収納するモノ⑤
歯を食いしばる、ココネ。
その幼い顔に滲むは、生まれてはじめての焦燥。
自分の放った巨大火球。
それがそっくりそのまま撃ち返される経験等、当然ない。
迫る、巨大火球。
それにしかし、ココネは吐き捨てる。
「いい気になるな。いい気になるなよッ、ゴミぃ!!」
目を見開き、迫る火球に手のひらをかざすココネ。
仮にも勇者パーティーの魔法使い。
魔法の打ち消し等、お手のもの。
「消えろッ、火球!!」
響く、ココネの声。
呼応し、巨大な火球は瞬時に霧散。
しかし、そこでココネは冷や汗を垂らす。
「あ、あれ。わたしの魔力。こんなに少なかったっけ? ぜ、ゼロになっちゃってるじゃない」
【ココネの魔力】……999999→0
「や、やばい。今の魔法打ち消しで完全に枯渇しちゃったわ。ま、魔法だけが取り柄のわたしから魔法をとったら」
闇を纏う、ジーク。
その姿に歯軋りをし、後退りをはじめるココネ。
「あ、あのゴミ。こここ。このわたしに、なにかしたわね。負け組の分際でぇ」
「で、でも。まだ手はある」
ちらりと。
身を隠すディルクへと視線を向ける、ココネ。
「ちッ、仕方ないわね。あいつの魔力を吸収してやる」
胸中で呟き、ココネはジークの隙を窺う。
自分とジークとの距離。
それは幸い、随分離れている。
「いける……いけるわ」
内心でほくそ笑み、駆け出そうとするココネ。
魔力さえあれば、魔法は使える。
自分の頭の中にある、魔法の知識。
それさえあればーー
だが、そこに。
「収納する。お前の頭の中にある魔法知識を」
響く、ジークの声。
呼応し、ココネの頭の中から魔法知識が消滅。
そしてジークの脳内に例の文字が浮かぶ。
【収納物】
ココネの魔法知識×999999
【ココネの魔法知識】
999999→0
「あ、あれ? ま、魔法ってなんだっけ? ちょッ、ちょっとぉ!! あーッ、もう!! 訳がわからないわ!!」
自暴自棄になり、涙目になるココネ。
対するジークは三度、手のひらをかざし声を響かせる。
「魔法知識×999999と魔力×999999を取り出し、使用する」
「神世の雷。かつて世界に降り注ぎし神の怒り。今ここに顕現せよ。サンダードラゴン!!」
ゴゴゴ……
途方もない雷鳴。
そして稲光。
空から巨大な雷が降り注ぎ、そしてかのモノは現れる。
「グォォオン!!」
雷を纏いし、神龍。
かつてココネの十八番だった雷竜魔法。
それがジークの手により、発動される。
「ひッ、ひぃぃぃ!! ごめんなさいッ、ごめんなさいィ!!」
その場に蹲り、ココネは悲鳴をあげる謝罪することしかできなくなってしまう。