第12話 ショートカット
「……どういうこと?」
「この床……バーサークレオンが落ちてきた衝撃でひび割れている。つまり間違いなくこの床は壊れる素材で出来ている」
「でも、それが何よ!? もしかして床でも壊して進むつもり?」
「うん」
「……本気? あんな化け物が落ちてきてもヒビしか入ってないのよ! そう簡単に壊れると思えないけど……」
「壊すんじゃなくて、溶かすんだよ」
「溶かす?」
そこまで言うと、俺はアカネを連れ元来た道を引き返した。
階段のところまで下がると、バーサークレオンが落ちてきた付近に手をかざし、呪文を唱える。
「古代水魔法・バジリスクの酸雨」
すると突如酸性の巨大な水たまりが床に出現し、煙を上げながら床を溶かしていった。
「な、なにこれ?」
「これは、昔実在したと言われている巨大蛇バジリスクの胃液を模した魔法らしい。魔力消費量は多いが、接触したもの全てを溶かす強力な魔法だ。あ、そういえばアカネ、懐中時計持っていたよな? それで床が溶けきる時間を測っておいてくれ」
早くも床に穴が開いたのか、石が床に当たる音が聞こえる。崩れた石が下の階の床にでもあたったのだろう。
アカネは不服そうな顔で懐中時計を見ている。
「よし、この様子なら数分で床を溶かしきるだろうな。この水は俺が解除するまで消えないから、このまま地下5階の床まで溶かして貰おう。こうすればいちいち魔物と戦わなくたって一気に下まで下りられるだろ?」
「確かに……でもこれで床を抜くとして、どうやって下に下りるのよ。まさか5階まで飛び降りるつもり?」
「あぁ、それなら心配ないよ。俺の風魔法で空中を飛んでいくから」
「そ、そう……ん? あれ? でも、こんな魔法使えたならなんで最初から使わなかったのよ? バーサークレオンと戦った意味がまるでないじゃない」
「いや、意味はあったさ。この魔法は魔力の消費が激しいって言ったろ。だからあんまり使いたくはなかったんだ。いざという時に魔力が無くて魔法が使えないんじゃ終わりだからな」
バジリスクの酸雨を使った箇所に徐々に穴が増え始めた。
あと少しで通れるくらいにはなるだろう。
「下の階の様子が何も分からない状態でそんな大技出して、もし失敗したら本当に死んでしまう。だから1階だけ下りて確かめたかったんだよ。このダンジョンがどんな構造をしているのか」
俺の考えるこのダンジョンの構造はこうだ。
・部屋は真下に続いていて、部屋を行き来するために階段が用意されている。
・部屋に入ると魔物が出現する。魔物は階を下りるごとに強さを増す。
・1階で出てきたバーサークレオンのレベルは52。ここからレベルが2倍ずつ強くなると考えると、5階に辿りつくまでにレベル3ケタの魔物を3体も相手することになってしまう。
・障害は魔物だけではないかもしれない。つまり何も考えずに進むとかなり危険。
ざっと考えていたことを説明すると、アカネは頷いた。
「確かにそう考えるなら、床に穴開けて一気に行った方がいいかもしれない。魔物のレベルは予想がつかないから怖いわね。それに階段も安全かどうかなんてわからないし」
「その通りだ。俺たちの今の目的はこのダンジョンを攻略すること。魔物と戦うことではないからな」
と、その時、床を溶かしていた水が床に大きな穴を開け、階下へとそのままこぼれていった。
穴を見下ろすと、ここと同じような石造りの床が見える。水はその上に落ちたようで再び煙を上げながら溶かす作業を開始していた。
「……だいたい10分ってところね。5階に行くにはあと床を3枚溶かす必要があるから……30分くらいかしら?」
アカネが懐中時計を見ながら言う。
「そうだな。ありがとうアカネ。俺時計の類は持っていなくて……お前がいてくれて助かったよ。時計係よろしくな」
「褒めてるのかバカにしてるのかどっち?」
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ちなみにアカネの懐中時計は父親のものです。家を出る時に持ってきました。




