女騎士③
しかし、それに気づかないガルーダたち。
未だ勝ち誇った表情をたたえ、吠え続ける始末。
「闇なんて纏いやがってッ、負け組ィ!! てめぇッ、魔王気取りかよ!!」
笑い、大気を剣にしようとするガルーダ。
手のひらを広げ、目に見えぬ真空の剣をそこに掴もうとした。
「ゴミッ、てめぇにはこんな芸当できねぇだろ!! ココネとはワケが違うぜッ、あたしは!!」
「出てこいッ、剣!! 大気ッ、真空となれ!!」
ガルーダの足元。
そこから吹き上げる、風。
それにシルフもまた声を張り上げる。
「これで負け組のゴミはおしまいッ、ガルーダ様の真空のひと薙ぎ!! それは山さえも真っ二つにするんですから!!」
「そうだぜッ、これでてめぇもーーッ」
おしまいだ!!
威勢よく、創られた剣を握りしめようとするガルーダ。
しかし、ガルーダの握りしめた手のひらが掴んだモノはただの空気のみ。
だが、ガルーダは三度叫ぶ。
「くそッ、気分が上がりすぎて失敗しちまったか。もう一回だ!!」
今度は意識を集中し、ガルーダは剣を念じる。
そして再び、剣を握りしめーー
案の定、空を握る手のひら。
そこでようやく、ガルーダは気づく。
顔に滲む汗。
「剣ッ、出てこい!! 出てこいッ、出てこい!! くッ、くそったれぇ!! どうしたんだよッ、おい!?」
取り乱す、ガルーダ。
その変わりよう。
それに、シルフもまた焦り始める。
「が、ガルーダ様? ど、どうなされたのですか?」
そんな二人の混乱。
ジークはそれを尻目に、声を発する。
「大気。剣となれ」
あらゆるモノを剣にする力×1
それを取り出し行使する、ジーク。
瞬間、ジークの手のひらに握られた真空の剣。
吹き荒ぶ風。それはあらゆるモノを切り裂く、大気の剣。
目を見開く、ガルーダ。
それもそのはず。
自分がつくろうとした、剣。
それを負け組のゴミと罵った相手が、なぜか握りしめている。
それに、ガルーダは叫ぶ。
目を血走らせ、叫んだ。
「ゴミィッ、てめぇなにをしやがった!? あッ、あたしの力!! それをなぜッ、てめぇが使ってやがる!?」
「……っ」
響いた、ガルーダの声。
それにシルフも気づく。
自身もまた範囲治癒×1000。
それが使えなくなっていることを。
息を飲み、後退りを始めるシルフ。
そのシルフに声が飛ぶ。
「逃げられると思うなよ、ゴミ」
「ひぃっ」
こちらを見据える、ジークの姿。
その両目に、千里眼と透視を宿しシルフを見据えるジークの眼差し。
それにシルフは身を震わせ、蛇に睨まれた蛙のようにその場から動けなくなってしまう。
呼応し、背後に控えていた軍団たちもその場に片膝をつきジークに忠誠を誓う有様。
軍団召喚×∞
その力を持つ者に付き従う、自我なき兵たち。
「くッ、くそったれぇ!! この負け組がぁ!! あたしをッ、舐めるんじゃねぇ!!」
腰に差したただの剣。
それを抜き、ガルーダは駆ける。
ジークに向け、怒りに任せて。
そのガルーダを見つめ、ジークは両手を広げる。
そして、吐き捨てた。
軍団召喚×∞
それを取り出し、「出てこい、兵たち」と。
振動する、大気。
そしてそのモノたちは現れる。
広がる漆黒の闇。そこから、自我なき兵たち。
それが、大量に。
呼応し、膝をつきジークに忠誠を誓っていた兵たちも身を起こす。
「いッ、いやぁ!!」
涙目になり、その場に崩れるシルフ。
そのシルフを囲み、兵たちは「殺せ」というジークの意に応える。
つんざく、シルフの断末魔。
飛び散る血肉。
剣で弄ばれる、シルフの幼い身体。
「ぃッ、ぃだい!! ぁぎぃ……っ。ゴミにぃッ、このッ、シルフがぁ!! くそッ、もっとッ、勇者のもたらした平和の中ッ、そこで甘い汁を啜りたかったのにぃ!!」
べちゃっ
エルフの耳。
それが引きちぎられ、ゴミのように投げ捨てられる。
それにシルフは目から光を無くし、最後まで「このわたしが……このわたしがぁ」と欲を吐き出し、その命を散らしたのであった。