第37話 圧倒的
呪文を唱えると右手に雷の剣が現れた。
「……古代光魔法・閃光」
一瞬で俺の姿が消え、次の一瞬には狼の足元に移動していた。
「古代雷魔法・雷撃斬!」
狼の前足を思いっきり剣で切り裂く。
「グォォォ!!!」
狼の叫びと共に赤い血が噴き出した。
「まだまだぁぁぁ!!! 古代雷魔法・雷撃斬!!」
二撃、三撃と連撃を加える。
しかし次の瞬間!
バゴォォォンン!!!
足元の地面が突如爆発し、爆風で俺は近くの家まで吹き飛ばされた。
硬い壁が背中に衝突する。
「ぐあぁっ……」
さっきまで俺がいた場所には穴ぼこがあいている。
ブリューナクが石かなにかを爆弾に変えたのだろう。
「……待てよ……」
ブリューナクは自分のスキルが変化であると言っていた。
なら爆弾の能力は何なんだ?
俺の思考を止めるように、狼が雄たけびを上げ、こちらに走ってくる。
「そんなの考えている暇もないか……古代土魔法・巨人の怒り!!」
狼の足元から出た無数の土の槍が、狼の体を貫く。
「ガァァァァァァァ!!!」
狼が断末魔を上げ、ドライアイスのような白い煙を体から放出した。
狼が煙に呑まれ見えなくなる。
――煙が消えると、そこにはさきほどの少年姿のブリューナクが立っていた。
「君すごいねえ。まさかこんなに早くやられてしまうなんて思わなかったよ。……どうだい? 僕の部下になる気はないかい?」
「あるわけないだろ」
「そうか、それは残念。バルモンドっていう部下も死んじゃったし、代わりが欲しかったんだけど……まあしょうがないよね」
ブリューナクはそう言うと、俺にバッと手をかざした。
「じゃあそろそろ死んでもらおうかな」
すると突然彼の手の先から巨大な水の竜が飛び出した。
「水魔法・水竜舞……どこまで逃げられるかな?」
「古代雷魔法・神々の怒り!!」
雷撃が水の竜に立ち向かうも、竜はそれを丸のみにしてしまう。
「うそだろ……」
本来雷魔法は水魔法に強いはず。
だが、この水魔法は雷魔法をくらうどころか飲み込んでしまう。
それだけ強力な魔法だということだ。
「古代光魔法・閃光!」
上空に高速移動するも、既に足元から水の竜が迫っている。
「古代雷魔法・雷撃斬!」
右手に持った雷の剣がバチバチと電気を立てる。
「うおぉぉぉ!!!!!」
上空から水の竜の口めがけて、思い切り剣を振り下ろす。
ズザザアァァァァン!!!!
水の竜の体が口から下に向かって、縦に真っ二つになる。
「へえ……面白い……でも……」
尻尾まで切り裂き地面に着地する寸前、ブリューナクの不敵な笑みが見えた。
「足元には気を付けてね」
「え?」
バコオオオォォォン!!!!
地面に着地した瞬間に、転がっていた石が一斉に爆発した。
「ぐっ……」
爆風で吹き飛ばされ、地面に背中から転がる。
何とか起き上がると、既にブリューナクが目の前まで移動していた。
「これあげる」
「は?」
そう言ってブリューナクは俺に本を投げた。
「大切にしてね」
バフォォォンン!!!!
本が目の前で爆発し、俺の体は黒い煙に覆われた。
やけどをしたように皮膚が熱い。
煙がはれるとブリューナクは目の前から姿を消していた。
「あっははっ……爆発が起きても突っ立ったままなんて……面白いねぇ!」
ブリューナクは近くの家の屋根に座っていた。
腹を抱えて笑っている。
「面白いことしてくれたから、これあげよっかな」
次の瞬間、ブリューナクが再び目の前に移動した。
手にはまた本を持っている。
「はいっ」
本が宙を舞い、俺に向かう。
……何度も同じ手をくらうか。
俺は瞬間、足に力を入れ、思い切り後ろに飛んだ。
「……どこ行くの? そっちは危ないよ?」
「……え?」
恐る恐る後ろを見ると、そこにはもう一冊の本があった。
「ドカーン!」
ボォォォン!!!!!
本が爆発し、俺の体は勢いよく地面に落下した。
肉を焼くようなシュゥゥという音が体中からしている。
「実はね、さっき屋根から既に本を投げてたんだ。君が逃げる位置を予想してね! いやー面白かったな。まさか本当に当たるなんて!! はははっ!」
起き上がろうにも、体が全く動かなかった。
思った以上にダメージはデカいようだ。
……頭のすぐ近くからブリューナクの声がする。
「もう終わりか……つまんないなぁ……もうちょっと頑張ってよ!」
「くっ……お……ま……だ」
声がかすれかすれになり、視界がぼやけてきた。
……まずい、このままじゃ……俺は……。
何とか体を起こそうと腕を曲げるも痛みで発狂しそうになる。
「せっかく逸材を見つけたのに殺さなくてはいけないなんて……本当に残念だよ」
ブリューナクの殺気が強まり、うつ伏せに倒れる俺に降りかかる。
それは巨岩に押しつぶされているような感覚だった。
「さて、それじゃあ死んでもらおっかな」
視界だけでなく音も聞こえなくなってくる。
もう無理だ……動けない。
「……えん……シエン……」
……誰かが俺の名を呼んでいる?
男の声。
「シエン!……きろ……えん」
でもこの声どこかで……誰だっけ?
「シエン! 起きろ! シエン!」
「うぅ……」
体力が回復してきたのか、視界が鮮明になり、音も聞こえ始めた。
目線の先には誰かの足が見える。
頭を動かして足の先を見ると、
上半身に甲冑をつけ、頭が禿げ上がっ……え?
「クバート?……」
「おぉシエン! 意識が戻ったか!」
そこにいたのは紛れもなくクバート本人だった。
右手には大剣を持っている。
「なぜ……ここに? それよりブリューナクは?」
何とか上半身を起こすと、辺りを見回す。
すると少し離れた所でこちらを睨んでいるブリューナクの姿が見えた。
「大丈夫。あいつなら俺を警戒して近寄ってこないから」
「警戒? クバート、何言って……うっ!」
と突然腹が痛みだし、俺は血を吐いた。
「はぁ……はぁ……まだ全快とは……いかないか……」
「……さっきから一人で誰と話してる?」
ブリューナクがゆっくりとこちらに歩いてきた。
「さっき僕に一撃を加えたのは……君じゃないよね。つまり君以外の誰かだということ」
クバートはブリューナクを横目に早口に言った。
「シエン! お前……なにか魔法使えないか? ここから逃げるんだ! 早く!」
クバートの声など気にもしない様子でブリューナクは近づいてくる。
「本当に君は今何をしているの? まるで誰かと話しているみたいな……もしかして隣に誰か立っているのかい?」
ブリューナクは何を言っているんだ。
クバートが見えないのか? 声が聞こえないのか?
「シエン、早くするんだ! お前も分かっているはずだ! 今のままでは勝てないことくらい。今の内に早く逃げるぞ!」
「あ、ああ……」
確かにこの体でブリューナクと戦うのは分が悪すぎる。
勝利は絶望的だろう。
一旦どこかに避難した方がいいかもしれない。
「クバート……瞬間移動を使う……俺に摑まるんだ」
「分かった」
クバートがしゃがんで俺の肩を掴む。
「ん? 君何かするつもりだね? そうはさせな……」
ブリューナクが言い終わらない内に俺は言った。
「ブリューナク……この借りは必ず返す。……古代光魔法・瞬間移動」
シュン……。
俺とクバートは一瞬でその場から姿を消した。
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