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芋もち

作者: 渡邉 一代

懐かしのおばあちゃんの思い出みたいな感じです。ほのぼのと読んでもらえればそれでいいです。

 この坂を登りきった先に、私の祖母が一人住んでいた。子供達が帰っても泊まれるくらいの広さの古民家だった。

 家の裏には緑色に染まる木々があり、今登っている坂を下れば海水浴場があった。

 夏になると毎年のように、従姉妹達と祖母の家に何日も泊まっていて、毎日海に入り真っ黒に日焼けをしていた。

 私たちが祖母の家に到着すると、「めし食べよ〜。」から始まる。

 食事は祖母が作ってくれていた。海の近くなので、魚が毎日のように出たし、祖母が作った新鮮な野菜や果物が食卓に並んだ。

 魚ごはんや、魚の姿寿司、田舎の巻き寿司、梅酒、瓜の漬物、芋もち、ありとあらゆるものが祖母が作ったものだ。

「千紗、柚木、敬人、寛之、海行くとき、堤防には行ったらいかんよ。危ないからな。」

「わかった。」そういいながら、到着そうそう祖母の作った御飯を頬張る。

「おかわりもせいよ。」

「うん。おかわり。」

「自分で好きなだけ入れてこい。」

「はーい。」そして、ご飯を三回おかわりする。

それだけ食べても、この頃は動くからか、太ってはいなかった。

 私が祖母が作るもので、毎回楽しみにしているものがあった。それは芋もちだ。

 この芋もちは甘くて美味しくて大好きだった。

 おそらく、この芋もちは、どんな料理の番組や雑誌などでも見たことがないので、この地方のものなのか、祖母のオリジナルなのかはわからない。

 この芋もちは、さつまいもが使われるのだ。

 お餅をつく器械で、ある程度お餅がつけたら、そこに蒸したさつまいもを投入する。おそらく砂糖や塩も入っているとは思う。そうやってできたものに、エゴマと砂糖を混ぜたものを、きな粉をまぶすような感じで丸められた芋もちにつけるのだ。

 見た目にはできたての餅にエゴマと一緒に混ぜた砂糖が溶けるのか、とてもしっとりしている。もしかしたら水飴でもまじってるのか?そう思ってしまうが、真相はわからない。

 いつもこの芋もちを、従姉妹達と競うように食べていた。

 ただもうその芋もちは、口に入ることはない。作り方を知っている母までも居なくなってしまったから。

 あっ、そうそう。祖母はね、いつも私たちに呼びかける言葉があった。

「めし食べたか〜。」「めし食べよ〜。」

いつもご飯を食べたか聞かれた。

それは、祖母が入院したのでお見舞いに行った時にも、第一声がそれだった。それは大人になっても変わらずだ。

「大丈夫。食べたよ。心配せんでええよ。」

そう笑いながら答えたなぁ。

 祖母は、起床が毎朝2時だった。昼の2時ではなく真夜中ね。その時間から起き出して、神棚や仏壇へ手を合わせ、朝食の準備や、少し明るくなれば畑へも行っていた。誰にも真似できない働きものの祖母だったなぁ。

 もちろん、さつまいもも祖母が畑で作ったもの。エゴマもそう。ただ山の中にあるので、祖母の畑に行ったことはなかった。

「また今日もやられてたわ。折角作りよったのに。」

「誰にやられたん?」

「山にいる動物や。イノシシや猿とか色々や。」

ただ、遭遇はしてないみたいだ。まぁ、動物達も寝てる時間帯なのかも知れないなぁ。

 

 話はかわるんだけど、一度ね、家で市販のお餅に芋混ぜてみたけどね、上手くいかなかったよ。あれはね、杵付きのようにつかないとうまくいかないみたい。食べたいな、芋もち。

 

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