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第22話 不滅の時計塔

 ――アカネは時計塔から右手に少しいったところにいた。

 幸いなことに魔物には襲われていないようだ。


「なるほど、魔物ね。それで心配して来てくれたんだ……」


「まあそうなるか……」


「ありがと!」


 アカネが機嫌の良さそうな笑顔を向ける。


「でも、今思ったんだけど、シエンの水の矢印の魔法でハクちゃん探せないの?」


「え? あ……ああ! そっか! その手があった!」


「……バカね」


「バカじゃない! クバートを助けたりで気が散ってたんだよ!」


「何訳の分からないこと言ってるの」


「いいだろ、誰だって失敗はするんだから……古代水魔法・水面の導き、ハクナギルの居場所を示せ!」


 足元に水たまりが現れ、それが矢印の形に変わる。

 しかし矢印はいつまで経っても一方向を示す気配はなく、磁石がくるったみたいに、グルグルと回っていた。


「……あなたついに魔法までバカになったのね」


「うるさい。もう一度やってみる……古代水魔法・水面の導き、ハクナギルの居場所を示せ!」


 足元に現れた水たまりが形を変え、矢印になる。

 だが、またもそれはグルグル回るだけで、定まった方向を示すことはなかった。


「おかしいなぁ……」


 この水魔法は、基本的に姿か名前が分かっていれば探すことができ、有効範囲もその都度設定することが出来る。今回はイリオス平原を有効範囲にした。

 もし同じ姿や名前が有効範囲にたくさんある場合は、近いものがいる方角から順番に止まっていく。

 つまりハクナギルという人物がこの平原内に4人いる時は、矢印は回りながら4カ所で止まり再び回る、それを永遠と繰り返すのである。


「これじゃあ……この平原にハクが無数に存在していることになるぞ……しかも10や20じゃない……もっと多そうだ」


「そんなにたくさんいるわけないでしょ。魔法の間違いじゃない?」


「そうかな」


 疑うように、回り続ける矢印を見つめていると、俺はあることに気が付いた。


「ん?……これ、時計塔の方向で少しだけ止まってないか?」


 よく見ると矢印は時計塔の方向で僅か停止し、弾かれた様に一周回っている。

 それを繰り返しているのだ。


「え? 確かにそう言われればそうかもしれないけど……」


「だろ。とにかく時計塔に行ってみよう、何か分かるかもしれない」


 小走りで時計塔まで行くと、ここに来た時の違和感が強まるのを感じた。

 

「アカネ、この時計塔何か感じないか?」


「……大丈夫?頭」


「もういい」


 どうやらアカネは何も感じないらしい。

 しかしこの感じどこかで……確かあれは……。

 と次の瞬間、忘れていた記憶を思い出したように頭の中で違和感の正体が解明した。


「ダンジョン……そうだ……これはダンジョンだ」


 ダンジョンと化したガーネリア森林を見た時に感じた違和感。

 それが今のものと重なったのだ。


「ダンジョン? この時計塔が?」


「ああ、多分。あくまで感覚だけどな」


 時計塔の入り口は一つ、そこに入ればダンジョンかどうか明らかになるとは思うが、一度入ったら後戻りはできない。

 

「アカネはここで待っていてくれ、俺が時計塔の中に入る。ハクもこの中にいるかもしれないし」


「ちょっと待って! 私も行くわ!」


「いやダメだ。もしダンジョンだった場合、危険すぎる」


「それはシエンもでしょ! それに私はどんな危険な道でも、あなたと運命を共にする覚悟は出来てる」


「でも……」


 言葉を続けようとしたが、アカネの固い意志が瞳から感じられ、俺はそれ以上は言えなかった。

 代わりに出たのはため息だった。


「はぁ……分かったよ。一緒に行こう」


「うん!」


 時計塔の入り口には扉はついていなかったが、不思議と中は全く見えず、終わりのない暗闇がそこにはあった。

 意を決して一歩踏み出す。


「じゃあ行くぞ、アカネ」


「うん……」


 緊張漂う中、時計塔に足を踏み入れた。


 ……次の瞬間、俺たちは時計塔の外にいた。

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