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スイーツ


「あの……指、舐めて……」

 アタシは恥ずかしいのを承知で留梨子にお願いした。

「アユムから誘ってくるの珍しいね」

 こう言われるのをわかっていた。でも、これは単なる発情でも、好奇心でもない。

 ちゃんとした理由がある。

「小説の参考にするだけだよ」

 そう。アタシこと国木田歩くにきだ あゆむは小説家だ。

 とても売れてるとは言えないが一応は小説家だ。

 先日、発表した作品も賛否はあれど好評だった。

 アタシは小説に出てくる指フェラシーンにリアリティを求めるため、恥をしのんで留梨子に頼んでいるのだ。

「そんな恥ずかしがらなくても普段からもっといやらしい事してるじゃない」

「それはそれ。これはこれ」

 そう。それとコレとアレとは全くもって別なのだ。

 アタシは手を清潔に洗ってきて、留梨子の前に正座した。

 留梨子は照れる様子もなく、言った。

「指出して」

 は、はい! とアタシは心の中で返事をし、己の右手を留梨子の前に差し出した。

「ん……あっ」

 留梨子はアタシの右人差し指と中指を口に咥えると器用に舌で転がした。

あたたかい……指の根元に歯が当たって、少しくすぐったいけど、心地いいな。留梨子の中。

 留梨子の口の中の感触を堪能する前に、留梨子は指から口を離し、こんなリクエストをしてきた。

「ねえ。シロップ付けてよ」

「え?」

「せっかくだからさ」

「せっかくって……」

 アタシは留梨子の言う通りに自分の指にメイプルシロップを垂らした。

 こぼれそうになったのを留梨子が舐め、そのまま、指をくわえ込んだ。

吸い付きがさっきと違う……! 指全体を味わわれてるみたいでなんか。

 留梨子の口からわざとなのか、シロップのせいなのかチュクチュクと音が鳴る。

 やばい、やばいよ。留梨子。エッチすぎるよ。

「ん、るりこ……」

 アタシは留梨子の口の中で指を軽く動かしてみた。

 留梨子の身体が微かに反応する。

 口の端から唾液が垂れかけてるのがまた色っぽく、当初とは違う感情が芽生えてきた。

「どう?」

 留梨子は少し、頬を赤らめながら、指から口を離し、垂れかけていた唾液を拭って訊いてきた。

「あ、ありがとう。参考になった。うん。参考になった」

どうしよう癖になりそう。

次、頼むときなんて言ったら……。

「次はアユムが私にしてよね」

「え!?」

「アユムが気持ちよさそうだったから、私もしてほしくなっちゃった」

「わ、わかったよ」

留梨子はアタシがさっきしたみたいに自分の右手人差し指と中指にメイプルシロップを垂らしアタシに差し出した。

「咥えて」

「うん……」

 甘い。アタシはその甘さを求めるように留梨子の指であるのも忘れて貪るように舐めた。

「アユム、ん、激しい……」

「ごめ……ん」

 留梨子はアタシに反撃するかのように指を動かした。

「……!」

「結構、くるでしょ……?」

 アタシは唾液が垂れるのも気にせずに夢中で留梨子の指を味わった。

 自分でもチュクチュクと、はしたない音が口から漏れてるのがわかる。

 留梨子を見ると息が上がっている彼女がいた。

「アユム……私、もう我慢できない。しよ?」

 留梨子はアタシの口から指を離すと唾液を舐めとるように舌を這わせて唇を合わせてきた。

「留梨子、今日はそんなんじゃ……!」

「アユムがそうでなくても、私はいつも、アユムとしたいの」

「留梨子……」

 アタシはメイプルシロップを口に垂らし留梨子の口に深くキスをした。

 ふたりの舌がいつも以上にお互いを求め合った。

 それは好きを確認するかのように。

「……甘いね」

 どちらが先に言ったのか、そんなことはどうでもよかった。

 指だけのつもりだったけど、留梨子を全身で感じたい。

 アタシは欲望に忠実なのだから。


 買い置きのメイプルシロップのボトルが無くなった頃。

 留梨子は嬉しそうにアタシに言った。

 

「アユム、今回の小説傑作じゃん!」

「留梨子がしてくれたから……」

「アユムの指フェラ。かなり上手かったよ。また、してもらおうかな?」

「え!?」

「もう、あれだけで私イッちゃいそうだった」

 アタシは思い出して顔が真っ赤になった。

「あ、アタシだって、留梨子に指フェラしてもらいたい……」

「アユム……かわいい!」

 留梨子はアタシに抱きついてきて優しくキスをしてくれた。


スイーツ『了』

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