第48話 永遠《ラグナロク》
――その魔法の存在を知ったのは二十歳を過ぎた辺りだった。
いつもの様に古代魔法本を読んでいた俺の目に飛び込んできたのは、”神級”という文字。
魔法は下から、下級、中級、上級、超上級の四つに分かれているはず。
だがこの魔法はそのどれにも属さない”神級”の魔法だった。
魔法の名前は永遠。
全魔力と引き換えに一撃を放つ、最強の光魔法だった。
――シエンの放った光の斬撃は天空を昇っていき、ブリューナクの足元まで到達した。
「……っ!」
ブリューナクはそれに気づくも、対応しきれず、まともに斬撃をくらう。
「ぐあぁ……え?」
……しかし斬撃は傷すら与えずブリューナクの体をシュンと通り抜けていってしまった。
「なんだ今のは……攻撃……なのか?」
ブリューナクは体を反転させ、斬撃の跡を目で追った。
だが天空に顔を向けた瞬間、目の前に光の斬撃が迫ってきていた。
「なんだと!!」
だがまたも斬撃はブリューナクを通り抜け、地面へと落下していく。
「一体何が起こって……」
言いかけてブリューナクは絶句した。
四方八方から光の斬撃が自分に向かってきていたからだ。
「どこから……」
その斬撃は三度ブリューナクの体を通り抜けると、空中に散っていく。
ブリューナクは事態を把握するためその光の軌跡を目で追った。
するとブリューナクの体を通り抜けた光は空中を突き進み、適当な所で二つに分離していた。
まるで壁に当たって跳ね返るように。
「これは……っ!!」
とてつもない魔力を周りに感じ、ブリューナクがさっと辺りを見回すと、いつの間にか自身を白い膜のような物が囲っていた。
膜は球体型で、斬撃はそれに当たって分裂を繰り返していたのだ。
「この魔法は……なんなんだ……」
斬撃の数はどんどん倍加していき、ブリューナクに突き刺さる。
「ぐっ……! なに!? い、痛みが……!」
ブリューナクの腕に小さな傷が出来ていた。血が滲んでいる。
「まさか……威力が増したというのか……壁に当たるごとに……威力が増すのか!!」
シュン、シュン、シュン!!
威力と速度を上げた無数の光の斬撃が、ブリューナクの体を切り刻む。
「くそぉ……!! この我が! 三騎士ブリューナクが死ぬものか!!」
水の竜を出すが、空中を飛び交う光の斬撃に一瞬で相殺されてしまう。
スパァァン!!
斬撃が右腕に命中し、腕を吹っ飛ばした。
「ぐっ……こんなことがあるわけがない……我があの二人以外に敗北するなど……あるわけが……」
無数の斬撃がさらに速度を上げ、ブリューナクの体を貫いた。
視界がどんどん真っ白になっていく。
「これが死か……ぐあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
****
――斬撃がブリューナクを貫いた瞬間シエンは呟いた。
「永遠に……」
ブリューナクの体を貫いた斬撃は、空中で跳ね返りどんどん数を倍加させていく。
次第にブリューナクの周りを白い球体が覆い始め、無数の光の光線が花火のようにバチバチと音を立てた。
それはとても美しい光景だった。
太陽のように輝く光の魔法が俺たちを優しく照らしていた。
――程なくしてそれが消えると、もうそこには何も無かった。
ブリューナクは塵一つ残さず消滅したのだ。
「終わった……」
俺は地面に背中から倒れこんだ。
「シエン、大丈夫!?」
「シエン……」
アカネとハクが俺の顔を覗き込む。
「もう……動けないや……」
魔力量が0になり体がピクリとも動かない。
「ブリューナクは……倒したのよね?」
「ああ……あの魔法は対象を消滅させるまで永遠に攻撃を続ける。俺たちの勝ちだ……」
クバート……ギフト……俺と戦ってくれたイリオスの冒険者たちよ。
お前たちの願い……果たしたぞ。
「シエン……よく頑張った……よしよし」
ハクが俺の頭を撫でてくれた。
「そうね……今回だけだからね!」
そう言ってアカネも顔を赤くしながら、俺の頭を撫でる。
「お前ら……俺が動けないからって……」
「なにシエン? 何か言った?」
「いや、やっぱりいいや……すごく……疲れた……」
瞼が重くなり、心地よい風と共に……俺はそっと目を閉じた。
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