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第9話 ガーネリア森林

 外の世界に出て、5日が経過した。

 外の世界のことを何も知らなかった俺にとってアカネの存在はとてもありがたく、世界の生き方を俺に教えてくれた。


 目的地は王都イリオス。

 瞬間移動の魔法を使えれば楽なのだが、あれは一度行ったことのある場所でなければ使うことはできないので、俺たちは徒歩で王都を目指していた。

 だが、そんな時に役立ったのが、アカネが持っていた紙の地図である。王都までの方角だけではなくて、道のりに何があるのかを事前に知ることができた。


「多分今私たちがいるのがここね。そろそろ次の森に到着するわよ」


「ああ。その森を抜ければついに王都か……意外とすんなり来れ……」


 ……と言いかけて目の前に現れたのは一匹の青いゲル状の魔物。

 見るからにとても弱そうだ。

 

「アカネ、こいつの名前はなんて言うんだ?」


「あぁ、それはスライム。世界最弱の魔物よ」


「へぇ……まあとりあえず倒すか。古代水魔法……」


「ちょっと待って! たまには私がやるわ! こんなのも倒せないようじゃ開拓者失格だもの」


「そうか、分かった。頑張ってね」


 アカネが短剣を抜きスライムに飛びかかる。

 ……が、スライムはそれを余裕でかわすとアカネに体当たりした。


「きゃっ!!」


 アカネが衝撃でしりもちをつく。

 世界最弱の魔物が初勝利を挙げた瞬間であった。


「大丈夫かアカネ」


 駆け寄ると彼女は不機嫌そうに立ち上がる。


「シエン。もうあなたがやっちゃっていいわよ。しょうがないから手柄を譲ってあげるわ」


「……負けてしまったんだな」


「うるさい!! そんなわけないでしょ!! 私が……や、やるまでもないってことよ」


「なるほど、十分に理解した。俺はちゃんと分かってるから大丈夫だよ。真剣な勝負だったんだ、たとえこいつに負けたとしても誰も笑わな……」


「いいからやりなさい」


 アカネの至極冷淡な口調に謎の寒気が走る。


「ご、ごめんなさい。――古代水魔法・海割り」


 スパァァン!

 スライムの体が水の衝撃波により真っ二つになる。

 途端に体が消滅し、小さな魔石がコロンと落ちた。


「これっぽっちか……この感じだと今日も最低ランクの宿しか取れなさそうね」


 ――初日に森を抜けた俺たちは、現在王都への街道を進んでいた。

 所々に点在する宿屋に泊まりながら、王都を目指し歩く毎日。


 宿屋のシステムは簡単で、お金を払い金額相応の部屋に泊まることができ、魔石をお金の代わりにすることもできる。

 しかし元々この辺りには弱い魔物しかいないのか、質の良い宿にはまだ泊まれていない。弱い魔物から落ちるのは小さな魔石ばかりで、全然値が張らないのだ。


「そうだな。――そういえば、ずっと気になってたんだけど、アカネってどんな魔法が使えるんだ?」


「え?」


 動揺からかアカネが魔石をぽろっと地面に落とす。


「ん? どうした?」


「いや……なんでもない。えっと、そ、そうね……色々使えるわよ」


「そうなんだ、具体的にはどんなの使えるんだ?」


「そ、それは……色々よ色々。とにかく色々なの!」


「そうか……まあいいか」


 この時俺は彼女の言動を軽く流してしまったが、後に知ることとなる……。

 アカネは魔法が使えないということを……。


 翌日。

 街道を進む俺たちの前に鬱蒼とした森が立ちふさがった。

 アカネの地図を見ると、それの名はガーネリア森林。

 王都の東に位置する森だった。


「やっとここまで来たわね。この森を抜ければいよいよ王都ネルキスよ。まだ時間も早いし今日中にはここを抜けれるでしょ」


「ああ……だといいんだが」


 意気揚々と森を見上げるアカネとは違って俺は違和感を感じていた。

 精霊族特有の森に対する感覚がその違和感を感じ取っていたのだ。

 ……どこか変だ。上手くは言えないけど、この森全体がまるで……。


「シエン?……シエーン! シエン! ちょっと聞いてるの!?」


「……ん? あ、ごめん。何だった?」


「いや、なにとかじゃないけど。ぼーっとしてたから……大丈夫? 体調悪いなら出発明日にする?」


「ううん、大丈夫だよ。ありがとう」


「本当かな?……」


 アカネが心配そうに俺の顔を覗き込む。

 その顔を見ていたら自分の心配なんてどうでもいいことのように思えて、思わず笑ってしまった。

 

「な、何笑ってるのよ!」


「ごめん……嬉しくてさ。アカネが俺のこと心配してくれてるのが素直に伝わってきて、嬉しかったんだ」


「ええ? きゅ、急に何言ってんの!? あなたのことなんか……心配してるわけなじゃない!!」


 それが本心ではないのはもちろん分かる。

 アカネはそれが知られるのを恥ずかしいと思っているみたいだけど。


「そんなことより、問題ないならさっさと行くわよ!」


 違和感の正体はまだ分からないが、きっと何とかなるだろう。

 強い魔物が出てきても対処できるくらいの魔法は、一応身に付けているつもりだ。

 それにいざとなれば瞬間移動で逃げればいいしね。


「うん、行こう」


 俺たちはガーネリア森林に一歩踏み入れた。



 ……と同時に俺の意識は消えた。

ここまで読んでいただきありがとうございました!

面白いと感じられた方は是非ともブックマークをお願いします。

また下にある☆☆☆☆☆から、作品の率直な評価を頂けると嬉しいです。


作家にとって読者様の応援や感想がとても励みになります!

より面白い作品を目指して頑張りますので、今度とも応援よろしくお願いいたします!

ちなみに、シエンは精霊族なので幽霊を見ることができます。

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