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3-3  お出かけの先で

いつも読んでいただきありがとうございます。


感想やいいね、ブックマーク登録等よろしくお願いいたします。

「ネロ!町に出かけるわよッッ!」


 そう声を上げたのは、我が産みの親たるアンナである。


 両手を腰に当て、仁王立ちをする様はまさに女王といった風貌。


 彼女の長い銀髪の乱れ方から、彼女の勢いが伝わってくる。


「6歳の誕生日会の服を買いに行くわ!とびっきりにカッコいいネロにしてあげる!」


 成程、俺の服を選んでくれるのか。


 しかし、彼女の横にあと二人もいるのだが…。


「ネロ!嗚呼ッッ可愛い!ふわっふわっ!」


 最初に俺の方へと駆け付け、そのまま抱き上げた彼女は、第一王女のミランダ。

 エミリア国王とクロー王妃の娘で、俺の姉に当たる人物だ。


 彼女は第一王子たるテオより一つ年下だが、既に学園の高等部を卒業。

 その後は公務をしながら、次期国王たる兄を支えている。


「もちもち肌もすごく良い…。スリスリし甲斐があるわ…」


「ミランダ姉様…、これ今朝もやりましたよね?」


「朝だけで足りると思っているの!?あなたは私を舐めすぎよ!」


「ちょっとよくわかりません…」


 彼女はこんな様子だが、学園では生徒会長で主席という優等生だ。


 第一王女という重圧がある中、彼女は本当に強かな人間だと思う。


 そして、その横にもう一人。


「ネロ。おてて繋ごう」


「わかりました。ルアミーナ姉様」


 俺より少し背丈の高い金髪の彼女が、第二王女のルアミーナ。

 俺の一つ年上で、彼女の母親もクロー王妃だ。


 俺は彼女の言う通りに、差し出された手を握る。


「それじゃあ、もう片方の手は私が貰うわね!」


「アンナお母様。ここは娘たる私に譲るべきでは?」


「この世は早い者勝ちよ。覚えておきなさいっ」


「くっっ…、隙を見て奪うしか無いか…」


「あらら、私に隙があると思ったら大間違いよ」


「確かにそうかもしれませんが…、私も学年一の実力でしたからっ!舐めないでほしいです!」


 俺の目の前で、アンナVSミランダが執り行われている。


 反対を見れば、ルアミーナが幸せそうにニコニコと。

 

「ネロ、お出かけ楽しみだね」


「はい。ルアミーナ姉様もわざわざ僕のために来ていただいて、ありがとうございます」


「ルアはネロのお姉ちゃんなんだから当然だよ」


 彼女はとても柔らかく、おっとりとした性格だ。

 エミリア王家はどちらかといえば強気な女性が多い中、彼女は少し異質な存在と言えよう。


 そんな彼女も剣を握れば別。

 凛とした佇まいに、堂々たる剣術を魅せるのだ。

 

 エミリア王家は幼い頃から高レベルの教育を受けるというのは勿論であるが、血統による才も大きいと思われる。

 

「あと何度も言っているでしょう?ルアのことはルアって呼んで」


「ルア姉様で良いでしょうか?」


「姉様もいらない」


「…ルア」


「あと、口調も崩して」


「…わかった。公式な場以外では、崩して話すよ」


「うん、よろしい」


 彼女はそう言って、俺の頭を撫でてくる。


 自分の姉と言えど、正式な場でタメ口をきくのは言語道断。

 日常生活内では支障が無いが、歳が一つしか違わないため気楽に接してほしいのだろう。


「よし!いくわよ!」








 アンナを先頭に町へと赴く。


 護衛は近衛騎士が5人に、それぞれの使用人。

 ネル…もといネーヴェも、俺の後ろにぴったりとついている。


 数台の馬車を利用しての移動となるため、王都の街中では非常に目立ってしまう。

 一応、ルートは全て貴族御用達のアッパー限定の街道を通るため、野次馬の国民が集まってくるという可能性は低い。


 この王都、特に王城付近では身分の差による町の区分けが割とはっきりされており、王城の近くに国民が来ることは難しい。


 そう考えると前世の日本は緩い方だろうか。


 地価という壁によって見えない区分けがなされていたが、皇居の周りを誰でも走ることができるのだから、この世界ほどは厳しくないと言えよう。

 流石に中までは入れないが、最低限の安全確保であり、身分の差を露呈させる要因であるとは言い難い。

 

 数分、馬車に揺られた後、目的地へと到着。


 王家がお世話になっている衣服屋。紳士服のようなものからカジュアルまで幅広く取り扱っているが、どれも値段相応の品質で貴族向けのものだ。


 この店の良いところは、派手なものから地味なものまで扱っていること。


 エミリア国王を始め、ギラギラとした服装をあまり好まない者が多いというのが今の王家であるため、貴族特化の店の殆どと趣味嗜好が合わない。


 しかし、王家に自社の服を着てもらうというのは、これ以上の広告塔が存在しないため誰もが狙いたい所。

 多くの商会が俺達の趣味に合わせたものをプレゼンしたが、結局はこの店に落ち着いたというわけだ。


 ちなみに黒い噂もない、正真正銘の良企業だ。


「これはこれはアンナ様。ミランダ第一王女にルアミーナ第二王女も。ご来店誠にありがとうございます」


 馬車を下りたと同時にこちらへやってきたのは、この商会のトップ。


 黒スーツに身を包み、清潔感と貫禄のある男だ。


 彼は彼女達への挨拶を一通り済ませた後、俺の真正面へとやってきた。


「そして、第三王子ネロ・ディ・エミリア様。初めまして、私はここの商会を経営しております、コフィンと申します。ご噂はかねがね…、『()()()()()()()()()()』と聞いております」


「よろしく頼むよ、コフィン。あと、それはちょっとオーバーすぎかもしれないな」


「御冗談を。私は人を見る目には自信がありますよ」


 へえ…。


 全部本心。嘘偽りの臭いが全くない。


 つまり、その誇張しすぎた俺の通り名も本当に聞いた話なのか。


 誰だよ。そんな恥ずかしい名前を言い出したのは。


「アンナ様。本日はもしやネロ殿下の…?」


「そうよ!ネロの6歳の誕生日に合わせてね!」


「ほう…、それは…」


 アンナの話を聞いた途端、コフィンの眼が光ったように見えた。


 これは…、嫌な予感がする。







 店の表で挨拶を済ませ、中に入った瞬間からそれは始まった。


 チキチキ、第三王子ネロ君の着せ替え選手権が。


 参加者はアンナ、ミランダ、ルアミーナに留まるはずがなく、ネーヴェ、他の護衛騎士に使用人。

つまりは俺以外の全員だ。


 俺は棒立ちのまま、既に数時間が経過している。


 ハンガーラックってこういう気持ちなのだろうか。


「ネル!あなた、センス良いわね!」


「ありがとうございます、アンナ様。私もネロ様に関しては自信がありますので」


「お休み中のモネも安心ね!この調子でじゃんじゃん頼むわ!」


「畏まりました…!」


 母様や、その人だけはやめてくれ。

 




――え、何でアイツが来るんだ?





 早くこの時間か終わらないだろうか…と思っていた所、意外な客がこの店を訪れてきた。

 ネーヴェも気づいたようで、俺の目線を交わす。


「あれ、ミランダ?」


「ん、今ちょっと忙しい…!ってティアじゃない!」


「久しぶりね!高等部の卒業以来かしら!」


「そうね!懐かしいわ…。嗚呼、みんな。この子はティア・ミフェンサー。私の高等部の時の同級生よ」


「アンナ様、ルアミーナ第二王女、ご無沙汰しております。そしてネロ第三王子、初めまして。ミフェンサー伯爵家の長女が一人、ティア・ミフェンサーと申します。以後お見知りおきを」


「ティアも元気そうでよかったわ。いつもミランダと仲良くしてくれてありがとうね」


「お久しぶり」


 ミフェンサー伯爵家の長女…、この人がそうか。


「初めまして、ティア・ミフェンサー殿。私はネロ・ディ・エミリア。ネロと呼んでくれてかまわない」


「それではネロ殿下…と。私のことも、ティアとお呼びください」


「嗚呼、よろしく頼むよ。ティア嬢」


「そしてこちらが…」


 俺との挨拶を済ませた彼女は、少し後方へと下がる。

 そして彼女の背後から、一人の男の子が出てきた。


「アンナ様、ミランダ第一王女様、ルア様、そしてネロ第三王子様。私はシェミル・ミフェンサー、こちらのティア・ミフェンサーの弟です。以後お見知りおきを。敬称も省いて呼んでいただいて構いません」


「シェミルもいつもありがとうね」


「うん、久しぶり」


「初めまして、シェミル殿。彼女と同じように、ネロと呼んでくれ」


「承知しました、ネロ殿下」


 シェミル・ミフェンサー。


 ミフェンサー伯爵家の長男にして、ルアミーナと同い年。つまり俺の一つ上だ。

 ルアに対する呼び方からして、既に交流を深めていたのだろう。


 余談だが、【超嗅覚】から察するに、彼はルアミーナに惚れているらしい。

 彼女を見る目もそうだし、彼女を前にした途端、少し顔も赤くなっている。


 対するルアミーナは無関心。心に揺らぎが無い様子。

 前途多難な道のりかもしれないが、是非彼には頑張ってほしい。










本話も読んでいただきありがとうございました。


作者 薫衣草のTwitter → @Lavender_522

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