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2-15 後始末と仲間

いつも読んでいただきありがとうございます。


感想やいいね、ブックマーク登録等よろしくお願いいたします。

 一体、どれほどの時間が流れた?


 さっきから、周りにいたアルミネやネーヴェ、アリアがワイワイ騒いでいるようだが…。


 俺は今何をされているんだ?


 口元に触れているものがある、


 俺の口内に何かが入ってきている。


 ぬめりけがあって…、少し甘い。


 濡れた何かが当たるような音。


 俺の中をかき乱すように蹂躙して。





「――ぷはあ…」


「…え?」




 気づいた時には、彼女の顔が良く見える位置まで離れていた。

 

 彼女は官能的な仕草で、自身の唇を一周。

 味わうように、桃色の舌を動かした。


「ご馳走様。契約完了だ」


「…はい?」


「聞こえなかったか?私との契約がなされた」


「え、そんなこと言われても…」


「おや…、顔が真っ赤じゃないか。ふふっ、意外にうぶなんだな」


「いや…別に」


「嗚呼、もう私は倒れるから。とりあえず受け止めてくれ。私の()()()


 彼女の言う通り、俺は崩れていくように倒れる彼女の身体を支える。

 

 契約って…、さっき話していたやつか?

 あんな一方的に結ぶことができるのか!?


「…え、どうしようッッ」


「ルーチェ様。とりあえず、そこのメス狐は放っておきましょう。ゴミ捨て場にでも…」


「そうはならないぞ!?」


「ねえ!なんで私の目の前でそういうことをするの!?」


「俺のせいではない!!」


 俺の腕に抱えられたミレーナは、起きる様子を全く見せない。

 恐らく眠っているだけだと思うが…。




「と、とりあえず、ミレーナを部屋に置いて来る」




 俺は逃げた。









________________________________________









 後日から、奴隷の彼女達をそれぞれの居場所へ送り届ける作業が行われた。

 

 影移動による最速運搬で、約9割を故郷や家族の元へ。

 一人だけ攫われた…というケースが多かったようで、戻るべき場所が残っていたのは行幸とも言える。


 対して、すべてを奪われた上で一人っきりになってしまった者もいるのだ。

 だが、同じ境遇の者と出会えたことで、その絶望は少しずつ和らいでいっている様子であった。

 

 しかし、彼女達全員に共通していたのは、心の中に何らかのトラウマが残っている点であった。

 男である俺への恐怖や、刃物への恐怖…。多少はバラつきがあったが、全て奴隷に落とされ、俺に拾われるまでの過程において心に刻まれたものであった。


 故郷があろうとも、生活が安定しようとも、抉られた心の傷を癒すことは難しい。





「――旦那様。本当に良いのか?」



「…何がだ?」



「私が彼女達に施す、()()()()だ」


 俺と今話しているのは、俺の契約聖霊となった(無理矢理させられた)ミレーナだ。

 彼女は屋敷内に作った扉から、俺の部屋を訪れてきていた。

 

 俺と契約した直後に倒れてしまったが、次の日には復活を果たしていた。


 とんでもない変貌を遂げて。


 6,7歳ほどの女の子から、高身長のとんでもない美女に大変身していたのだ。

 ショートカットにまとめられていた紫色の髪は肩あたりまで伸び、ふわふわとしたボブに。

 頭に生えていた耳や尻尾は、より狐だとわかりやすくなった。


 狐といえば妖狐の九尾を連想するが、尻尾は一本だけ。だが彼女も傾国の美女に違いはない。俺には【超嗅覚】があるため、彼女が何かに化けているという可能性は無いが。


 彼女は聖霊族の中でも、特に聖の属性に特化している。

 しかし、彼女は聖霊としてはあまりにも未熟であり、力を上手く操れないどころか、弱点にはとことん弱かったようで、首輪とは相性最悪だった。


 今は、その影が一切無い。


 何故なら、俺と契約を交わしたからだ。


 彼女は俺のことを、聖の権化と表現しているが、恐らくスピラ神の加護が影響を与えているだろう。その力が共有されたことで、彼女に大きな変化をもたらした。


 その結果、彼女の能力は主に二つ。

 一つ目は回復魔法。最大で部分欠損まで治せるようだ。聖に特化し、力を支柱に収めた彼女だからこそ至れる領域であろう。


 そして二つ目が、()()()()()()()()()()()()

 記憶を読む、書き直す、消去する。これら三つがその魔法の力。対象に近ければ近いほど、高精度で強力な魔法をかけることができるため、逆に遠距離から働きかけるのは難しい。


 俺はその話を聞いた時に、彼女達への治療を思いついた。

 催眠療法…、つまり彼女達のトラウマを和らげる治療を。


 彼女達の身体に触れて魔法を発動させることで、彼女達を綺麗さっぱりな精神状態にも戻せるだろう。


 これを使わない手はない。


 ただ、彼女には思うところがあるらしく…。


「旦那様に教わったこの治療は、確かに強力だ。他者の脳に作用する私の魔法は、今後もいろいろな場面で活躍するだろう」


「嗚呼。だから、ここでも活躍してほしい。故郷の無い者の行く先として、王都内の孤児院への相談も通ったんだ。彼女達はここから、第二の人生を歩むことができる」


「だからといって…、彼女達から()()()()()()まで消す必要はあるのか?」


 俺は彼女に、記憶を弄るついでに、ルーチェという存在も記憶の中から消してくれと頼んでいたのだ。

 

 どうも、彼女にとっては不服らしい。


「確かに、男と接するのが難しい者もいる。しかし多くの彼女達の心には、旦那様が支柱となっている部分が大きい。旦那様に助けられたという感謝の念もあれば、それを超えて愛へと昇華している者もいる。そんな彼女達から、奪っていいものなのか?」


「それは…」


「私はこの記憶が奪われるのなら、間違いなく死を選ぶぞ。私にとって、旦那様を初めて見たあの瞬間は、何にも代え難い最上のものだ。屈強な男達を舞の如く一掃した旦那様の姿は、夢に出てくるほどに鮮烈なものだった」


「…ミレーナ」


「どうした?」


「彼女達は本来、俺と関わるべきじゃない。俺がいる世界は、一歩でも足を踏み入れたら後戻りはできない。それだけ危険で、命に質量なんて無い域だ」


「旦那様は…、何故そのような世界を彷徨っている?」


「…絶対に見つけ出したい探し物がそこにあるから」


「探し物か」


「この答じゃあ、不十分か?」


「はあ…、本当に良い旦那様だ。より愛が深まったよ。添い寝にエミリア王都のデートで手を打とう。そもそも私にそのような技術を教えたのも、旦那様だからね」


「…努力する」


「私は一生ついていくからな。旦那様からのお願いもやぶさかではない」


「それは、勝手に契約したんじゃないか」


「旦那様にしては隙だらけだったからな。あんなミスは暗殺者失格だろう?」


「…手厳しいね」


「…旦那様は少し考えすぎだ。もっとシンプルに、余計な思考を絡めずに考えた方が良い。埒外の事象すら時には鵜呑みにするのが最適解であるように。人の感情に合理性というものは当てはまらないのだから」


「…考えすぎか」


「アリア嬢の言葉に、旦那様は揺れていたように見えてね。彼女のあまりにも真っすぐでひたむきな言葉は、旦那様にとってかなりの衝撃になったんじゃないか?」


「俺の脳を読んだのか?」


「単なる私の勘。聖霊族の勘だよ」


「成程、それは怖いね」


「こういう嫁も良いじゃないか。私は献身的で尽くすタイプだぞ?ちょっと重たいかもしれないが」


「勝手に嫁と決めるな」



――コンコンッ



 彼女の言葉に突っ込みを入れた所で、部屋の扉がノックされた。


「失礼します、ご主人様。コーヒーを淹れてまいりました」


「お、ありがとう?」


 部屋に入ってきたのは、ハイエルフのネーヴェだ。

 コーヒーを持ってきてくれたのはありがたいが、それ以上に気になる所が…。


「そのメイド服…、どこで手に入れた?」


「エミリア王都で買ってきました」


「何故着ている?」


「今はご主人様のメイドだからです」


 うん、意味がわからない。


 ミレーナ同様、彼女もどう説得しても俺についてくることを諦めそうにない。

 俺も彼女の誠意に折れてしまい、多めに仕入れておいた【偽装の耳飾り】を渡しておいたのだ。

 耳を隠し、髪や目の色も胡麻化した彼女は、エミリア王都を歩くことも容易に。


「ご主人様…、似合っていますか?」


「え、嗚呼。すごく似合っているよ」


「えへへ…、私こういうのが夢だったんですよ!」


「は?」


 彼女の素性については、既に聞いている。

 エルフが統治する、森王国フォレスタの第三王女であること。

 彼女の類まれなる才やその美貌から、姉からの嫉妬を集め、嵌められて呪いをかけられたこと。

 その後、国を逃げ出した先で捕まってしまったこと…。


 中々に、壮絶な過程を彼女は歩んでいた。


 しかし、奴隷から解放され、呪いも消え去った今、彼女には国に戻る意思もなければ、姉達への復讐心も一切無いらしい。

 そんなことより、俺についていきたい…とのこと。


「私は王女で、中々自由なおしゃれができなかったんですよ。だから、今は好きなものを着て、おしゃれできることが嬉しいんです!」


「それはわからなくもないが…。メイド服はどうなんだ?」


「ずっと、使用人の服が可愛いと思っていたんです!このフリフリなスカートに、黒と白のモノトーン。これ以外にも様々なスタイルがあり、それを楽しめるだけで私は幸せです!」


 これは…、王女様がファストフードを食べるのが夢だったとか、そういうことか?


 確かに、俺も第三王子の面だけだったら今のような自由な食事ができていないのか。

 自分で料理をするなんて以ての外だろうし。


 それにしても、あんな過去がありながら夢がメイド服というのは正しいスケール感なのか?


「それで…、ご主人様という呼び方は?」


「使用人といったら、そう呼びますよね?」


 まあ、その説は濃厚だ。


 しかし…、彼女達には俺のことも話しておかなければならないな。

 ルーチェとして何をやっているのかも説明していないし、ネロとヴェールの話もしなければ。

 もちろん、スピラによって転生したことと、彼女からの依頼の話は抜きで。


「ネーヴェ、アルミネを呼んでくれるか?三人に話しておきたいことがある」


「…?承知しました」






 ネーヴェとミレーナは、俺についてくることが本人の中では確定事項の様子。

 そうなると、アルミネ一人だけ仲間外れというわけにもいかない。


 そこで三人を集め、俺のことについて話した。

 ルーチェという名で何を成しているかを。

 そして他の面も持ち合わせていることも。



「ルーチェ…。これが本当の姿なの?」


「…ほう、中々の美少年じゃないか。こっちも好きだな」


「可愛い…」


 これが、ネロの姿に戻った時のリアクションだ。

 5歳児だと説明した時の彼女達の驚いた顔は、いつになっても忘れないだろう。







「あるじ!」


「どうした?アリア」


「おともだち、たくさんつくろうね!」


 あ…、そうか…。


 これで、俺にも仲間ができたのか。


「嗚呼、沢山作ろうか」


「うん!」


 彼女が喜ぶなら、この選択も悪くないのかもしれない。












本話も読んでいただきありがとうございました。


作者 薫衣草のTwitter → @Lavender_522

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