第40話 逆襲
「勇者アーサー……それって!!」
『ああ。魔王を打ち倒した……世界を救った誇り高き勇者の名だ』
「そっか……」
魔王を倒した勇者アーサー、この時計塔はここで……イリオスでその姿を見たんだな。
伝説の実在に気持ちが奮い立つ。
『……そういえば少し前お前と一緒にいた……赤い髪の女……あいつも似ているな』
「……ん? もしかしてアカネのことか? 勇者に?」
『そんなわけないだろう。私が言っているのは、私に力を与えた女のことだ。……そのアカネとかいう女と瓜二つの姿をしていた』
「アカネと瓜二つ?」
「時計塔よ! そんなわけねえだろ、同じ顔の人間なんているわけがねえ。ボケてんじゃねえか?」
『……今すぐお前にかけた力を解除してもよいのだがな……』
「おまっ! それは卑怯だろ! 三日目は俺に力使って申し訳なさそうにしてたじゃねえか!」
『……さて。記憶にないが。私は仕方なくお前に力を使ったのだが……』
「嘘つけぇ!」
クバートと時計塔のやり取りに思わず笑みがこぼれてしまう。
人間と時計塔……相容れるはずのないもの同士がこんなにも楽しく話している。
なのになぜ人間は同じ人間と仲良くできないのだろうか。
前世での俺がそうだったように……。
「……それより時計塔。さっき言ってたアカネと似ている人ってどんな人だったんだ?」
『……名前は分からん。私が覚えているのはその姿だけだ。とても不思議な人間だった、いや人間かどうかも分からんが。私に意思と力を与えどこかに消えていってしまった』
「そうか……それならかなり前の話だよな。もうこの世にはいないのかもな……」
『そうだな』
魚を食べ終えた俺は、刺していた棒を火にくべる。
火が少し大きくなった。
「……よし。行くか」
俺は立ち上がると王都の方角を見た。
「おいシエン、本当に行くのか?」
「ああ。もう傷も癒えた。戦う覚悟は出来てる」
「……敵はブリューナク一人じゃない。とてつもない数の魔物もいる。対して王都の戦力は百人程度。……そんな戦場にお前は一人で行くのかって聞いてんだ」
真剣なクバートの口調に気づかされる。
「もしかして……お前も来てくれるのか?」
「ふっ……俺だけでいいのか?」
「え?」
と、その時イリオス平原の地面から無数の光の球が飛び出した。
それは形を変え、人の姿となっていく。
『シエン、私は言ったはずだ、千ほどの人間が私に触れたと。クバートはその中のたった一人なのだ。ただ残りは活発なクバートと違って地の底で眠っていたがな』
「これは……」
人の形は実体を帯び、鎧や剣を身に付けた冒険者へと到達した。
馬に乗ったものまでいる。
「シエン、お前が寝ている間に皆は俺が説得しておいた。俺も合わせた兵力は千。……隊長はお前だ!」
クバートが俺の胸に拳をつきつける。
「行くぞ!! おめえら!!」
「オオオオォォォォォォ!!!!!!!!!」
千の冒険者の雄たけびが波となって俺の心臓を震わせる。
絶景にも引けを取らない迫力の軍がそこにはいた。
『……この数の者を王都で戦わせるとなると、私の力が持つのもおよそ一時間。それまでに決着をつけろシエン!』
「あぁ!……十分だ! クバート、瞬間移動を使う。俺の肩を」
「おう!」
クバートの力強い手が俺の肩を掴む。
「えっとシエン……皆はどうすればいいんだ?」
「ああ、そうだな……間接的にでも俺に触れてれば作用されるから、数珠繋ぎで大丈夫だよ」
「なるほど……おい! お前らは俺の肩につかまれ、そこのお前らはそいつの肩だ!」
クバートの声かけのもと、木の根のように人が繋がっていく。
背中に千の熱い魂が感じられる。
「よし……シエン! 準備完了だ! いつでも飛んでくれ!」
「ありがとうクバート……じゃあ行くか……古代光魔法・瞬間移動!」
シュシュシュン!
一瞬で景色が動き、次の瞬間には王都の南東にあたる街道に立っていた。
遠くに見えるのは魔物の軍隊。
軍の横っ腹を突く形で俺たちは瞬間移動をしたのだ。
クバートがおもむろに横に立った。
「行くぞてめえら!!! 準備はいいかぁ!!!」
「ウオオオォォォォォ!!!!!」
クバートの声に反応して後ろに立つ俺の軍が雄たけびを上げた。
空気の波が後ろから吹き、闘志をたぎらせる。
「さて……隊長、突撃の合図を頼めるかな?」
「うん……分かった」
俺は思い切り空気を吸い込むと、拳を高く上げ叫んだ。
「突撃!!!」
「オォォォォォ!!!!!!」
――さぁ……逆襲だ。
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