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第27話 決意

「は? な、何を言っているんだハク! お前には結婚して幸せな未来が待って……」


「ハクの幸せを勝手に決めないで!!」


「ハク……さっきから下手に出てればなんだその口の利き方は!! 俺はお前をそんな風に育てた覚えはないぞ!!」


 公爵は怒りを露わにすると、ズンズンとハクの前に歩いていった。

 

「お前みたいなやつは痛い目をみないと分からないようだな!! このバカが!!」


 叫び声と共に右手を振り上げる。


「ハク様!!」

 

 しかしその時、ネイルがハクと公爵の間に走り込み、公爵の拳を受けた。

 衝撃で背中から床に落ちる。


「ネイル……!」


 ハクが慌てて駆け寄ると、ネイルは「大丈夫です」と笑顔を作った。


「ネイル、貴様……自分が何をしているのか分かっておるのか!? この俺に盾ついて無事で済むと思っておるのか!?」


「……もちろん職を失う覚悟はしています。しかしご主人様、ハク様の命の恩人に手を上げ、そればかりかハク様にまで拳を振るおうとするあなたにはもうついてはいけません」


 公爵の怒気にも屈せずネイルが立ち上がる。

 

「ネイル……ごめんね……ハクのせいで……」


「いえ謝るのは私の方でございます、ハク様。今までお父様が決めた道こそがハク様のためになると思い私は公爵家に仕えてきました。しかし先ほどの蛮行を見て間違いに気づきました。今までハク様のお気持ちに寄り添えず申し訳ありませんでした」


「くそっ……揃いも揃ってくだらない態度を取りおって……」


 味方するものがこの場にいなくなり、公爵は初めて焦りの表情を浮かべた。

 逃げるようにギルドの扉をチラチラ見ている。


「ハク……お前のことなどもう知らん! 親を裏切る娘などもう娘でも何でもないわ! 冒険者でも何でも勝手にやれ!」


 公爵は周りを警戒しながら、慎重に扉に近づいていく。

 どうやら本当に帰るつもりらしい。


「家に帰りたいと泣きついても入れてやらんからな!! せいぜい痛い目を見るがいい!!」


「おい、グレゴリア公爵……」


 俺は扉に手をかける公爵に近づいていった。


「まさか今から帰るつもりじゃないだろうな?」


「は? 何を言っている……俺の用事はもう済んだ。帰ってなにが悪……」


 俺は公爵の肩にゆっくりと手を置くと、今までないような殺気を放ち公爵を睨みつけた。


「人を殴るっていうのはさ……自分も殴られる覚悟のあるやつがする行為だと思うんだけど……どうかな公爵?」


「な、なにを……」


「……どうかなって聞いてるんだけど」


「ひぃぃぃ……」


 やっと俺の殺気が通じたのか、公爵が怯えた表情をする。


「そ、その……と、通りだと……思う」


「だよな。じゃあ俺さっき公爵に殴られたから、逆に公爵を殴っても問題ないよな?」


「は、はい……」


 俺は公爵を扉から離し元の位置に戻すと、ハクの方を向いた。


「でも俺だって人を殴っていい気はしないからさ。もしハクが殴らなくてもいいって言ったらやめようと思うんだ。……ハクはどうしたい?」


「ハクは……」


「ハク! こいつを止めてくれ! 頼む一生のお願いだ! 俺たち家族だろ、俺の娘なら俺のこと守ってくれるよな……?」


 さっき自分で娘じゃないと言ったのに、都合の良い時だけ娘にするのか。

 思わず拳に力が入る。


「ハク! おい聞いてるのか! 一言やめるように言ってくれればいいんだ、それだけで……」


「シエン……」


 ハクは呆れたような目で公爵を……実の父を見ていた。


「シエン……思いっきりやっちゃって」


「……了解」


「ハクゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!」


 叫ぶ公爵の胸ぐらを左手で掴むと、右手に魔力を集中させた。


「古代炎魔法・炎拳!」


 右拳を炎がボッと包み唸りを上げる。


「行くぞ公爵」


 拳を後ろに引き、思い切り公爵の顔面へと突き出す。


「ごめんなさい……やめてくれ……やめて……やめろぉぉぉ!!!!!」


 拳が空を斬り、公爵の目の前まで到達する。


「反省しろ」


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」


 ――しかし、俺は寸での所で拳を止めると、魔法を解除した。

 ブォォォン!!

 衝撃波が公爵の後ろに風を生む。

 火花が散って、公爵の前髪が少し焦げた。


 公爵は白目を剥いたまま気絶していた。

 恐怖の表情のまま固まっている。


 俺が公爵を床に寝かせるとハクが駆け寄ってきた。


「シエン……どうして……」


「……ごめん、ハク。俺にはこういうのは向いてないんだ。弱い者いじめをしているみたいでどうにもダメでさ。それにもう恐怖は十分に与えられたと思うし、公爵だってさすがに反省して……」


「シエン……」


 ハクが俺にそっと抱きついた。

 

「ありがとう。シエン大好き」

 

「うん。よく頑張ったな、ハク」


 ハクの頭を撫でてやる。


「お二人ともちょっといいかしら?」


 アカネの冷徹な声が隣から聞こえる。

 顔は笑っているが、目は笑っていない。


「仲が良いのはいいことだと思うけど、シエンも苦しがってるからそろそろ離れよっか」


「俺は別に苦しくは……」


「うるさい! ……それに皆見てるし……」


 アカネがチラッと周りに目配せする。

 

「そ、そうだな……ハク、離れて貰ってもいいか?」


「やだ。今日はシエンとずっと一緒にいる……」


「ハクぅぅ……」


「こらシエン! 嬉しそうな顔してるんじゃないわよ! この変態が!」


「な、俺は変態じゃない!」


「そうだよアカネ、シエンは変態じゃないよ。シエンはね……」


 ――こうしてハクは俺たちと同じ冒険者となった。

 しかし一人でクエストを受けさせるわけにもいかないので、彼女は俺のパーティーに加わった。

 相変わらず家には帰れていないが、ここに居場所ができて本当によかった。


 グレゴリア公爵はその後、この街から姿を消したらしい。

 執事のネイルからそのことを聞いた俺とアカネは、ハクにはこのことを黙っておくことにした。

 15歳の少女に何でもかんでも背負わせるのは可愛そうだ。

 ハクには今を楽しんでもらいたい。


「シエンはね……ハクの結婚相手なの」


 不滅の時計塔編・完。

ここまで読んでいただきありがとうございました!


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また下にある☆☆☆☆☆から、作品の率直な評価を頂けると嬉しいです。


作家にとって読者様の応援や感想がとても励みになります!

より面白い作品を目指して頑張りますので、今度とも応援よろしくお願いいたします!

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