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2-8  Bランク冒険者ヴェール

いつも読んでいただきありがとうございます


感想やいいね、ブックマーク登録等よろしくお願いいたします。

「おらぁ!」


「ふっっ」


 戦闘開始直後、両者は一目散にかけだし、闘技場の真ん中で剣を合わせた。


 互いの力が拮抗し、甲高い金属音が衝撃波と共に響き渡る。


 数秒間の鍔迫り合いが続くが、両者の足は全く動かない。

 相手の技量に合わせている部分は大きいが、それでも彼の貫禄というものをひしひしと感じている。


「すっげえな…。結構本気なのだが!?」


「まだまだこれからでしょう!」


 これ以上の押し込みは無駄と感じたのか、ゲルマは一度俺から距離を取り、呼吸を整える。


 そして、再度の特攻。


 俺はゲルマが振り下ろす剣に対し、同タイミングで合わせる。

 先と異なるのは、その一撃では終わらないという点だ。


 そこから、剣戟の応酬が始まった。


 人の仕草や表情の動きに敏感な俺だが、彼はその特徴を理解しているのか、目線によるフェイントを混ぜ合わせてくる。


 観察眼が良く、適応能力も高い。

 近衛騎士の中に潜っても、十分に戦える実力を持ち合わせている。


 何よりも経験の積み重ねが彼を強者たらしめているのだろう。



 次は右上…いや、横の薙ぎ払いか。



キィィィンッッ!



「良い目だな」


「そちらこそ、良いフェイントです」


「全く騙せていないがな!ふっ!」


 そのまま、彼の剣は俺の剣を押し込み、俺は少し後ろへ後退。


 【予見眼】は使っていないが、十分に予測できるライン。

 Bランクの実力がどの程度なのかを測る良い機会になっている。


 それじゃ、そろそろ終わらせようか。


(【ウィンド・レ・アーリ】)


 その魔法は、自身の身体を魔力による風が包み込む。

 俺を中心として吹きおこる突風が、俺の全身に働きかけてくる。


「…あ!?風魔法も使うのか!?」


「ええ。魔法も多少は」


「多少ねえ…。そんじゃ俺も使おうか!」


 突如、ゲルマの剣が真っ赤に染まった。

 火属性魔法によるブーストである。


 魔法の使い方としては雑かもしれないが、剣を使う彼にとっては十分すぎるだろう。

 どうやら、本気を出してくれるみたいだ。


「良い火ですね」


「『炎華』サマとは比較になんないけどな!難しい魔力操作もできんが、俺には十分だ!」


 嗚呼、十分な武器になっている。

 

 次の一撃が最後。


 俺が発動している魔法は、風魔法【ウィンド・レ・アーリ】。

 主に飛行するために使用することが多い魔法だが、空を飛ばずとも推進力をあげるには持って来いだ。


 あとは、見た目が無駄に派手なのもポイントが高い。

 本気を出しているように見えるだろうから。


 端ではソルトが、デリアとラティアに何やら防壁を張る指示を必死に出しているが…、まあ気にしなくていいだろう。力加減を間違えるほど、浮かれてはいない。


 彼の力に合わせつつ、周りへの被害を風魔法で包み込む。

 これはアリアが庭を自由に羽ばたくために習得した技で、自信はある。


「行くぞッッ!」


「はい!」


 両者が駆けだす。


 俺は烈風を身に纏い、彼は剣から噴き出す真っ赤な火を速度へと変換して。


 この日の最高速が、中心でぶつかった。









________________________________________









「ヴェールさん、お疲れ様でした!こちらB()()()()()()()の認定カードになります!」


「ありがとうございます」


 俺は再度、受付の所へと戻ってきた。

 勿論、彼女から冒険者の認定をもらうためだ。


 ゲルマとの闘いは、引き分けという形になった。

 両者がぶつかったことによる影響は無く、無事平和に終わることができた。

 彼を倒す…という結果にはならなかったが、彼らと同じBランクに認めてもらえたのは行幸だ。


「おめでとう、ヴェール」


「ありがとうございます、ソルトさん。ゲルマさんはどちらに?」


「内接してる医務室にいるよ。最後の一撃で手が痺れて動かないらしい」


「嗚呼…、大きな怪我は無さそうですね」


「まあな。あいつは頑丈だけが取り柄だから」


 流石に、あとで様子を見に行こう。

 お見舞いということで、お菓子の類が必要だろうか。


「それにしてもヴェールさんは凄いですね!期待の新人ということで、早速組合の中で話題になっています!」


 成程、情報が伝わるのは速いものだな。

 さっきから周囲の人々のほとんどが俺のことを注目しているのがわかる。


 俺とゲルマさんの戦いを決闘場で観覧していた奴らがいたのだが、まあそいつらが発信源だろう。

 冒険者なりたてのガキがBランクと引き分けた…というのは、十分にインパクトがあるだろう。


「ヴェールさんは、冒険者ランクと同じBランクまでの依頼を受領することができます。さらに、同時に受けることのできる依頼もランクによって決まっており、Bランクでは3つになりますね」


「わかりました。早速依頼を受けても良いですか?」


「大丈夫です!あちらの依頼ボードからお好きなものを選んでください!」


 その後、俺は適当に3つの依頼を受け、無事にその日中にこなすことができた。

 

 Bランクを超えると専任の受付嬢が担当してくれるようで、俺は最初から面倒を見てもらった彼女…、シルフィにお願いすることに。

 とりあえず、冒険者活動ができる日は、一日に3つの依頼をぶん回していく。そうすれば、必然とランクも上がり、名声も後からついてくるだろう。


 効率を考えつつ、焦らず丁寧に仕事をこなしていくつもりだ。


 ちなみに、俺と戦った後のゲルマさんはピンピンしていた。

 後日、彼らと一緒に依頼を受ける約束もできたので、冒険者界隈において人脈を広げる一歩としては十分だ。


 冒険者ヴェールとしての初日は、満足な結果で終えることができた。








________________________________________








「国王陛下、こちらが報告書になります」


「うむ、預かろう」


 ここはエミリア王城、エミリア王国の執務室だ。

 正面には豪勢な椅子に机…というわけでなく、以外にも質素で機能的な内装。

 というのも、エミリア国王はあまり派手なものを好まない。

 

「ところで、ネロの誕生日会について公表したが、反応はどうだ?」


「レスタール侯爵様や、ミフェンサー伯爵様といった面々は、芳しい反応を見せております。ネロ様に対して娘を紹介したいという声も頂いていますね」


「嗚呼…、あいつらは好意的か。アンナのことはよく知っているうえ、ワシとも縁が深い。その辺の面々は心配はいらぬようだな」


「しかし、未だに反応の無い家もございます。ネロ様にはその機会に、婚約者を決めていただければ…と思いますが」


「どうだろうな…。ワシとしては、ネロには好きな者と一緒になってもらいたいがな。ワシの座を継がない以上、ネロを縛らせる物は少しでも減らしてあげたいものだ」


「ネロ様の継承権は確かに低いです。しかしお言葉ですが…、剣術、魔法、勉学といった全てにおいて、ネロ様は非常に優秀です。人柄も良く、使用人からは皆に愛されています。彼らの中に、ネロ様を推す者も出てくるのは間違いないかと」


「それは理解している。ワシもネロの素晴らしさを、父親として誇らしく思っている。だが…、ネロがこの座を手に取ることは無い」


「…理由をお聞きしても?」


「単純じゃ。()()()()()()()()()()()()()()()()。ただそれだけのこと」


「そうなのですか!?」


「ワシが直接ネロに聞いたのだ。この国の王となるつもりはあるか…と。そしたら即答であった…、『私はなりません』とな」


「それは…、ご兄弟方への謙遜では?」


「自分よりテオやアイクの方が適任だ…という言い方ではない。それほどにネロの意思は堅かったのじゃ」


「成程…、流石国王様とアンナ様のお子様と言うべきでしょうか」


「あの思い切りの良さはアンナ譲りじゃな。ワシなら少しは欲が出るだろう。ネロにはそのような影が一つも見えなかった」


「ネロ様の将来が、非常に楽しみですね」


「嗚呼、本当にそうじゃな」














本話も読んでいただきありがとうございました。


作者 薫衣草のTwitter → @Lavender_522

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