〜