故郷②
「あ、あんた一体」
「はやく。ディアナに」
「あ、あぁ。ついてこい」
ジークの雰囲気。
その異様さ。
それに老人は畏れ、ジークを案内していく。
ディアナの屋敷。
そこへと。ジークの意に応える為に。
そして、二人はディアナの屋敷の前にたどり着く。
大きな屋敷。
街中にあって一際目立つ外観。
レンガ造りのソレは立派そのもの。
「こ、ここがディアナ様の」
「……」
老人の言葉。
それを待たず、ジークは屋敷へと進んでいく。
闇を引き連れ、ただ一点に玄関に向けて。
閉じられた扉。
そこに辿り着く、ジーク。
そして、声を発する。
「ディアナ、出てこい」
その無礼な声。
それに、応えるは野太い声。
「なに者だ」
「ジーク」
「ジーク? 聞かぬ名だな。なに用だ」
「ディアナを出せ」
刹那。
開かれる、扉。
そして現れたのは、つい先日ディアナとパーティーを組んだ剣士だった。
熟練の剣士。
漂うオーラ。それはまさしく、強者そのもの。
「無礼な奴だ。ディアナ様に用があるならーー」
「ディアナを、出せ」
ジークの眼差しと声。
その闇と殺気に彩られた二つに、アランは一歩引いてしまう。
しかしアランは震えを堪え、剣を抜こうとした。
「き、きさま」
「……」
「……っ」
ジークの眼光。
それに身動きが取れず固まってしまう、アラン。
そのアランの側。
そこを通り、ジークは無表情で屋敷内へと進む。
瞬間。
アランはその場に崩れ落ち、「ば、化け物だ」と呟き、肩で息を切らすことしかできなかった。
〜〜〜
「記念すべき僕の旅立ちまで残り一週間」
「後は魔法使いさえパーティーに加われば完璧だ」
「治癒士と武闘家は明日合流予定だからね」
豪奢な部屋。
そこでワイングラスを揺らし、ソファでくつろぐディアナ。
金髪に、苦労を知らない顔つき。
そして童顔。
「天才建築人としての見聞。それを広げる為にぼくは旅に出る。そしてぼくは世界一の建築人になる。今でも国一番なんだけどね」
瞬間。
ドカッ
蹴破られる、扉。
飛び散る木片。
目を見開く、ディアナ。
果たしてそこに立っていたのは、ディアナのよく知る人物だった。
「じ、ジーク?」
ディアナは立ち上がる。
「……」
返事を返さない、ジーク。
代わりに、声を響かせた。
「あの時は、世話になったな」
「あ、あの時?」
「随分と罵ってくれたな。アレンの影で、俺の故郷を小馬鹿にして。俺の親。それもお前は、小馬鹿にした」
拳を固め、ディアナの元へと歩み寄るジーク。
「ん? ぼく、そんなことーー」
言ったかな?
刹那。
ベキッ
「へぶぅッ」
ディアナの眼前。
そこで足を止めた、ジーク。
その拳がディアナの顔面に叩き込まれる。
そして更に、ジークは力を行使した。
【収納物】
ザールの最強の拳×2
それを取り出し拳に纏う、ジーク。
"「つくりかえたほうがいいんじゃないか? お前の故郷。廃墟にされた後、ぼくに言ってくれよ。建築人としてサービスするからさ。あぁ、そうだ。アレン、ぼくも一緒に王に進言してやるよ。古臭い村人諸共、廃墟にしたほうがいいですって」"
ジークの脳内。
そこに蘇る、ディアナの薄ら笑い。
あの時は冗談だと思っていた。
だが、今となってはーー。
「ま、待てよッ、ジーク!!」
鼻血を垂らし、後ずさるディアナ。
しかしジークは聞く耳など持たない。
胸ぐらを掴みーー
「知識は死体からでも収納できる」
ジークはそう吐き捨て、ディアナの顔面に三度、最強の拳を叩き込んだのであった。