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2-1  第三王子ネロ・ディ・エミリア

いつも読んでいただきありがとうございます。


感想やいいね、ブックマーク登録等よろしくお願いいたします。

 俺は異世界へと転生した。

 剣と魔法の世界、魔物という脅威と、他国との戦争の絶えない、地球とは全く違う場所へと。


 ネロ・ディ・エミリア。


 それが俺の新しい名だ。


 エミリア王国という王族国家の第三王子だそうで、それに気づいた時はさすがに驚いた。

 確かに、スピラにどのような家系に生まれるのかを聞き忘れたな…と思ったが、時すでに遅し。


 とんでもない家に転生してしまった…と思わなくもないが、前世と大差はない。

 違うのは、既にルーチェとしての自我があることだけだ。


「ネロ様……」


 先ほどから、ベビーベッドで横になっている俺の髪を撫でている人物がいる。

 俺のお世話係として生まれた時からついていてくれている、メイドのモネだ。


 彼女は()()()()で、明るい茶色の髪と猫耳がかわいらしい女の子。

 歳は12歳で、代々エミリア王族に使える家の一つらしい。

 モネの家から生まれる男は騎士へ、女はメイドや使用人へ、というのが伝統だそう。


 俺が生まれると決まった時から彼女は俺のお世話係に任命されたらしく、先輩メイド達からの指導を受けてきた。

 前世に照らし合わせると、12歳からそのような教育を受けるのは些か早すぎないか…と思ったが、俺も人のことは言えなかった。


「ネロ様、凄く可愛いです…!」


 生まれた時から彼らの言語を理解できているのだが、恐らくスピラ神の加護の一つだろう。非常に有難い特典だ。


 俺は彼女の人差し指を、小さな手で握る。


 彼女はこれがお気に入りのようで、とても喜んでくれるのだ。


「うへへ…」


 少々危険な香りもするが、ほぼ純粋な好意であることは臭いからわかる。

 大丈夫。今の所は問題ない。


 ネロ・ディ・エミリアの見た目だが、キレイな銀髪をしている。

 エミリア王族の血が銀の髪色を継承している…というわけではなく、これは俺の母方の特徴だ。


 ここで、エミリア王族、俺の家族について話そう。

 あくまで、今の時点で俺が聞くことができた範囲限定であるが。


 先ずはエミリア王国の国王にして俺の父親、リウト・ディ・エミリア。

 代々エミリア国を牽引してきた王族の家系であり、リウトは43代目。


 そして国王の正妻にして王妃、クロー。

 彼女と国王の間に生まれたのが、第1王子と第2王女だ。


 次に国王の側室、マリアナ。

 第2王妃というポジションであり、彼らの間に生まれたのが、第2王子と第1王女だ。


 最後に側室がもう一人、アンナ。

 第3王妃で、国王が最後に結婚した彼女は、他国の王族だ。

 アンナはエミリア王国との友好の証として、こちらへ嫁いできたらしい。

 彼女だけが銀色の髪をしてるのは、そこから来ている。


 クロー王妃とマリアナは王族の血が一部混じった貴族の出であるため、皆が金髪をしている。


 アンナだけが外部の人間…という感じはするが、クロー王妃と同じ側室のマリアナとは仲が良く、国王とは相思相愛だ。

 この辺が拗れていたら、少々面倒だったかもしれない。


 俺には兄と姉がそれぞれ二人ずついる。


 一番上の兄と姉は王都にある学校に在籍しているため、俺とはまだ会えていない。

 その下の兄と姉はまだ入学していないため、俺の所にちょくちょく遊びに来てくれる、といったところだ。


 おっと、誰かが部屋に近づいてる。



 ガチャ



「ネロ!お母さんが来ましたよッッ!」


「アンナ様、お待ちしておりました」


「あら、モネ。いつも有難うね。ネロはちゃんと静かにしていたかしら?」


「ネロ様はちゃんとしておられました。流石、国王様とアンナ様のお子様と言えるでしょう」


「ふむ…、私が幼いころはお転婆だと聞いていたから、性格は夫似かしら。でも見た目は、完全に私ね」


「髪色はもちろん、顔立ちもアンナ様を彷彿とさせますね」


 やってきた彼女が側室のアンナ。俺の母親だ。

 キリっとした目に凛とした顔立ち、そして艶やかな銀髪。

 見た目は少し気が強そうだが、中身もその通りだと思われる。


 非常に誠実で、物事に対して正直な、ハキハキとした人だ。

 純粋な、濁りのない臭いが、俺にとっては心地が良い。


「しかし、アンナ様。ネロ様をお産みになられてからまだ日が浅いのです。安静にしていただかないと…」


「そうも言っていられないわ!私の息子はこんなに可愛いんですもの!ずっと一緒にいたいわ!」


 そう言って俺を抱き上げ、顔をスリスリとしてくる。


 俺としては普通に安静にしていてほしい。

 出産となれば、体力は確実に落ちているだろうに。


「モネ、魔力測定はいつごろかしら?」


「もう少しでいらっしゃるかと。魔法師団の方からお客がお見えになっていましたから」


「それは楽しみね!適正属性は何かしら…!」


「アンナ様の特徴が色濃いため、火を使っているネロ様が想像できますね…」


 火と風です。お二人の想像通り。

 

 エミリア王族は代々水属性の適正が多く、アンナの方は火属性が多い。

 風魔法は、一体どこからきたのだろうか。


「私もそんな感じがするわ。私みたいに火力馬鹿にならないと良いけど」


「アンナ様…、先日厨房からクレームが来ていましたよ…?火力を間違えて爆発を引き起こしたとか?」


「ギクッッ」


 何をやっているんだ、俺の母親は。


「ま、まあそれは置いとくとして!魔力量も気になるわね!」


「魔力量がアンナ様譲りだとすれば…、ご兄弟の中でもネロ様はトップに立つのでは?」


 アンナの家系は魔力量が多い子どもが生まれやすく、魔法使いとして大成しやすい。

 対してエミリア王族は騎士寄りで、魔力量が多いとは言い難い。

 

 魔力量の大小は騎士か魔法使いかという選択の基準になるが、大きい方が強いとは言えないらしい。

 実際、エミリア王族の騎士としての強さは、国内でも一線を画しているようだ。


 適正属性の数は強さの基準になり、魔力量は基準とはならない…というのが一般的な考え方だ。

 要は力の使い方なのだろう。


「是非そうあってほしいわ!いずれこの子には、私と同じ魔法を使えるようになってもらうの!」


「アンナ様の代表的な魔法ですからね。ネロ様もきっと使えるようになるでしょう」


 彼女の魔法か…。火力馬鹿というのだから、恐らく一面を焼野原にでもするのだろう。




――結局、数刻後に俺の魔力測定が行われた。


 その場にはアンナとモネだけでなく、リウト国王も足を運んだ。

 火と風の2属性という結果には、彼らは泣いて喜んだ。


 魔力量は俺が出会った人々の魔力量を参考にして、アンナの息子だとこの辺だろうか…といった量に調節した。

 その調整もうまくいったようで、将来は魔法使いとして大成するでしょう…という太鼓判を魔法師団から頂いた。


 皆が喜んでくれて、何よりだ。






――人々が寝静まった頃。


 魔力が浸透したこの身体はショートスリーパー。一日1,2時間ほど眠れば全快する。

 睡眠はモネが見ている昼にとれば良いため、夜は完全な自由時間。


「【シャトー・アビス】」


 俺は自身の影の中に潜る。

 影魔法【シャトー・アビス】は、影の中に空間を作り出す魔法だ。一人っきりの空間も作れるし、物置きとしても自由自在。

 上達するほど、この中の空間は壊れにくくなっていき、今では最大火力をぶつけても問題なくなった。

 恐らく、日常生活で最も使うことになる魔法だろう。


 俺は生後間もないため、自由に歩くことができない。

 否、魔力を使えばすんなり立ててしまうのは立証済み。


 俺は現在ここで、火属性と風属性の魔法を研究していた。

 スピラの所での半年間は、これらの鍛錬ができなかったからだ。

 人前…、特に家族の前では、【影魔法】【生活魔法】【予見眼】の3つのスキルを見せびらかすことは絶対にできない。

 そのため、火と風もこれらと同じくらいまでに成長させるのは必須であった。


「今日は、二つを合成できないかを試してみようか」





 火力馬鹿にならないように気を付けよう…。








 


本話も読んでいただきありがとうございました。

作者 薫衣草のTwitter → @Lavender_522


最強寒波が襲来だそうです。

オーガ襲来みたいで、かっこいいですね。


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