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1-3  スキル選定

いつも読んでいただきありがとうございます。


感想やいいね、ブックマーク登録等、よろしくお願いいたします。

「ルーチェさんには異世界転生に当たって、いくつか()()()()()()を与えたいと思います!」


「特殊なスキル…、随分と景気が良いですね。こうやって第2の生を与えてくれようとしているのに」


「いいえ。私が頭を下げて、あなたにお願いしているのです。私はその立場ですから」


 そうだ、これは暗殺の依頼と言っていた。


 だとしても、かなり謙虚な女神様だと思う。


「それに、あなたに嘘や企みは効きませんからッッ!」


 どこか晴れやかな表情で訴えているが、恐らく堂々とするべき場面ではないだろう。


「私がご用意したスキルは、こちらに200個あります。ここから最大3つを選ぶことができますよ!」


 どこからともなく出してきた質素なローテーブルの上に、200枚の紙が並ぶ。

 遠目から見ると、それぞれ文章が記載されているようだ。


 さらに彼女は、テーブルの横に座布団を2つ取り出した。

 促されるままに俺はそれに座り、その紙を眺め始める。


「今すぐお茶を淹れますね~!」


「あ、お構いなく」


 …神相手に俺も、なに普通に返しているんだ。


 そんなことはさておき、俺は200枚の紙を見比べていた。

 それぞれスキルの名前と具体的な能力が記載されているのだが、ザっと見た感じ、とてもバリエーション豊かだ。

 この中から好きなものを3つも選んで良いというのは、あまりにも良すぎる話…と勘繰る人もいるかもしれないが、彼女からはその臭いがしない。


 どちらかといえば、懺悔や感謝…、あとは後悔か。

 彼女は一体、何を悔いているのだろうか。


 そう思っていたところ、お茶を淹れてきた彼女がやってきて、俺の正面に座る。

 スキルの選定を手伝ってくれるようで、一口飲んだ後に紙を眺め始めた。


 数秒後、彼女はその中から一枚取り出し、俺の前へと差し出してくる。


「私のおススメはこれですね!【全属性魔法】!」


「全属性魔法…?」


「この世界では、様々な属性の魔法が存在します。それらのほぼ全てを使うことができるスキルなのです!」


「普通は、使える属性に限りがあるのですか?」


「使うことのできる魔法の属性は、生まれつきで決まってしまいます。1属性適応が全体の95%ほど、それ以上の数は増えるほどに割合が減っていきます。適応した属性が多いほど強い…という簡単なメジャーにもなりますね」


「成程ね…」


 想像し易いな。確かに使える属性が多い方が、一般的に強く見られるだろう。


「あれ…、【全属性魔法】は()()全ての属性…って言っていました?」


「そうですね。あまりにも特殊な属性の魔法は使用できません。それでも、主要な属性に加え、空間魔法といったレアなものも一部使うことのできる、夢のつまったスキルなんです!!」


 うん、イチオシなのはわかった。


 確かに強力なスキルだ。

 使える属性が多いと、その場の環境に適応した戦い方を選択できるし、パターンが増えることも良いことだ。


 しかし、多すぎるのも如何なものか。


「ちなみに、俺が転生した場合の適応属性はわかります?」


「あ、わかりますよ!えーっとですね…。あっ!2属性です!()()です!とっても優秀な部類に入りますよ!」


 火と風か…、中々良い組み合わせじゃないか。

 火力を上げるには風力は必要だし、風の殺傷能力を上げるには熱を加えて熱風へと変化させれば良い。

 相互補完関係が成り立っているだけでも十分すぎるな。


「それじゃあ、【全属性魔法】はいらないですね」


「なんでですか!?」


「いや、その2つがあれば十分暮らしていけるでしょう」


「全属性の方が、ロマンがありませんか!?」


「器用貧乏になりそうですね」


「うっ、雷とかどうです!?使ってみたいと思いません!?」


「……雷は嫌いなんですよ。特に()()()()()は」


 彼女は終始、興奮した面持ちだったが、自分が間違った選択をしてしまったと思ったらしく、口を両手で抑え、静かに俯いた。


 雷は、彼女をどこかへ追いやったのだ。


 嫌うには、そのきっかけは十分すぎた。


「すみません…、少し余計なことを…」


「あ、そこまで気にしなくて良いですよ。これは俺の問題ですから」


「だとしても、もう少し配慮すべきでした。あなたの過去は、すべて知っているというのに」


 少し、暗い雰囲気になってしまった。


 俺はこう見えて明るい方が楽なので、彼女に話題を振ろうか。。


「あ、ほかにおススメのスキルってあります?」


「そうですね…!でしたらこの魔眼辺りはどうでしょう。確か5つほど用意していたかと…!」


「魔眼というのは、どういうもので?」


「簡単に言えば、魔力を消費して能力を発動させる眼のことです。この世界では魔法を使用する際に魔力という力を利用します。魔眼は魔法の延長線上と思っていただいても大丈夫です!」


 魔力を使用して機能する眼…、能力やコストによってはアリだな。

 両の手足以外も武器になるのは、非常に助かる。


「この【鑑定眼】というのは?」


「その名の通り、対象を鑑定する魔眼です。人や魔物、植物といった有機物だけでなく、無機物までも鑑定し、何らかの文章や数値として表現することができる能力を持っています」


 ふむ、便利そうだ。


「こっちの【予見眼】は?」


「ほんの数秒先の未来を見ることができる眼です。あくまで秒単位の話なので、未来予知といった大それたものでは無いのですが…。成長幅もあるかとは思いますが、1,2秒先が限界かと思われます」


 うん。これも強い。

 戦闘時に敵の動きを察知しやすくなるというのは、あまりにも大きいアドバンテージだ。特に命を懸ける場面では。

 MAXが1,2秒だとしても、俺には十分だ。


「こっちの【束縛眼】は…、対象の動きを数秒間止めるとか?」


「その通りです。対象の大きさや強さ、止める時間等様々な変数に左右されるので、魔力消費にムラがあるのが特徴ですね」


 扱いが少し難しそうだな。

 できれば、あまり意識せずに使用できるような能力が助かる。


「そういえば、魔眼を持って生まれるパターンもあるんですか?」


「ええ、かなり低い確率ですがそれも存在します。また、後に開眼するパターンもありましたね。このような属性魔法に離れた能力は、一般的に『特殊スキル』。それを持つ者を『スキル持ち』なんて言われていますね」


 地球の時よりも、生まれた時から差が明確な世界だな。


 うーん、悩ましい。


 どれも使い方次第で強力。暗殺で使えるものが沢山だ。


「もう少し、悩んでも大丈夫ですか…?」


「ええ!好きなだけどうぞ!」









________________________________________









「うん、決まった」


「おお!ようやくですか!」


 悩みに悩みぬいた結果、スキルの選定に2時間以上を費やしてしまった。

 彼女のおススメを聞きつつ、二人でああでもないこうでもない…と言い合っていた。

 雑談もかなり交わしたが、とても楽しい時間だった。


「これで良いかな、スピラ」


「ふふっ、ルーチェらしいですね」


 たった2時間であったが、随分と仲が良くなったと思う。俺の方は敬語を外し、お互いを名前で呼ぶようになった。


 神様相手にスピラと呼ぶのは、もしかしたら罰当たりかもしれないな。


「【影魔法】【生活魔法】、そして【予見眼】。この3つにするよ」


 【影魔法】というのは、影を自在に操れることができる能力だ。

自分の足元だけでなく、少し離れた所にある影も利用することができるらしい。

 夜が主戦場の俺にとっては、あまりにも好都合な魔法である。


 【生活魔法】というのは、生活に必要な家事や洗濯…その他諸々ができる魔法だ。

 実はこの魔法もスキルで授からないと使うことができない魔法のようで、メイドとして雇われる人が多いとのこと。


 【予見眼】は先の説明通り、数秒後の未来を見ることができる能力。鍛錬によって伸ばすことも可能らしいが、それでも雀の涙ほどだそう。

 しかし、【超嗅覚】を持っている自分には、これで十分だ。


「【生活魔法】を選ぶとは…、なんともルーチェらしいですね」


「俺らしいって?」


「マメというか、キレイ好きというか。派手なものもあまり好まないじゃないですか」


 確かに俺は、潔癖症ではなくともキレイ好きではある。もちろん、お風呂も大好き人間だ。


「確かにそうかも…。暗殺を生業にしているからかな。異世界に転生させてもらった後でも、目立つつもりは無いし」


「陰に隠れる必要は、もうないのでは?あちらでは今までとは全く異なる、新しい家族や環境に囲まれますよ?」


「確かに家族の影響は大きかったと思う。でも何より、恩人の彼女が世の陰を貫き続けたんだ。だから俺も陰の部分は大事にしたい」


「異世界でも、暗殺をするおつもりで?」


「スピラの依頼次第だけど…、俺は続けていきたいかな。何故彼女が罪人を裁くことを始めたのか、何が彼女を突き動かしていたのか。その答えは、暗殺の中でしか見つからないと思うんだ。異世界で見つかるかは、微妙かもしれないけど」


「そうですか…」


「うん…?何か不服かい?」


「いえ。ただルーチェには、第二の人生を楽しむ権利もあります。私の依頼を考えてくれるのはありがたいですが、私はルーチェにも幸せになってもらいたいのですよ。あなたは()()()()()となれるのですから」


 …彼女の言葉か。


 未だにそれを嚙み砕けていない。

 誰かを導くなんて光は、俺とは真逆の存在だ。


「少しずつで良いんです。ただ彼女があなたに言った言葉…、そして彼女自身をルーチェがどこまで信じることができるかだと思います」


「その助言は頭に入れておくよ。いずれ、何処かで俺を変えてくれるかもしれないから」


「ええ、そうしてください」


 そう言ってほほ笑む彼女は、どこか安心したような様子だった。









本話も読んでいただきありがとうございました。

作者 薫衣草のTwitter → @Lavender_522


最近は雪がちらつく日が出てきましたね。

今年は普段より寒いな…と思っていたところ、下着がエアリズムであることに気付きました。

年末までには、変えなければいけませんね…

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