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第35話 大軍

 東門には街中の兵士が集まっていた。

 しかしその数は2,30ほど。

 明らかに数が少なかった。

 門はまだ壊されていないが、魔物が突進でもしてるのか、衝撃音と共に揺れていた。この街に魔物が入ってくるのも時間の問題だろう。


「古代光魔法・神の眼光!」


 透視魔法で門の向こうを見る。


「これは……」


 そこには魔物が軍隊隊列を組むように並んでいた。

 スライムやゴブリンなどの下級の魔物がびっしりと街道を埋め尽くしている。

 そのさらに奥の空中には、なにか術式のようなものが浮かんでいるが、遠すぎてよく見えなかった。


「こんな数の魔物……どうやって……」


 およそ数にして3000はいるだろう魔物の大群を見て、寒気が走る。

 魔王の側近である三騎士ブリューナクがそれを集めたのか、それとも魔王軍とは関係のない所で魔物が集まったのか。

 どちらかはまだはっきりとしないが、おそらく前者である可能性が高い。

 なぜならさっき爆発が……。


「待てよ……爆発?……街の中で?」


 嫌な考えが頭を埋め尽くす。

 爆発の後に兵士の声が聞こえてきたから、あの爆発は魔物が起こしたものだと思っていた。

 でも実際には魔物はまだこの街に入ってきてはいない。

 ならばさきほどの爆発はなんなのか。

 答えは一つしかない。


「アカネ、ハク。……ブリューナクが既にこの王都に侵入したのかもしれない」


「え? そんなはず……」


「落ち着いて聞いてくれ」


 俺の考えを早口に説明すると、二人はうろたえた様子で頷いた。


「確かにシエンの言う通りかもしれない……でも、仮にブリューナクがいるとしてどうやって見つけるの!? 名前しか分からない相手を見つけるなんて……」


 アカネは何かに気づいたようにそこで言葉を止めた。


「うん、名前が分かればできるよな。俺の魔法なら探せる! 古代水魔法・水面の導き! ブリューナクの居場所を示せ!」


 足元に現れた水が矢印に変わり、西門の方を指した。


「よしあっちの方角だな……」


 ブリューナクと魔物……方向が真逆な以上同時に対応することは出来ない。

 ……俺が一人ならば。


「古代闇魔法・分身」


 呪文を唱えると、俺の横に人くらいの大きさの黒い靄が発生した。

 それは形を変え、やがて俺と瓜二つの姿になった。

 突然の出来事にアカネとハクが目を丸くしている。


「これは自身の分身体を作る魔法。俺の能力値の半分を受け継いだ個体しか作れないから少し弱いけどな。……でも幸い門の外の魔物は下級が中心だ。何とかなるだろう。分身、任せたぞ」


『アア。マカセロ』


「うん。じゃあハクは、ここで分身と一緒に魔物と戦ってくれ。ハクのスキル”拒絶”があれば百人力だ」


「分かった……」


 てっきり不安な顔をすると思っていたが、ハクの顔は覚悟を決めたそれだった。

 冒険者になって成長したのかもしれない。


「よし。俺とアカネは西門の方へ行きブリューナクを捜索する。俺たちのスキル”鑑定”があれば本人かどうかも正確に調べられるからな」


「了解!」


 アカネが力強く頷いた。


 辺りを見回すとギルドの冒険者たちもこの場に集まりつつあった。

 兵士達も緊張した面持ちで武器を握っている。

 いよいよ戦いが始まろうとしていた。


「じゃあ行くぞ、アカネ」


「うん」


 ハクに背を向け、遠くの西門を見つめる。

 その道中の数か所の家々から火の手が上がっている。

 

「シエン……死なない……でね?」


 背中にハクの言葉を受ける。


「ああ。もちろん……」


 次の瞬間、俺は足に力を入れ走り出した。

 自分の左手に”水面の導き”で作った矢印を乗せ、方向を確認しながら道を進む。

 後ろについてくるアカネの足元もしっかりと聞こえていた。

 

 なるべく早くブリューナクを見つける!

 いや、見つけてなくてはならない!

 ブリューナクが何をしようとしているのかは分からない、だがそこに巨悪がいる以上、放っておくことなど出来ない!

ここまで読んでいただきありがとうございました!


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