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ゴールドランクの暗殺者(訳あり)

 朝食を済ませて、一刻ほど家で休んだ後、ヤマトはアレキサンドラを連れて、これから会う予定の「女」との待ち合わせ場所を訪れていた。


 自宅と王都とを直線で結んだ時に、丁度真ん中に位置する小さな村。

 この村はさほど治安が悪くないのか、時折元気に外を駆け回る子供たちを見かける。

 その光景を見て、アレキサンドラは故郷のことを思い出すのだった。


 遠い目をしているアレキサンドラに何か思ったのか、ヤマトは「どうかしたか?」と彼女を心配する。


「いいえ。ただ私にも、あんな時期があったなーって」


 苦く辛い思い出だとしても、結局のところそれが今の自分を形成している。

 あの時期があったからこそ、自分はヤマトと出会い、こうして行動を共にすることが出来ている。


 思い出も存外悪いものじゃないな。アレキサンドラはそう思った。


「それより、これならお会いになる方って、どんな方なんですか? 依頼人? それとも知り合いの方?」

「後者だな。というか、パーティーメンバーだ」

「パーティーメンバー……」


 その事実に、アレキサンドラは若干ショックを受けてしまった。

 ギルドに顔を出してはいないとはいえ、ヤマトも『白銀の女騎士』の一員。それも最高位であるプラチナの男。よくよく考えれば、どこのパーティーにも属していないはずがない。


 人々を救う為には、魔物を倒す為には、一人で活動するよりもパーティーを組んだ方が効率的で安全なことくらい、ホワイトの冒険者にだってわかる。


 しかし心のどこかで、アレキサンドラは自分が初めてヤマトに認められた存在だと思い込んでいたのだ。


「パーティーを組んで……もう長いんですか?」


 尋ねるその声には、先程よりも覇気がない。

 しかしヤマトがそのことに気づく素振りはなく。


「初めて会ったのは、俺がギルドに加入した直後。当時はたまに助っ人を頼む程度だったが、メサイアが死んでから、正式にパーティーになって貰った」

「信頼……してるんですか?」


 アレキサンドラの質問に、ヤマトは「何だ、その愚問は?」と返す。


「パーティーメンバーとは、命を預け預けられる存在なんだぞ? 信頼を欠くなんて、言語道断だ」


 それは当たり前のことであるのと同時に、ヤマトは案にこう言っているのだ。「だからお前のことも信頼している」、と。


「……ですよね」


 アレキサンドラの口元が緩む。

 それを確認したヤマトは、「もう大丈夫だな」と呟いた。


「え? 何か言いました?」

「いいや。……着いたぞ」


 短く発して、立ち止まるヤマト。


「着いたって……ここは、酒場?」


 ヤマトが足を止めた場所。そこはどこにでもあるような、古い酒場だった。


「パーティーメンバーに会う」。そう聞いていたものだから、アレキサンドラはてっきり『白銀の女騎士』以外のギルドに行くものだとばかり思っていた。故に些か拍子抜けだった。


「あの~、酒場が待ち合わせ場所なんですか?」

「酒場は常日頃うるさいから、逆に密会にはもってこいの場所なんだよ」


 答えると、ヤマトは店内に入っていく。アレキサンドラも慌てて彼についていった。


 酒場の中に入ったヤマトは、人を探すように、店内をキョロキョロ見回す。

 やがてお目当ての人物を見つけたのか、頭の動きを止めた。


「いらっしゃいませ」


 遅れて店員と思われる人物が、二人の前に現れる。

 ヤマトは自身とアレキサンドラを交互に指差しながら。


「俺とこいつには水を頼む。あと――奥のテーブルにいる女に、一番強い酒を」


「かしこまりました」。一礼して、カウンターへ戻っていく店員。

 店員が去ると、ヤマトはスタスタと奥のテーブルに足を進める。


 奥のテーブルでちびちびと酒を飲んでいたのは、全身を長いマントで覆った、赤髪の女だった。


 長いまつ毛や艶のある紅い唇……そんな容姿はさることながら、彼女の醸し出す雰囲気が、何だか様になっていた。


「ツバキ」


 ヤマトが呼ぶと、女――ツバキは彼の方に振り返り、妖艶に笑った。


「遅いわよ、ヤマト」


 早く座れ。ツバキは目だけで、彼に指示をする。


 遅れてきた故強く言えないのか、それとも元来からの性分か。ヤマトは文句一つ言わず、ツバキの向かいの席に座った。


 アレキサンドラもいそいそと、ヤマトの隣に腰掛ける。


「悪かったな、遅くなって」

「ホントよ。一人でテーブル席占領だなんて、そろそろ背徳感と敗北感に押し潰されそうなっていたところ」


 近隣にいるのは、カップルやパーティーといった団体の客。一人の客は、周囲に気を遣ってカウンター席に座るのが暗黙の了解となっている。

 そんな中ツバキは一人テーブル席に腰を掛けているのだから、言い知れぬ感情を抱くのもおかしくなかった。


 三人が一堂に会すタイミングを見計らってか、店員が先程注文した飲料を運んでくる。


「水が二つになります。こちらはお連れ様より」


 ヤマトとアレキサンドラの前には水を、ツバキの前には見るからにアルコール度数が高い酒を置く。

 酒に慣れていないアレキサンドラは、その匂いだけで軽く酔ってしまった。


「奢り? 気が利くじゃない」

「待たせたお詫び、だ。……それで、今日は何で呼び出した? 用件は?」


 水を飲みながら、ヤマトはツバキに尋ねる。


「その前に。……隣にいる子、一体誰なのかしら? まさか、新しい奥さんだなんて言わないわよね?」


 後妻扱いされ、アレキサンドラはポッとなる。

「後妻……」。そう呟く彼女からは、心なしか湯気が立っていた。


「そんなわけないだろ? ……こいつはアレキサンドラ。新しいパーティーメンバーだ」


 ヤマトが答えるのと同時に、アレキサンドラも立ち上がり、自己紹介を始める。


「アレキサンドラと言います! 階級はまだホワイトですが、精一杯頑張りたいと思っています! どうぞ、よろしくお願いします!」

「ホワイト……まぁ、ヤマトが認めたのなら、くだらない指標なんてあてにしないけど」


 ギルドの提示する階級制度を、ツバキはくだらないと言い切る。

 言い換えれば、それだけヤマトを信頼しているということだった。


(だって、パーティーメンバーですものね)


 アレキサンドラを一度隅々まで観察したツバキは、軽く鼻で息を吐く。

 しかしそれはアレキサンドラの未熟さに向けられたものではなく。ヤマトに対するものだった。


「パーティーメンバーという大事な事案ですら、相談せずに決めるんだから。ホント、身勝手な人よね。……メサイアはこんな自己中男の、どこに惚れたのかしら?」

「愛とは本来、当人同士以外には理解し得ぬものなんだよ」

「臭いセリフ。……ところで、アレキサンドラ。あなたのジョブとスキルを教えていただけると幸いなのだけれど?」

「あっ、はい。こんな装備をしていますが、私は一応騎士です」


 こんな装備。アレキサンドラがそう明言するように、彼女は現在鎧を装備していなかった。ヤマトに指示されて、メリアの服を借りているのだ。


(まぁ、ちょっと大きいんですけど……)


 メリアとアレキサンドラには、特に胸部に差が存在する。

 ずり落ちた肩口を、アレキサンドラは何度も整えていた。


「スキルなんですけど……証拠となるものは何も持っていませんが、ギルドでは『白戦姫(ワルキューレ)』で通っていました」

白戦姫(ワルキューレ)……」


 ツバキは復唱すると、ヤマトに視線を送る。


「あなた、知っていたの?」

「いいや。騎士であることは知っていたが、スキルまでは……」

「そう。なら、これは偶然? それとも運命?」


 ツバキは訳の分からないことを独り言のように呟きながら、何やら考え込んでいた。


「ツバキ……さん?」


 アレキサンドラに声を掛けられ、ハッと我にかえったのか。


「何でもないわ。私はツバキ、彼のパーティーメンバーよ。……って、それくらいの情報は既に聞いているかしら?」

「えぇ。まぁ」

「そう。彼との関係は愛人……」


 ギロっと、ヤマトに睨まれる。彼にはそういう冗談は通用しないのだ。


「嘘よ、嘘。……バロッサに負けて以来、ヤマトがギルドに顔を出せなくなったのは知ってる? 私はそんな彼とギルドの間を取り持っているの」


 ツバキがギルドで依頼を受注して、それをヤマトと共にこなす。

 ツバキがギルドに以来完遂を報告して、報酬の半分をヤマトに手渡す。

 そういった関係性だった。


「あの……そんなことして良いんですか?」

「顔を出していないだけで、ヤマトはまだ『白銀の女騎士』の一員よ。そうでしょ?」


 ツバキの問いかけに、ヤマトは「あぁ」と答える。


「『白銀の女騎士』は、メサイアのギルドだ。ギルドがその名を名乗り続ける限り、俺が脱退することはない」


 約束以外に、メサイアがヤマトに遺したもの。その一つがギルドだった。

 ツバキは話を変えるように、「んー」と声を唸らす。


「あと教えていないのは……ジョブかしら?」


 ツバキが自分の職業を口にしようとする。しかしその声は、どこからか聞こえてきた怒声によってかき消されてしまった。


「うっせーんだよ、コラ! イチャモンつける気か!?」

「何だと、このクズが! ぶっ殺してやる!」


 ヤマトたちがいるテーブルから、少し離れたカウンター席。酒を飲みに来ていた男が二人、言い争いをしていた。


「ったく。これだから昼間から酒を飲む輩は。常識というものがなっていないわね」

「昼間から酒、という点に関しては、お前も人のこと言えないがな」


 終始落ち着いている二人。対してアレキサンドラは、今にも乱闘に発展しそうな言い争いを不安に思っていた。


「ちょっと! 止めなくて良いんですか?」

「止めるって……まだ明確に手を出したわけじゃないからね。この程度で介入するのは、干渉のし過ぎよ」


 しかしだからといって、放っておくわけもいかない。

 だから、ヤマトとツバキは待っているのだ。どちらかが手を出すその瞬間を。

 そしてその時は思いのほか早く訪れ。言い争いをしている男の一人が、もう一方に拳を降り下ろす。


 殴られる男の顔。店内に響く鈍い音。

「キャーッ!」と、若い村娘なんかは叫び声を上げている。


 殴られた衝撃で尻餅をついた男。殴った方の男は、彼に馬乗りになった。


「死ね! 死ね!」


 二度、三度。男は拳を振るい続ける。そして四発目を振り下ろそうとしたその時――


 男の頬を、ナイフがかすめた。


 ツーっと、男の頬から鮮血が流れ出す。


「え?」


 突如として背後から飛んできたナイフ。ナイフは男の目の前のカウンター席に突き刺さった。


 男が恐る恐る振り返ると……そこにはナイフを投げ終えたツバキの姿が。最奥のテーブル席で、それもこちらを目視しないまま、ツバキはナイフを投げていたのだ。


「口論くらいならまだしも、それ以上は看過出来ないわね」


 ツバキは立ち上がり、男に近づいていく。

 カツカツというヒールの音が、店内にいる全ての人間の注意を惹きつけている。


 ツバキは灯り代わりに用いられている蝋燭を手に取る。そして炎によって溶けた蝋を、おもむろに男の頭部に垂らした。


「熱ぃ!」


 垂らされた蝋を取り除くように、男は自身の頭をかきむしる。その様子を、ツバキは満足そうに眺めていた。

 頬を紅潮させ、息を荒だて。さも興奮しているかのように。


 ――いや、実際に興奮しているのだが。


「熱い? 違うでしょ? ほら、やり直しよブタ野郎」


 クスクスと笑いながら、再度蝋を垂らすその姿は、まさに女王様だった。


「熱い! 熱い! ……ごめんなさい! もうしません! 許してください!」


 男は年甲斐もなく目尻に涙を溜め、許しを請い始める。

 周囲の客は引いているのだが、果たしてそれはこの男に対してか。或いはツバキに対してなのか。


(まぁ、半々だろうな)


 一部始終を見ていたヤマトは、いつものことだとほとほと呆れている。

 しかし見慣れていない、というか初めてその光景を目にするアレキサンドラは、驚きを隠せていなかった。


「ツバキさんは……どうかしたんですか? 飲み過ぎた、とか?」


 そういえば、と。アレキサンドラはヤマトがツバキに強い酒を奢っていたのを思い出す。


「あいつが一杯二杯で酔うかよ。ギルドきっての酒豪だぞ? ……あれは性癖。頭がおかしいのは、いつものことだ」


「ドSなんだよ」。厄介者だと言わんばかりに、ヤマトはそう吐き捨てた。


「実力自体は申し分ないんだけどな、性格に結構難ありで。……まぁ、基本的には良い奴だから、その辺は安心してくれ」


「よいしょ」と、ヤマトはようやくその重い腰を持ち上げる。

 彼はツバキの背後に寄ると、三度蝋を垂らそうとした彼女の肩を掴んだ。


「やり過ぎた、バカ」

「……そうね。これくらいで許してあげましょう」


 蝋燭を元あった場所に戻し、自身も元いた最奥の席に戻る。


 戻るなりツバキが口にしたのは、「見苦しいところを見せたわね」。アレキサンドラはそんな彼女に、「いえ……」と返した。


「私、物心ついた時からちょっとサディスティックな気質があってね。人を虐げたりすることに、僅かばかり快感を覚えているのよ」


「ちょっと」、「僅かばかり」。ツバキはその部分をやたら強調する。

 だからこそ、その部分に対する信憑性が薄れてきて。


「ちょっと……ですか。ハハハ」


 アレキサンドラは愛想笑いを浮かべるほかなかった。


「それで、確かジョブの話だったわよね? 私のジョブの話」

「はい」

「何だと思う?」

「えーと……」


 アレキサンドラは考える。

 マントを羽織っている以上、装備から職業を推測することは不可能。


 ヒントがあるとすれば、先程見せた華麗なナイフ投げ。

 男を殺さずに、的確に頬をかすめた。その技は、熟練者のそれだ。


 しかしそこから職業へ直結させることは出来ず――或いは、その特殊な性癖のインパクトが強すぎる故、どうして脳がその「答え」に帰結してしまうのかもしれない。


「……女王様?」


 前に「SMの」と加えなかったのは、アレキサンドラなりの配慮なのだろう。

 隣ではヤマトが、珍しくゲラゲラと笑っていた。


「女王様って……女王様が、どうやってクエストをこなすっていうのよ?」


暗殺者(アサシン)よ、暗殺者」。ツバキはあっさりと答えを口にする。


「今みたいに敵の死角からナイフを飛ばすことは勿論のこと、音もなく敵の背中を取って首筋を掻っ切ることも得意だわ」


 親指で首を掻っ切るジェスチャーをするツバキ。「でも」と、言葉を続ける。


「一番好きなのは毒殺。こう見えて毒の調合なんかもお手の物なのよ?」


 笑顔で語るツバキだったが、アレキサンドラその笑顔にゾッとなってしまった。

 何せ目の前の女は、一瞬にして生物を殺めるプロなのだから。


「まぁサディストとしては、痛めつけることもできない暗殺者なんてやりたくもないのだけれどね」


 ツバキのそんな冗談すら、最早アレキサンドラの耳には入らない。


「因みに階級は……」


 言いながら、ツバキはマントを脱ぎ出す。

 マントの下の装備は、非常に軽薄で。

 胸部と局部を隠すための布地と、暗器を隠しているであろう腰に巻かれたポーチのみだった。


 ツバキは自身の手を大部分が密着している胸の谷間に突っ込むと、中から見知った駒を取り出す。

 駒の色は――『白銀の女騎士』において二番目の階級を表す、金色だった。


「……これでもゴールドなの。驚いた?」

「えぇ、まぁ」


 前に座るのはゴールドランクの暗殺者。隣にはプラチナの侍。よくよく考えると、自分はとんでもない場所にいるものだ。アレキサンドラは軽く身震いした。


 乙女二人の会話に、ヤマトが口を挟む。


「ゴールドといっても、実質はプラチナに近いがな。俺とバロッサを除けば、ギルドでも一、二を争うだろ?」


 それは即ち、王国で五本指に入ることを示唆していて。


(私は何というパーティーに加入してしまったのだろう)


 今になって、己の力の無さを後悔するのだった。


 アレキサンドラとツバキ、お互いの顔合わせも十分すぎるほど済んだところで、

「さて、と」


 ヤマトは本題に入り始めた。


「そろそろ本題に入りたいんだが?」

「あら、この後予定でもあるの?」

「まぁ、ちょっとな」


 この後の予定を、アレキサンドラは聞いていない。つまり自分には関係のないことだと、アレキサンドラは悟った。


「クエストか?」

「そう……とは、一概に言い切れないのよね、これが」


 訳あり、そういうことらしい。


「メサイアの意思の名残と言うべきかしら? 少なくなったとはいえ、王都ではまだ募金活動が行われていてね。明日は月に一度、集まったお金や物資を僻地へ送る日なのよ」


 僻地……ヤマトたちが住む場所のように、治安が芳しくない土地のことだ。

 誰かの助けを得なければ、子供が大人になることすらままならない。


「その護衛を、俺に引き受けろと?」


 ツバキは首を横に振った。


「護衛自体はギルドに依頼が来ていて、とある上級者パーティーが引き受けたわ。だから表面上、問題ないのだけれど……」


「積荷は明日、確実に襲われるわ」。ツバキは断言した。


「襲われるって……道中に盗賊か何かが潜んでいるんですか? あれ? でも上級者のパーティーなら、それくらい何てことないような……」

「盗賊じゃない。襲うのは、冒険者よ」

「冒険者? それって、ギルドの人間? 『白銀の女騎士』のメンバー? ……え? でも、護衛もギルドが請け負ったんですよね?」


 混乱しているアレキサンドラ。倒してヤマトは、全てを察したような顔をしていた。


「マッチポンプか」

「えぇ」


 輸送している物資等をわざと襲わせ、予定されていた勝利を手にし、そして約束以上の報酬をぶん取る。それがあさましい冒険者たちの策略だった。


「命の危機に貧すれば、皆が分けてくれた金銭を失いかければ、多少の出費なんて屁でもないからな」

「何それ……ひどいです。最低です」


 ヤマトのように、見返りを求めず己の身を投げ出す人間もいるというのに。アレキサンドラは、憤りを覚えずにはいられなかった。


 そんなアレキサンドラを見て、ツバキは得心する。

 それ故彼女をパーティーに誘ったのか、と。


「アレキサンドラの言うとおりよ。ひどいわ。最低だわ。だから――演技なんかではなく、本当に襲われてもらいましょう」


 誰に襲われるのか? そんなの、聞くまでもない。


 自分たちに襲われるのだ。

 ただし狙うのは金銭や物資ではなく、冒険者たち。マッチポンプを阻止するためだ。


「時間と場所は?」

「予定通りなら明日の正午、山越えを行うはずよ。そこを狙いましょう」


 こうしてアレキサンドラの、正真正銘の初めてのクエストは、まさかの同業対決となったのだった。

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