2-6 今後の展望
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「6歳の誕生日にお披露目ねえ…。やっぱパレードはしないんだな」
「今までの王子、王女はパレードをやっていたが、第三王子は控えるだろう。とりあえずは貴族たちへの顔見せで留めるのがベターだ」
「下手に王家にゾッコンな市民に銀色の髪を見せてみろ。反発が起きるぞ」
「おチビの言う通りなんだろうなァ。俺からしちゃ、歴史が枷になっているとしかと思えねえけど」
「…同感ではあるな」
エミリア王国の歴史上、魔法師が王家から出るのは初めてのことだ。
今まで、他国の王女を娶った代はいくつもあるが、彼らから生まれた子供の全員が、エミリア王家の血が濃い、金髪の騎士タイプばかり。
王家からしたら全員が大事な子供であったとしても、代々王家に使えてきた貴族の家や、歴史のある商会、はたまた愛国心の強い市民は、自国の王子として扱いたがらない者がいるだろう。
国民の特色はプライドが高い、という一言に尽きるのだ。
エミリア王家は強い!エミリア王家とはこういう者であるべきだ!…という一部の者による誇りの押し付け。
一応断っておくが、別に全員がそういう思想の持主というわけではない。
日本だって、真面目で温厚、シャイな国民性と言われることが多々あるが、全員が当てはまるわけではない。
ただ、その割合が多いと言われたら、否とは言いづらいのではないだろうか。
少し話が逸れてしまった。
俺は、自分で言うのもあれだが、王家や近衛の騎士、魔法師、そして王城の使用人達の評判は良いし、影口も言われていない。
俺の【超嗅覚】は、その辺には敏感だ。
恐らくだが、常時発動のスピラ神の加護も一役買っているだろう。人や動物に好かれやすくなるという恩恵は、最初はありがた迷惑かと思ったが、今では大活躍の加護だ。
しかし、王家というのは外からの見られ方をかなり意識しなくてはならない。
そうなると俺の表舞台へのデビューに、どうしても慎重にならざるを得ないのだ。
実際、彼らが俺に気を遣っている節もある。
絡みやすく人望もあるからこそ、申し訳なく思ったりしているのだろう。
俺は自分の立ち位置を自覚した上で、王家の判断が最良だと思っている。
無下に扱わず、一人の息子、一人の王子として見守ってくれているのだから、文句の一つも出るわけがない。
「第三王子のガキは、腫物扱いされてんのか?」
「王家や近衛辺りでは、良い話しか聞かないな。恐らくそう扱うつもりがあるのは、エミリア王城の外の奴らだ」
「へえ、そりゃよかったな。城の中でも嫌われちゃ、今頃どっかに捨てられているだろうに」
ぶっちゃけ、それは事実。
転生した初日にポイッなんて、普通に考えられる話だった。
しかし、それを否とする大きな力が存在する。
「…『炎華』だな」
「ルーチェの言う通り。母親たる『炎華』の存在が第三王子を守るのに最も貢献している」
「そんなに強いのか…。俺も魔法を見てみたかったなァ」
「阿呆か。燃やされるぞ」
「『炎華』の実力を理解している者とそうでない者、この違いが第三王子への対応に影響を与えることになるだろうな」
アンナの力を理解している者…、彼女の国に何らかの関係があったり、実際に戦場にいたという者は、第三王子たる俺との関係を持ちたいと考えるだろう。
あわよくば他国とのパイプが出来上がるし、彼女の力も借りれると思えば十分にプラスだ。
どの程度の女性をあてがうのかは定かではないが、長女を紹介する程までにこだわる家もあると思われる。
対して、アンナの力を理解していない者。
言い換えれば、異名が独り歩きした、少し魔法が使える程度の女だと評価している者だ。
この辺は、俺のことを見下しつつ、でも王家との顔は立てたいため、その家で最も身分の低い女性をとりあえず寄越す…、そんな感じだろう。
あわよくば小国を自在に操れる…という欲望が丸見えの家も出てくるだろう。
「そもそもの話だが、『炎華』ってのは何が由来なんだ?」
「所説出回っているが…、彼女が他の小国との小競り合いの際に使用した大規模魔法が、まるで炎で模られた薔薇のように見えたらしい。やろうと思えば、敵の軍勢を一人で燃やし尽くすことも容易だったそうだ」
「それって…、火属性魔法が出せるトップ火力じゃねえの?」
「その通りだな。巷では彼女のことを火力馬鹿だと揶揄する奴もいるようだが、事実はむしろ逆だ。洗練された魔力コントロールの上で成り立っている」
「へえ…、そりゃとんでもねえな」
マスターの言う通り、アンナの真骨頂は火力だが、操る力も並ではない。
彼女が『炎華』の異名を頂くようになった戦いにおいて、彼女の魔法による死者は両軍でゼロだったのだ。
戦場を燃やし尽くす程の大規模な魔法を放っておきながら、流れる血を最小限まで留めた。
彼女はラバルド王国という小国の出だ。
そこでは、最強の魔法師でありながら、平和の象徴としても慕われている。
しかし、所詮小国。
小国の英雄たる彼女の力が、大国たるこの国の全域で認められているかと問われれば、否定せざるを得ない。
「そんだと、あれだな…。そのガキがどの家の女を娶るのかも気になるところだな」
「…そうなるな」
「ん?おチビちゃん、なんか暗くねえか」
「気のせいだ。ぶっ飛ばすぞ」
「心配してあげたんだが!?」
「ロータスとルーチェは仲が良いな」
「骨折ってくるダチはごめんだな!」
冗談はさておき。
ロータスの言う通り、俺には婚約という壁が存在する。
前世と異なり、生涯独身は絶対に許されないのだ。
これは俺を悩ませる最大の問題でもあった。
「6歳ともなると、婚約者を少なくとも一人は決めるというケースが多い。実際、今まで全員が婚約者を決めている」
貴族の家によっては、20歳を過ぎても婚約者の決まらないような人もいる。基本的にそれは女性だけで、前世で言うキビキビ働くキャリアウーマンというよりは、金や地位に目をくらませすぎた守銭奴タイプだ。
しかし、学園への入学辺りで決めたり、卒業後にゆっくり探すなど、タイミングは家柄によって様々である。
だが、王族は別だ。
待ったをかけるのが、少々難しい。
「でもよ、第三王子ともなりゃ、婚約者はまだ決めなくてもいいんじゃねえの?」
「それもそうだが…、結局は本人がどう言うかだな」
継承権が低く、特徴から王族を代表するまではいかない…となると、確かに婚約の優先度は下がる。
実際俺も、今の所は延期させるつもりだ。
やりたいことがまだ沢山残っているから。
とりあえず、6歳の誕生日を迎えるまで1年と少し。
今まで以上にハードな計画にはなるが、確実にステップを踏んでいければと思う。
自分の意思を再確認していたところ、マスターがロータスへ質問を投げかける。
「ロータス…、この話を聞いたうえで何か動くつもりか?」
「俺は何もしねえだろうな。気に入らねえ面々が下手なことすんなら、暴れても良いかもしれんが」
「あの辺の輩は…、第三王子関連では大人しいと思うぞ」
「だよな。そんな気がしたぜ」
ロータスは、俺と同じように暗殺を主にしている。
彼は依頼を受けてこなすため、その点で俺とは異なっているが。
彼は元奴隷で、生まれ育った故郷をこの国のとある貴族に襲われ、家族を皆殺しにされたのち、違法奴隷の商人に拾われた。
裏の取引によって他の貴族によって買われたが、そこからも毎日が地獄の日々であった。
そんなとある日、主人たる貴族を殺し、その場から逃走したのだ。
そんな過去が今のロータスを形作っている。
彼の目標は、故郷を滅ぼした貴族を潰すこと。
頭だけでなく、派閥丸ごとだそうだ。
裏での活動をしつつ、復讐のために情報集めをする。
恐らく、そんな奴がこの世界には山ほどいるだろう。
…俺も、同じような立場だ。
「――あ、そうだ。ルーチェ、ブツが手に入ったぞ」
「おお、助かる」
「ん?何を頼んでいたんだ?」
「それは…、これだ」
ロータスの問いに対し、マスターは口頭で答える前に実物を見せる。
箱の中に入っていたのは、一組のイヤリングだ。
「へえ…、『偽装の耳飾り』か」
「ただの『偽装の耳飾り』じゃないぞ。髪と目の色は勿論、全身の見た目そのものを変えることができるヤツだ」
「…は?そのレベルの耳飾り、どう手に入ったんだよ?」
「秘密だな。でも、ルーチェが大金を叩いてくれたからできたんだ」
「おチビ…、いくら出した?」
「…白金貨5枚だ」
「…控え目に言って、引くわ」
西のレクスを落として本当に良かった。
角のトップともあれば、大金を保持しているに違いなかったから。
これで、俺がやりたいことを進めることができる。
本話も読んでいただきありがとうございました。
作者 薫衣草のTwitter → @Lavender_522




