第2話 古代魔法習得!
レイが俺に課した条件は、攻撃魔法、防御魔法、回復魔法をそれぞれ10ずつ覚えること。
期限は50年という膨大な月日なので、500年生き魔法操作にも長けた精霊族の俺にはそれは至極簡単なことだろう……と思っていたのだが。
「で、出来ない……」
現代魔法書・入門編第一巻で俺は既に挫折していた。
その本には超基本的な魔法100個が、超分かりやすく書いてあるのだが、どの魔法も、何度やっても成功する気配がなかった。
「おかしいなぁ……ちゃんと呪文もあってるのに……」
――レイが村を去って2年が既に経過していた。
2年で簡単な魔法一つ習得できないとなると、先が思いやられる。
今になって30個の魔法習得という条件が不当なものに思えてきた。
「シエン、大丈夫だよ。たとえレイさんの条件をクリアできなくても、この村で暮らす道が残っているだろ?」
「そうよシエン、この村で生涯暮らすのもきっと楽しいわよ」
両親は早くも諦めムードだ。
そんな両親を見返すためにも、そこからの3年は俺は本を読み漁った。
食事以外は基本的に本を読み、本を片手に移動した。
しかしその努力も虚しく、使える魔法は一つも現れなかった。
残り45年。
俺は絶望したように本の山を見つめていた。
初めは読むのも楽しかった現代魔法本に、今では高校数学のような苦手意識を持ってしまっている。
読むのも億劫だ。
「古代魔法本なら読んでて楽しいのに……」
ふてくされたように適当に古代魔法本を手に取ると、ページを開く。
そこには指から炎が出る魔法が載っていた。
「えーと……古代炎魔法・竜の息吹!!……なんつって……」
ボオォォォォン!!!!!
バキバキバキィ!!!
「え?」
俺が呪文を唱えると、突然指先から炎柱が立ち昇り、それは勢いよく部屋の天井を破壊した。幸い炎が燃え移ることは無かったが、天井に円形の大きな穴が開いてしまった。
突然の衝撃音に、父さんが部屋に駆け込んでくる。
「なんだ今の音は!? シエン大丈夫か?」
「だ、大丈夫! 何でもないよ!」
……とは言ったものの隠しきれるはずなどなく、父さんは天井を見上げ、口をあんぐりと開けてしまった。
「……これ、お前がやったのか?」
「まあ……まさか出来るとは思っていなくて……賢者のレイさんも習得に千年かかるって言ってた古代魔法だし……」
「は? 古代魔法? この状況でそんな冗談言われても笑えないぞ」
「冗談じゃないよ、本当だって。……この魔法を使ったんだよ、竜の息吹ってやつ」
開きっぱなしになっている古代魔法本を見せると、父さんは首を捻った。
「これにはそう書いてあるのか? 俺にはさっぱりなんだが……。と、とにかくその穴は塞いでおけよ。分かったな?」
「え?ちょっと待って……」
父さんは俺が読めたものを読めないのが恥ずかしかったのか、急に口調を変えると、逃げるように部屋を出ていった。
「まったくもう……いや、悪いのは俺だけどさ……」
単純に古代魔法が使えた俺のことを褒めてくれると思ったが、叱られたような気持ちになって気分が少し沈む。
気持ちを切り替えるように本をパラパラとめくり、屋根の修復に仕えそうな呪文がないか探す。
さっきのはただの偶然だろうけど、本当に自分が古代魔法を使えるか試してみたくなった。
「あった……えーと、古代回復魔法・女神の風」
穴の開いた屋根に向かってその呪文を唱えると、突然現れた緑の光が穴を包み、屋根の木材が再生していった。
光が消える頃には屋根は元通りの形に修復されている。
「で、できちゃった……」
――ここから俺は古代魔法にどんどんのめり込んでいくのだった。
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ちなみに「現代魔法書・入門編シリーズ」を書いたのはシドという賢者です。