第43話 超直感
思考を張り巡らし、感覚を研ぎ澄ます。
意識をブリューナクに集中させ、戦いに没頭していく。
――次第に音が消え、視界が広くなる。
しかし頭は雪のようにサァーッと真っ白になってゆく感覚。
バルモンドとの戦いでも体験したことのある、この現象。
俺はその現象を今体感していた。
より深く……。
「古代光……」
詠唱の途中で俺の体は消えた。
古代光魔法・閃光……俺の体は一瞬でブリューナクの背後に回る。
「え?」
ブリューナクの驚いた顔が一瞬垣間見える。
しかし次の瞬間には、ブリューナクの正面に俺の体は移動していた。
――今だ!!
「おらぁ!!」
俺の剣がブリューナクの肩に迫る。
「はやっ……」
だが、寸でのところでブリューナクの体がシュンとその場から消える。
……少し離れた所に現れたブリューナクの肩から少し血が出ている。
どうやら俺の斬撃は当たったようだ。
「君……今詠唱してないよね? まさか成長したのかい? この短期間の間に傷を治し成長したというのかい?」
ブリューナクの声がかすかに聞こえる。
しかしそれに応えようとは微塵も思わなかった。
極度の集中状態が俺に戦闘以外のことを排除させていた。
「もっと……深く……ただ……深く……」
意識が深海に沈むように、真っ暗になっていく。
視界はあるが、音は聞こえない。
森を通る風の音も、鳥の鳴き声も、俺の意識から排除される。
だが次に何をすればいいのかが感覚的に分かる。
それが正解であることも分かる。
「……見えた」
瞬間、俺の体は消え、ブリューナクの頭上高くにいた。
剣を一振りすると、雷撃が三つブリューナクに向かっていく。
「ふん」
ブリューナクが水の竜を出し、それを飲み込んでいく。
「……次」
俺は閃光を使いブリューナクの背後へと高速移動していた。
足元から出た土の槍がブリューナクの首に迫る。
「またも詠唱なしに……くっ……」
ブリューナクの体が消え、少し離れた地面に降り立つ。
しかしその背後に俺は既に移動していた。
「……次」
雷の剣でブリューナクの背中を切り裂く。
「ぐはっ……なんだと……」
「……次」
その後も俺の体は詠唱なしに動き続けた。
ブリューナクの攻撃をかわし、迎撃し、斬撃を加えた。
ブリューナクの体に傷が目立ち始め、俺の意識はだんだんと薄くなっていった。
自分が何の魔法を使っているのかもよく分からない。
剣を握る感覚も、血の香りも、感情も……全てが無へと近づいていく。
――だが終わりは突然来た。
「うっ……」
肺が痛み俺は血を吐きだした。
「がはっ……ぐっ……うぅっ……はぁ……はぁ」
「……どうやらここまでのようだね」
ブリューナクが笑う。
「全く。奇妙な人だよ君は。……その力、まるでアーサーのそれと同じじゃないか」
「な……ん……だと?」
「知らないのかい? 今は勇者と呼ばれているアーサーのことだよ。彼も君と同じように突発的な成長を見せた。確か”超直感”と言っていたかな? 彼ほど完璧なものではないけど、君はそれの片鱗を持っているのだろう?」
ブリューナクの言っていることがよく分からない。
超直感なんて聞いたこともない。
「さあ……な」
「そう……その顔は本当に知らないっていう顔だ。ならば自分でも自覚していないのかな?」
ブリューナクがゆっくりと俺に近づく。
俺の呼吸が次第に戻っていく。
「ブリューナク……そんなことはどうでもいい。俺は、お前を倒すだけだ!」
「ふーん……せいぜい頑張ってね。……さて、次はどうしよっかな」
ブリューナクは悩むように首を傾げると、「あっ!」と言ってニヤリと笑った。
「これでいこう……」
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