第18話 アカネの過去
矢印の向きを確認し、人混みの間を縫って走る。
幸い人の量はそんなに多くなく、遠くまで見渡せる。
街の大通りを進み、噴水がある広場まで来ると、その前のベンチにアカネは座っていた。
俺が近づくと、顔を合わせたくないのか下を向いた。
「アカネ、さっきはごめん」
俺は少し離れてベンチに座ると、アカネに言った。
「……私こそごめんね。急に怒鳴ったりして……」
「いやいいんだ。もういいんだよ。それより、今からクエスト受けないか?」
「え?」
アカネの顔が少し上がる。
「一応俺たちもう冒険者なわけだしさ。二人でパーティー組んでクエスト受けよう」
「でも……えっと……もう昼すぎだし……クエスト受けてたら夜になっちゃうよ」
「夜になってもいいんだよ。時間なんて関係ないんだ。それに俺の瞬間移動の魔法で一瞬でここまで帰ってこられるし」
「そうなんだ……じゃあ行く」
「ありがとう」
その後俺たちは冒険者ギルドに戻り、クエストを受注した。
スライムを5体討伐するだけの一番簡単なクエストだった。
東門から街を出て街道を歩く。
魔物の気配は全然しないので、ガーネリア森林まで戻らなければいけないかもしれない。
「アカネはこれからどうするんだ?」
歩きながらまだ顔が暗いアカネに声をかける。
「私は冒険者として強くなりたい。できればAランクまではいきたい。……だからとりあえず王都の冒険者ギルドでクエストを受けようと思ってる。それが私の憧れだったから……」
「そっか」
「……シエンは少ししたら街を出て行くのよね……」
「うん」
「そうだよね……」
――ガーネリア森林が近くなるとスライムが2体現れた。
「古代水魔法・海割り……」
水の衝撃波でスライムを倒し、魔石を拾う。
残りは3体だ。
「そういえばアカネは何で冒険者になりたいと思ったんだ?」
「話してもつまらないわよ」
「大丈夫だよ、俺が聞きたいだけだから」
そう言うとアカネが恥ずかしそうに顔を背けた。
「私の父も……冒険者でね、それに憧れて私も冒険者になりたいって思ったの」
「へえ、じゃあどこかで会えるかもな」
「会えないわよ、もう父は死んだから」
ふいに冷たい風が後ろから流れてきた。
アカネの顔は見えないが、きっと悲しそうな顔をしているのだろう。
見なくてもそれだけは分かる。
「父はAランクの強い冒険者だった。でも私が5歳の時、父は仲間を庇って死んだ。父とパーティーを組んでた人達が家を訪ねてきて、何度も何度も謝ってた」
アカネが目の辺りに手を持っていく。
「そんなことがあったから母には冒険者になるのをもの凄く反対されていたの。でも、憧れちゃったものはしょうがないじゃない……」
「……」
俺は何も言うことが出来なかった。
こういう時何を言えばいいのか、正解がないのはとても辛い。
「半ば家出のような感じで家を飛び出した。王都ネルキスが一番近い街だったからそこを目指して歩いたの。でも途中で迷って狼に襲われて、もうダメだっていう時にシエンが現れた」
アカネがこちらに顔を向けた。目が少し赤い。
「本当に……嬉しかったんだからね」
「アカネ……」
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