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2-9  同類

いつも読んでいただきありがとうございます。


感想やいいね、ブックマーク登録等よろしくお願いいたします。

「あるじ!あるじ!」


「ん?どうかしたか?」


「みてみて!()()()()をこわしたよ!」


「おお、成長したじゃないか」


「これで、ワタシもあるじくらい、強くなった?」


「…【シャトー・プリズン】」


「…え、これなんまい?」


「とりあえず、手加減して10枚だな」


「ええええええええ!!!」


 ここは【シャトー・アビス】の中、大規模な演習場として使用する空間だ。

 いつも通り皆が寝静まった時間に、影の中で活動をしている。

 

 俺と話しているのは――なんとあのアリアだ。


 『降魔の卵』から誕生した漆黒の龍は、みるみるうちに成長していき、俺と会話ができるようになった。

 彼女曰く、俺と話したかったから気合いで覚えたらしい。

 少したどたどしい部分が残っているが、ご愛敬ということで。


 現段階で、彼女は俺のことを全て知っている唯一の存在だ。

 第三王子、暗殺者、冒険者の3つの面を全て話している。


 それを聞いた上で彼女も俺と一緒に戦いたい…と言い出したので、訓練をするようになったのだ。


「ううう!ブレスくらええ!!」



 ドゴーーーーン!!!



 彼女がブレスを放った先には、俺が先ほど張った【シャトー・プリズン】の壁がある。

 10枚すべてを抜きたいらしいが…。


「…まだ9枚も残ってるぞ~」


「むううう!むずかしい!」


 まだまだだな。


 彼女を拾ってから、まだ1年も経っていないのだが、とにかく成長が凄まじい。

 言語を覚えたのは序の口で、体のサイズは既に大人サイズだ。

 俺がかなり上を見上げなければ、彼女の目を見ることはできない。


 しかし、彼女にとってはその巨体が邪魔なようで、身体のサイズを自在に変える術も身に着けてしまったのだ。

 彼女がもっとも落ち着くのは、俺の身体に触れているときのようで、赤ちゃんサイズがベストらしい。


 自分の欲望のままに、実行するための術を習得する…、龍の成長というのはとんでもない。


 最初のころは俺の影に忍ばせていたが、話せるようになってからは、基本的に俺の懐でもぞもぞしている。

 絶対に窮屈なはずだが、彼女にとってはユートピアらしい。

 人の目の無い時は、俺の首元から顔をひょこっと出している。


 彼女が生まれた後、俺はエミリア王城の書庫へと赴いた。

 何故なら、彼女の種の名前を知りたかったからである。

 ここの書庫は国内で最大規模であるのは言わずもがな、外に出せない情報も沢山存在する。

 まあ、ここなら乗っているだろう…という軽いノリで行ったのだが…。


 結論から言うと、彼女のような存在は確認できなかった。


 龍…、もといドラゴンは魔物として存在し、基本的にSランク冒険者が複数で倒せる規模のものが多く、確認されているドラゴンは数多くいた。

 それら全てを参照したのだが、彼女と同じ種類のドラゴンを見つけることができなかったのだ。


 俺としては彼女の存在に危険が無いのなら、仲間のドラゴンと幸せに過ごしてほしいのだが…。


「アリアは他のドラゴンのお友達に会いたいか?」


「なんで?」


「お友達と一緒に空を飛べたら楽しいだろう?」


「たのしくないよ?あるじといっしょなら、ぜんぶたのしいよ!」


「そ、そうか…」


 こんな調子なのである。

 完全になつかれてしまっているようで、今も子ドラゴンの形態になって俺の膝の上にいる。

 彼女の毛並みを整えるための櫛を調達して度々使ってあげているのだが、彼女にとっては至福のひと時のようだ。


 彼女の様子を見る限り、俺から離れる方が危険かもしれないな…。

 もし危険な存在となってしまった場合に、近くに俺がいなければ始末が難しくなる。


 そうなると、彼女のことは俺が一生面倒を見ていかなければならないのだが、ここで一つ悩んでいることがあった。


 それは、彼女を俺の()()として正式的に認知してもらおうか…という話だ。

 正確には、第三王子ネロ・ディ・エミリアの従魔として。


 龍を従えた…となると、周囲からの評判は上がるだろう。

 他国の血が混じろうとも、強さを示せば納得する者が多いと思う。

 勿論、彼女抜きの俺の力も学園に入学した際に示すことができれば良い。


 しかし、デメリットも十分にある。


 現段階では、もはやデメリットの方が多いとも言える。

 


ドゴーーーーンッッ!!!!



「あるじ!あるじ!5まい、たおれたよ!!」



 …やっぱり外に出すのは駄目かもしれない。









________________________________________









「…今日は俺一人なのか」


「お、ルーチェか。今日は午前中に数人、顔を出してきた程度だな」


「そうか」


 現在、俺はルーチェとして、再びマスターの所に赴いていた。

 俺の懐では、アリアがスヤスヤと眠っている。

 身長を大幅に胡麻化すことができる俺の工作は、眠るドラゴンを隠すことなど容易だ。


「フルーツジュースでいいか?」


「嗚呼、よろしく頼む」


 ここのフルーツジュースは、中々質が良い。

 王城で頼んでも、このレベルの物が出てくるかは微妙だ。


 裏の力というのは、やはり舐めてはいけない。


「…ルーチェ向けの情報が手に入ったぞ」


「…俺向けってどういうことだ?」


「ルーチェは俺にとって客だ。客の好みくらい知らなきゃ駄目だろう。ましてここは、一見さんお断りだ」


「…よく言う」


 しかし、ここでの情報に偽りは今の所無い。

 俺向けの情報というのも、本当にその通りなのだろう。


 否定的な態度を出しているが、実際はやぶさかではない。

 

 …俺向けってどういうジャンルなんだ?


「金貨3枚な」


「見本も見せずに前払いか」


「情報に見本も表紙も無いだろう。一文字でもそれを視界に入れさせたら、金は発生するんだよ」


「…新手の押し売りだな」


「好きなだけ言え」


 そう言いつつ、俺は懐から金貨を取り出す。

 枚数は3枚。求められた数丁度だ。


「お、今日は定価なのか」


「出来高制だ。ブツの価値によってチップを増やすよ」


「そうか。まあ好きにしてくれ。それでお前向けの情報だが…、1か月後に()()()()の大規模なオークションが行われる」


「…何?」


「西が崩れたことで、とりあえず今の所保持している代物を全部売っ払ってしまおうというわけだ。西はそういうのが得意分野だったからな。買い手が消されたんじゃあ、その手の商人は品をすぐにでも手放したいだろうさ」


「…なるほどな」


 前世で言うバッタ屋に近い話だ。

 ただでさえ違法で仕入れた品を、さらにアウトローに売り出す。


 本当に、屑の集まり。

 

 この世界には、奴隷制度が存在する。

 エミリア王国でもその制度が存在し、奴隷商人という専門職の者たちが奴隷を売り出すのだ。

 特にこの王都で儲かっている奴隷商人は、どこも教育の行き届いた人材としての奴隷という形を重視した、優秀な普通奴隷を扱う者が多い。


 普通奴隷…という言い方をしたが、普通じゃない奴隷も存在する。

 例としては犯罪奴隷が挙げられるだろう。


「西の御用達の奴隷…、ということは」


「嗚呼。女で見た目が良いか、レアな種族限定のヤツだ。歳は6~18くらいだろうな」


 …俺が西を最初に落とした理由には、それも含まれている。


 もっとも悪逆非道で、趣味も悪い。


「先も言ったが、時は今から1か月後。場所は…」


「いや、もう十分だ」


「そうか?奴隷達が監禁されている場所も知っているぞ?」


「問題ない。大体読めている」


「そうか、流石だな」


 西に関する情報収集は完璧だ。

 あいつら繋がりの商人が溜まる場所など、想像し易い。


「というか、何故この情報が俺向けなんだ?」


「答えなくて良いが…、西の角を落としたのはルーチェだろう?」


「……」


「西は、最も多くの命を奪っている連中だった。他の角は何かしらのビジネスが軸だったからな。裏でも過激派といっちゃ、まずあいつらが上がるだろう。お前が何を成したいのかは俺には図りしれんが…、俺も()()()()()()であるとだけ言っておこう」


「俺側?」


…【超嗅覚】


「ロータスもそうだが、俺にも仇がいてな。まあ、嫁さんや子供が俺にも()()ってわけだ」


 …初耳だ。


 嘘の臭いもしない。


「ぶっちゃけ俺は非力だ。武装した阿呆共と正面から殴り合うなんて死んでもごめんだね。だからこそ、情報という武器が俺にとっての最後の拠り所だ」


「情報が武器というのは、間違っていない」


「この裏には、根っから裏の奴と裏を返すために自分から裏に成った奴の二種類がいる。俺やロータスは後者ってこった。そしてお前も」


「…嗚呼」


「わかるんだよ、そういう過去を持つ俺たちには。嗚呼、こいつも俺と同じだ…ってな」


「…そういうものか?」


「そういうものだ。別にこんな所に脳みそを使う必要は無い。本能で捉えたんなら、それが正解なんだよ」


…投げやりのように見えて、そうとしか答えが出せないときはある。

 

 例えば、俺が彼女についていくことを決心した時みたいに。

 彼女が何故、罪人を粛清し続けていたのかという疑問が俺の頭に残り続けているみたいに。


 合理的な説明のつかないものなんて、この世に沢山存在するだろう。


「…情報、助かった」


「あいよ」


 俺はそう言って、グラスに入っていた残りを飲み干す。


「チップだ」


 そう言って、俺は金貨を数枚、カウンターの上に置いて外へ出ていった。


 



 …少し、渡しすぎたかもしれない。














本話も読んでいただきありがとうございました。


作者 薫衣草のTwitter → @Lavender_522

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