第8話 目指すは王都
「ムン村? 精霊族? なにそれ?」
「精霊族は分かるだろ? 森を加護している種族。それのムン村から……」
「全然知らないわよ精霊族なんて。もしかしてでまかせ言ってるんじゃないの?」
「いやいや全部本当だよ」
だが確かに、俺が外の世界のことを何も知らないように、彼女も俺たちの世界のことを何も知らないのかもしれない。
「まあいいや。……私はサン村のアカネ。もう会うことはないでしょうけど、あなただけ名乗らせるってのも変だし……」
そういう所は意外と律義なんだな。
しかし村を出てすぐ魔物と出くわすなんて……ん?
そういえばこいつはどうしてこんな所にいるんだ?
こんな森の深くまで……来るか普通?
「……そういえばお前はどうしてこんな所にいるんだ?」
疑問をそのまま口にすると、アカネはバツの悪そうな顔をした。
「えっと……それは……その……何というか……観光?」
「嘘つけ。木しかないぞここら辺には」
「……っ! ……ったのよ……」
「ん?」
急にアカネの声が小さくなり聞き取りにくくなった。
「……よったの……」
「よった? ごめん、よく聞き取れなく……」
「迷ったって言ってるの!! 何回言わせれば気が済むのよ!! 迷ったの!! 私は迷ったの!!」
「なんだ、そんなことか」
「そんなこと!? あなたは外の世界を知らないでしょうから教えてあげるけど、この森は一度迷ったら出られない……」
「古代水魔法・水面の導き」
彼女に言葉に構うことなく俺が呪文を唱えると、足元に円形の水たまりが現れた。
「アカネ、お前はどこに向かおうとしていたんだ?」
「は? お、王都ネルキスだけど」
「それならちょうどいい。俺もそこに行こうと思っていたんだ。――水面よ!王都ネルキスを示せ!」
すると声に反応して水たまりの形が矢印に変化し、南西の方角を示した。
「この魔法は俺の声に応じてその場所を示してくれる。王都はあっちの方角だ」
便利な魔法に驚いたのか、アカネの目がまん丸になる。
「お前もケガはなさそうだし、俺は王都に向かうが……どうする?」
「どうするって何?」
「一緒に来るか、来ないか。……自分の人生なんだから自分で決めればいいよ」
アカネに背を向け一歩踏み出す。
「待って! えっと……その……ついていってあげてもいいわよ? その……この世界のこと全然知らないみたい……だし?」
後ろを振り返ると、恥ずかしそうな様子でアカネが目を泳がせていた。
俺はふっと笑うと言った。
「じゃあ俺からお願いしてもいいかな? アカネ、一緒に来てほしい」
「しょうがないわね。……ついていってあげる」
こうしてアカネが加わり、俺の王都への旅は始まったのだった。
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ちなみに王都ネルキスは世界の中心にあります。