第5話 試練
「へぇ……やるじゃん。……魔法を構成する核とも言える術式。私たちでいう心臓部分。それをたった一瞬で破壊してしまうとは。君は恐ろしい子だね」
「レイさんに言われたくないですよ。さっきの攻撃、完全の俺の頭狙ってましたよね!? 避けられずに死んだらどうするんですか!」
「そんなことはいいじゃないか。ほら、実際に今生きているわけだし!」
レイが杖の先から、火球を繰り出した。
呪文の詠唱もなく放たれたその魔法は、俺目がけて一直線に飛んでくる。
「古代水魔法・海割り!」
スパァァァァァァンン!!!!!
水の刃で撃墜すると、今度はその影から2本の土の槍が俺の頭を狙う。
「……っ!!!」
紙一重で避けると同時に、両手で2本の土槍に触れる。
「古代光魔法・術式解除」
術式が破壊され、土槍が崩れ去った。
「見事見事。ではこれはどうかな?」
次いで俺を襲ったのは巨大な竜巻だった。
足に力を入れなければ後ろに吹き飛ばされてしまう程、物凄い風圧だった。
「魔法を合わせることもできる。例えばこんなふうにね……」
レイはそう言うと、杖の先から繰り出した火球を竜巻に衝突させた。
途端に竜巻は炎を帯び、ゆっくりと俺に近づいてくる。
「合技・火竜の烈風」
「くっ……」
一つ一つの魔法の威力は古代魔法には及ばない。
しかしその全てが無詠唱で、虚をつくような使い方をしてくる。
俺がまだ辿り着けていない無詠唱の領域に踏み込んでいるだけではなく、戦い方を熟知している。
「どうしたシエン。何もしなければ死んでしまうよ」
「ええ、そうですね……そろそろ何かしないとヤバイですね!」
確かにレイの魔法は俺にとって脅威だったが、窮地に立たされているわけではなかった。
この竜巻が良いヒントをくれた。
「魔法は合わせることが出来る……それは古代魔法にも言えることなんじゃないんですか?」
両手を前に出し、構える。
「古代風魔法・妖精の羽ばたき……」
レイのものよりも一回り大きな竜巻が俺の前に出現する。
「そして……古代雷魔法・神々の怒り!!」
呪文の詠唱に伴って左手から放たれた雷撃が竜巻と混ざる。
風と雷が融合し、電気を帯びた竜巻がレイの火の竜巻に突っ込んでいった。
「合技・精霊神の雷風!!」
次の瞬間、2つの竜巻が衝突し、耳をつんざくような破壊音と、目も開けてられないほどの風圧が辺り一面に広がった。
大量の土煙が舞い、木の葉が空中に散乱した。
「すごいね……ここまでとは……」
土煙が明けた時、レイの首元には土槍が迫っていた。
俺の土魔法でつくり出した槍である。
「竜巻を相殺しただけではなく、あの暴風の最中……私の背後まで回り込んでくるとは……」
「古代光魔法・閃光……光の如く一瞬で移動する魔法です。さすがに走っては来れませんでした」
俺はレイのすぐ後ろに立っていた。
「はぁ……そうか。あの合技、けっこう本気だったんだけどな……」
レイは悔しそうに振り向くと、俺の頭を撫でた。
「君の実力十分に見せてもらったよ、シエン。……私も超上級魔法を使っていたんだが、それが霞んで見えてしまうほど君の古代魔法は凄かったよ。君ならこの村を出てもやっていけるはず。おめでとう。試練は合格だよ」
ここまで読んでいただきありがとうございました!
面白いと感じられた方は是非ともブックマークをお願いします。
また下にある☆☆☆☆☆から、作品の率直な評価を頂けると嬉しいです。
作家にとって読者様の応援や感想がとても励みになります!
より面白い作品を目指して頑張りますので、今度とも応援よろしくお願いいたします!
ちなみにシエンとレイが戦いを始めると、長老は村に逃げました。