故郷③
倒れ伏し、絶命したディアナ。
そのモノ言わぬ亡骸を見下ろし、ジークは手のひらをかざす。
そしてジークは建築知識×999を収納し、「この屋敷も収納する」そう呟き、屋敷さえも収納したのであった。
〜〜〜
「ここが例の」
「はい」
「で、ですが。ここは森だったはず。あ、あたりの木々も一本もない。加えて、ど、どうして村があるのですか?」
「……っ」
目の前に広がる、光景。
かつて森だった場所。
そこに村が広がる光景。
それに騎士たちは息を飲み、中にはこの現実を受け入れることができず「お、俺たちは夢を見ているのか?」と呟く者たちえさえ現れる始末。
その騎士たちを纏めるは、団長の声。
「落ち着け、皆の者。今はこの場所の調査をすることが先決。我ら誇り高き騎士団が狼狽えてどうする」
透き通った女騎士団長レオナの声。
それに騎士たちは落ち着きを取り戻し、その場に整列する。
そしてレオナの指示の下、村の調査をはじめたのであった。
〜〜〜
「化け物。化け物。化け物だ」
虚な眼差し。
それを晒し椅子に座り、同じ事ばかり呟くディルク。
その様に、アレンは溜息をこぼす。
「完全に壊れてんな」
「そうだな」
「こ、ココネ様が。ココネ様が食べられた。ら、雷竜に、雷竜にぃ」
「おい」
ぺしぺしと。
軽くディルクの頬を叩く、アレンのパーティーである女騎士ガルーダ。
それにディルクは更に発狂してしまう。
「ひぃぃぃ。こ、殺される。みんな殺される。あの化け物に。みんな、みんな!!」
「ダメだこりゃ」
「ガルーダ」
「ん?」
「そのゴミを切り捨てろ。使い物にならねぇゴミは必要ねぇ」
「かしこまりました、勇者様」
アレンの命。
それににやけ、腰に差さった剣を抜くガルーダ。
そして一太刀の元にディルクを切り捨て、ガルーダは自身の頬に血飛沫を浴びそれを舐めとる。
「で、勇者様。どのように? ココネの仇。それをとりにいくのか?」
自分の後ろに佇む、アレン。
その勇者を仰ぎ見、ガルーダは剣を鞘へと戻す。
そのガルーダに、アレンは声を発した。
「仇? ココネの代わりなら、いくらでもいる」
「なら」
「ただ、面白くねぇ。あのゴミ負け組に好き勝手やられるのがな。俺のもたらした平和。それを荒らしやがって。おかげで、金が入ってこねぇ。王もまずは、諸悪の根源を断つ。とか抜かして、金をそっちに回してやがる」
「ブレねぇな、勇者様」
「ガルーダ。あのゴミの始末に、俺の力を貸してやる。好きに使え」
そう言い、アレンはガルーダに手のひらをかざす。
そしてガルーダは手に入れる。
【軍団召喚】
という名の力。
それを、その内に。
〜〜〜
屋敷を収納し、小高い丘から街を見下ろすジーク。
行き交う人々は皆笑い、生活を謳歌している。
その様。
それに、ジークは頭を抑える。
「見せるな、ミせるな。幸せな光景を」
収納された良心。
それがジークの理性を剥ぎ取る。
「幸せな光景。いらない。全部、イらない」
呟き、ジークは街に手のひらをかざす。
そして声を発した。
「収納する。この街を。幸せな人々を」
呼応し、ジークの視界が闇に包まれ街全体が収納されたのであった。