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【受賞/アイリス異世界ファンタジー大賞銀賞】悪役令嬢のはずなのに、氷帝が怖いくらいに溺愛してくる  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!


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氷帝の問題


「それでお嬢様、私はどうしてこの場に連れて来られたのですか?」


 若干責めるようにお嬢様を横目で睨むと、


「私にもよく分からないのよ。何もかもが分からないの。だからあなたに助けてほしい」


 という返事が。


「では分かっていることを話してください」


「ええと……陛下が私に『恋人役を演じてほしい』とおっしゃるの」


「え、なぜ?」


「うーん、私の演技が上手いから?」


「演技、上手いんですか?」


「知らないわ。オファーいただいたってことは、たぶん上手いんじゃないの?」


「あのね、お嬢様」ルースはイラッとした。「阿呆な推測は不要です。告げられた事実のみを話してください」


 ルースに叱られても、しょげるようなソフィアではない。んー……と斜め上を見て記憶を探り、


「取引ですって。私がそれを演じると、テオドール・カーヴァーと縁が切れる、って」


「ふぅん……」


 どういうことなのだろう? ルースが氷帝を見遣ると、彼からはかなり腹を割った説明がなされた。


「これから話すことは口外無用でお願いしたい」


「承知いたしました」


「私はある深刻な問題を抱えている」


「それは……もしかして、魔力に関係することですか?」


 これは乙女ゲームで仕入れた知識だ。ゲーム内ではヒロインのマギー・ヘイズがこれを解決するわけだが、この世界ではお嬢様が氷帝の相棒として選ばれたということ?


 陛下が頷く。


「そうだ。解決策をずっと探していたのだが、なかなかこれというものを見つけることができずにいた。ところがソフィアならこの状況をなんとかできるかもしれない」


 本当にお嬢様にそれができるのか? は一旦置いておくとして。


「えーと……たとえばお嬢様を『秘書』としてそばに置いておくのでは、だめなのですか?」


 なぜ恋人役にこだわる?


「彼女には二十四時間、私のそばにいてもらわなくてはならない。事務的な関係ということでは外部に説明がつかないだろう」


「なるほど……では、お嬢様を陛下の婚約者にしないのはなぜですか?」


 ルースはこの点について納得がいっていなかった。


 貴族令嬢であるお嬢様が陛下と恋仲になったと噂され、すべてが片づいたあとひとり放り出されたら、行く末はどうなる? 陛下は自身が抱える問題を解決してもらうつもりであるなら、見返りとしてその後の彼女の人生も面倒を見るべきでは?


「婚約者に据えてしまうと、ソフィアの選択の自由を奪ってしまう。こちらの都合で付き合わせるのに、結婚まで強要するのは忍びない――ソフィアはテオドール・カーヴァーとの一件で、今は結婚に対して良いイメージを持っていないだろう? 現状は私が抱える問題の解決策が見つかっておらず、外部に事情を説明することができないから、恋人役を演じてもらうしかない。しかしソフィアが解決してくれたあとは、『治療に協力してもらっていただけだ』ということを必ず周知させる」


 だから『恋人役』なのか。


 婚約してしまうと、あとで『事情があって一緒にいた』と説明しても、契約の領域になってくるから、そのまま結婚へ進むしかなくなる。


 陛下はソフィアの気持ちを優先してこの提案をしてくれたというのが、ルースにも理解できた。


「ではその後、お嬢様が誰とも結婚できないという事態にはならないですね?」


「約束する。治ったらあとは知らぬ存ぜぬ、ということは絶対にない。責任は持つから、治療には誠心誠意協力してほしい」



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