表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/28

2-3  夜は陰の独壇場

いつも読んでいただきありがとうございます。


感想やいいね、ブックマーク登録等よろしくお願いいたします。

 深夜、皆が寝静まったころ。


 俺にとっては、ここからが一日のスタートだ。


「【シャトー・アビス】」


 俺は影の中に潜り、いつもの生活空間へ入る。


 大きめのソファにかけられた黒いコートを手に取り、袖を通す。

 裏地には様々な暗器や自爆用の爆弾を仕込んでおり、さらに襟を整えてフードを深く被ることによって、顔の大部分を隠すこともできる。

 

 このコートは所謂()()()()()()()()というもので、温度調節や防御力の調整等を魔力ですることができる。

 アーティファクトは様々な機能を持つ人工的な産物で、魔力を流すことで稼働するタイプや、常時発動タイプなど様々だ。

 これらは、この世界における学者や、アーティファクト作成に関わるスキルの持ち主によって作られるものが、一般的に流通している。


 夜専用の服に身を包んだ後、等身大の鏡の前に立ち、全身をチェック。

 違和感のある個所が無いかを確認し、自身の黒髪と黒目も見直す。

 これは染めたというわけではなく、影魔法を利用してそう見せているだけだ。


 これが、暗殺者ルーチェの姿だ。


 俺は一つのカップを棚から取り出し、コーヒーを淹れる。


 中は家具が意外と充実しているのだが、これらのほとんどは拾い物である。

 拾い物…というよりは、取り返した物と言ったほうが良いのだろうか。


 エミリア王国には、残念ながら盗賊の類が存在する。

 単独犯の時もあれば、集団…、さらに大規模な単位の盗賊グループがいるのだ。


 盗みの標的となるのは、お金を多く持っている貴族や商会の家が多く、彼らから金や高級な家具に食器、家宝などを殺して奪うのだ。

 俺はその奪われたものを、盗賊を全滅させたうえで貰っている。


 元の持ち主が生きている可能性は低いので、所有権は俺に移転…するよな?


 おかげ様で5歳児にして大金を所持している。

 使う場面もないため、溜まっていく一方だ。


「さて、今日はどこを襲撃しようか」


 俺が向いた部屋の一角には、世界地図やエミリア王国の地図、地下通路などを記入した王都の地図等が並んでいる。

 これらも全て拾い物だが、リサイクルといえば罪悪感は消える。


「今まで潰した盗賊のアジトは12か。そして今確認できているのは…、100超え…」


 盗賊の情報は、すべて俺が足で稼いでいる。

 

 念入りに情報を集めたうえで、数日あるいは数か月単位の計画を練り、様々なパターンを予測したうえで、一つのアジトを潰すという実行段階に移るのだ。

 時間がかかりすぎ…と思われるかもしれないが、数年をかけて一人の標的を暗殺したことだってあったのだ。

 これくらいは普通だと思っている。

 

 如何に失敗のリスクと不確定要素を減らし、自分の存在を陰に押し込むかが重要であるため、この数段階のステップは着実に踏んでいかなければならない。


「それにしても多いな…」


 今あげたのは盗賊だが、勿論他にも粛清対象がいる。


 規模が大きくなるほど、こちらも慎重に動かなければならないため、時間の問題は常に付きまとう。

 

「今月は5くらい行きたい。そうなると、今日は一つ実行に移すか…」


 数十個の計画を同時進行させることで時間短縮に繋げている。

 今日は一つ、既にアタックするだけ…という段階まで来ているものがあった。


「王都の西部に存在する屋敷の地下…、盗賊の規模は約50名。

 戦闘力に関して注視すべきはトップの男だけ。

 魔力隠蔽は十分に効いたから、最初に消してしまおうか。

 適応属性は恐らく土のみ…、暗殺に気が付かれた際の瞬間的な反応より、俺の方が数段早いから問題なし。

 影で全体を覆った後、30秒ですべてのカタをつける」


 現場での動きを再度シミュレーション。

 自分の計画と実際の動きの整合性を確認する。


 …問題はないな。

 

「――【シャトー・トランス】」


 影魔法【シャトー・トランス】は、影の中を自在に移動する魔法。

 影が存在する場所しか移動できないため、日中の使い勝手は悪い。しかしこの時間帯は、移動し放題である。


 移動速度は調整可能だが、最高速度は実質300km/hほど。

 戦闘においては、初速でほぼマックスまで上げれるため、瞬間移動に見えなくもないだろう。


「2分後に到着…、直後に展開」


 現場が近づいてきた。

 残り数キロ…といったところだ。


 敵数は前情報と変わらず、周辺環境も変化なし。

 あとは計画通りに事を運ぶのみ。


 俺は誰も近くにいないことを確認し、屋敷の敷地内に存在する影から姿を現す。

 魔法の行使に反応するアーティファクトのような物も無いことは確認済み。


(【シャトー・プリズン】)


 無詠唱で発動させたのは、影魔法の【シャトー・プリズン】だ。

 その名の通り、標的を屋敷ごと影で作りし監獄に閉じ込める。

 誰も逃がしてはいけない。目撃者を一人も出してはいけないから。


 展開した瞬間、外を見ていた人物がいた場合は何かしら異変を感じるかもしれないが、誰も変な動きは見せていない。


(【シャトー・トランス】)


 すぐさま影に潜り、移動を開始する。

 最初の一撃でトップの首を刎ね、死体を隠すと同時に構成員を全滅させる。

 構成員たちとの戦闘は手荒になる可能性もあるため、スピード勝負だ。



 …いた。



 配置、問題無。



 再度、コートのフードを深く被り直し、口元を隠す。



 突撃……、5秒前。



 5,4,3,2,1――



 ――0



 直後、俺は標的の背後から瞬時に飛び出し、ナイフを一払い…。


 同時に【予見眼】を発動させ、数秒後の未来を確認。


 そのまま刃は…、首と胴体を分断する。


 標的は俺に殺されたことを気づかずに、静かに息を引き取った。

 左手で頭を持ち、切り離された胴体を右手でとらえる。


 物音は0。


(【フレグランス】)


 死体を影の中に格納後、生活魔法【フレグランス】を発動させ、血の匂いをうち消す。普段使用している香りではなく、この場に合ったそれを調整したもの。

 この魔法を使用したのは、俺の身体だけでなく部屋全体から血の匂いを消し去り、風の流れで伝わる…という可能性を潰すためだ。


 反応は…、特に変な動きをしている者はいない。



 問題なし。計画は継続。



 次は…、部屋の外のヤツだ…。









________________________________________









「…うまくいったか」


 そう言って俺はソファに横たわり、大きく伸びをする。

 ここは【シャトー・アビス】の中。既に暗殺を終え、一息ついていたところである。


 すべて計画通りに事が運び、しっかり30秒で全てを終わらせることができた。

 彼らの死体は全員分を影の中に格納済み、盗んだ金品もすべて没収済み。


 使用した魔力は最小限に抑えつつ、隠蔽も施した。目撃者もゼロだし、今後あの屋敷が見つかったとしても俺までたどり着く可能性は低い。


「ふう…、それにしても随分と溜め込んでいたな」


 かなりの量の財産を溜め込んでおり、とりあえず全部を影へしまった。


 ここから自分に必要なものだけを貰い、残りの品は金に換えた上、王国内各所の孤児院に寄付をする。寄付といっても、黙って置いて来るだけだ。


「俺の欲しいものはあるかな…」


 家具はこれ以上いらないし、宝石やアクセサリーは論外。服もいらないから、結局現金の一部を貰うだけになるのが多い。アーティファクトは、物によっては欲しいかもしれないな。


 今日も目ぼしいものは無いだろうな…と少し諦めかけていた、


 しかし、今回は大当たりがあった。


「……なんだこの重厚な造りの箱は」


 俺の目についたのは、金属製で作られた真四角の箱のようなもの。

 何かとんでもないものが中に入ってそうだ。


 しかし、これを開けてドカンッという臭いはない。

 危険はないと思われるが…。


「少々、失礼しますよ……」


 そっと、衝撃を加えないように細心の注意を払いながら箱を開ける。


 すると中には…。


「――()か?」


 卵。そう、卵である。

 大きさは、ダチョウの卵より大きい。よっぽどのサイズだ。


「チッ…、あいつらこんな物を何処で…!」


 箱の中に入っていた一枚の紙。

 そこには――『降魔(ごうま)の卵』と記載されている。


 俺はこの卵について、既に情報を得ていた。

 裏で出回っているらしい…という話も、少しはあった。


 『降魔の卵』とは、大量の魔力を注ぎ込むことによって、魔物を誕生させる卵であるが、問題が山積みな代物だ。


 まず、この卵をふ化させるには、それはそれは大量の魔力が必要だと言われている。

 もっと直球に表現するなら、幾人もの()が必要だということだ。


 さらに、ふ化した魔物も様々だが、一説によると一つの大陸を滅ぼすほどの魔物がはるか昔に産まれた…という伝承が存在する。

 現状、この卵から生まれた生物が甚大な被害をもたらした…という実例までは挙げられていないが、いわくつきであることに変わりはない。


 しかし、この卵一つをかけて戦争が行われた例は知っている。

 得るまでに多くの血が流れ、ふ化するまでに多くに贄が捧がれ、産まれた魔物が災害をもたらす…、最初から最後までロクなことが一つもない。


「さて…どうしようかね」


 扱いに困るものが出てきてしまった…。










本話も読んでいただきありがとうございました。

作者 薫衣草のTwitter → @Lavender_522

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ