ターゲット4人目 親友の恋
昨日はてんてこ舞いだった。
とにかく礼子さんが書いた手紙を好きな人に当てようとすると、その場から彼女は恥ずかしいのか去ってしまった。
今、ネットの恋愛相談室のサイトを見てみると、礼子さんが私にネットであの後の報告をよこしに来た。
『恋のキューピットの奈々瀬さんですか?』
『そうですけれど、あの後どうなったんですか?』
『恋は実りました。本当にあの時は逃げてしまって申し訳ありません。でも私の思いは伝わり、手話を返して私に『付き合っても良いよ』と言われて、もう本当に良かったです』
『それは良かったですね。とにかくお幸せに』
『本当にありがとうございました』
あの後付き合える事になったんだ。それは本当に良かった。
恋のキューピットも楽じゃないな。でも恋愛が実ることは私的にはそれはそれで冥利に尽きる。だって私は恋のキューピットの相沢奈々瀬だもん。
次の日は学校か、とにかく明日に備えて、勉強をちゃんとやろうと思っている。
今日もお母さんとお父さんはケンカをしていたが、それよりも、そろそろ寝ようかと思って、電気を消して眠りに入っていった。
★
朝起きて私はジョギングをしている。帰って来たらシャワーを浴びて朝ご飯を食べて、ランドセルに今日の授業の教科書や宿題を提出するノートを入れて学校へと出発する。
通学中、私は礼子さんの恋が実ったことに喜びでいっぱいだった。自分のことをあんなに卑下して置いて、でも彼女は立派だ。思いを告げるときに逃げてしまったけれど、ちゃんと手紙でその思いは伝わった。それであの講師に付き合うことが出来て私は本当に嬉しい。
でも良いな。私にも運命的な物がないのか、自問自答してしまう。
「奈々瀬ちゃーん」
私の名前を呼ぶのは声からして、私の学校での一番の友達のマリちゃんだ。
「マリちゃん。おはよう」
「おはよう奈々瀬ちゃん」
すると男の子の男子である健二君が現れて私に、
「おーい。デカ乳女」
私の事をからかう健二君は私の事が好きな事を知る。
でも健二君は私の恋愛対象にはならない。
健二君は勉強はそこそこだし、体育もちゃんと頑張っているが、私の事をからかって自分の事をアピールするような人には恋人にはなってあげません。
そこでマリちゃんが、
「ねえ、また健二君にからかわれているけれど、以前にも言っていたように、それは健二君が奈々瀬ちゃんの事が好きだからやっているんだよね」
「そうだよ。だったら、ちゃんと私に手紙でも良いから、その思いを伝えに来れば良いのにね」
「良いな、奈々瀬ちゃんは背は小さいけれど、胸があって顔もかなりかわいいし、とにかく私はそんなに好かれる奈々瀬ちゃんの事が羨ましいと思っているんだけどな」
「もしかしてマリちゃん。健二君の事が好きなの?」
「まさか、あんな好きな女の子に対して、ちょっかいを出すことしかしない健二君には興味ありません」
「じゃあ、マリちゃん。好きな人はいるの?」
「まあ、いるけれども」
顔を真っ赤にさせながらマリちゃんは言う。
「じゃあ、マリちゃん。その子にマリちゃんの気持ちを添えた手紙を書こうよ」
「えっ!?何、そんな無理無理無理!」
「やってみないと分からないじゃん。とにかく私は以前、恋に二度ほど破れた事はあるよ。でも、死にたい気持ちにもなったけれども、とにかく恋愛は人を強くしてくれるよ。それに私、今はクラスの委員長もしているんだから」
「奈々瀬ちゃんは凄い度胸があるんだね。私にはそんな事出来るはずがないよ」
「いや、出来るよ。人を好きになることに実るか実らないか分からないけれど、とにかくアタックして見なよ。それにマリちゃんの好きな人って誰なの?」
「・・・」
「マリちゃん!」
黙ってしまったマリちゃんに私は一喝する。
「はい。私は小林明君の事が好きです」
「なるほど、小林君かあ、それは良いかもしれないわね。じゃあ、早速小林君に宛てる手紙を書こうよ」
「だから、無理だって言っているじゃん」
「大好きな人がいるなら恥ずかしがってちゃダメだよ。じゃあ、教室に入ったら、小林君に思いを伝えに行こうよ」
「思いを伝える何て私に出来るわけないでしょ。私は奈々瀬ちゃんのようにそんな度胸はないよ」
「私だって最初は緊張はしたし、尻込みもしたよ。とにかく大好きな人にアタックしに行こう」
私はマリちゃんの右手を私の左手で手を上げた。
★
とりあえず、教室に入って、仲の良い男子生徒と小林明君は語り合っている。
「じゃあ、マリちゃん。早速手紙を書こうよ」
「手紙って言ったって何を書けば良いのか分からないよ」
「じゃあ、私が恋のキューピットになって、そのマリちゃんが書いた手紙を渡しに行ってあげる」
「そんな事をして貰わなくても良いよ。私は、明君の事を遠くで見ているだけでも幸せ何だから」
「何それ、本当にそんなんで良いの?明君他の女子生徒にとられてしまうよ」
誰にも聞こえないように、マリちゃんの耳元で囁いた。さらに私は追い打ちをかけるように、
「それでも遠くで見ている方が良いと言うの?」
そうマリに言うとマリは蒼白してしまう。
「本当はマリちゃん明君の事を物にしたいんでしょ」
「それはそうだけれども、私にはそんな手紙を書くだなんて」
「とにかく手紙を書く事ぐらい簡単な事でしょ。ただ相手に思いを伝える事に一円もいらないんだから、だから、マリちゃん手紙を書こうよ明君に」
マリちゃんと私は仲良しなのでいつも隣同士の席だ。
でも先生の事は怖いんだよね。ちょっとでも授業をよそ見するとチョークが飛んでくるんだよね。
まあ、それはともかくマリちゃんに好きな人がいるならそれを全力で支えてあげようと思っている。
私はあろう事かマリちゃんに授業中に明君への手紙を書く事を勧めた。
マリちゃんは手紙を書いている。
すると先生が私達の前に来て、凄い形相で私とマリちゃんの事を見ていた。
「榊、何をやっているんだ」
そう言われて、マリちゃんは明君に渡すはずの手紙を即座に隠した。
「何を隠したんだ榊!」
「別に何も・・・」
奈々瀬は思ったこれは良い機械かもしれない。ここで先生に明君への思いを先生は読み上げるだろう。
「榊、隠した物をこっちに渡せ」
「渡せません」
「良いから渡せ!」
そう言ってマリちゃんが隠した明君に宛てるラブレターを取り上げた。
すると案の定、田柴先生はそのラブレターの内容を読み上げた。
「何々・・・私は明君の事が大好きです。どうかこんな私とお付き合いをしてくれませんか?」
すると教室中がざわついてしまった。マリちゃんは真っ赤な顔を隠して、涙さえ流そうとしている。
これはこれで良かったのかもしれない。後は明君の気持ちを確かめにマリちゃんと一緒に行くだけだ。
「田柴先生、どうしてそんな事をするんですか?」
「何だお前、俺に口答えするのか?」
「田柴先生、暴力はやめてください。これでも彼女は必死に思いを伝えたいと思って書いた手紙です」
「お前がこの手紙を書かせたのか?」
そう言って田柴先生は私の頬を殴りつけた。
右横に吹っ飛んで、マリちゃんは、
「大丈夫、奈々瀬ちゃん」
と心配してくれた。
「とにかく今は授業中だ。相沢、二度とこんな手紙を授業中に書かせるんじゃないぞ」
「酷いよこんなの、あなたそれでも先生なのですか?人の気持ちを嘲り、それに暴力を振るうなんて、酷いと思います」
「俺の授業中に妙な事をしているお前等が悪いんだろう」
そう言って、マリちゃんに暴力を振るおうとしたところ。
「待ってよ先生」
小林明君が立ち上がり、先生に言う。
「榊は、俺の為にこんな風になったんだろう。だったら俺も同じように相沢と同じような事をしてくれよ。それに俺には榊の気持ち分かるよ。人の事を嘲ってそんなに楽しいのかよ」
小林明君は今にも先生に飛びかかろうとしている。
キャーもう明君最高、格好いい。私の一番の友達にそこまでしてくれるなんて、これはもう付き合う事前提だなって私は思った。
田柴先生はそんな明にビビったのか、「と、とにかく今は自習にしていろ」
田柴先生も情けない。弱い人にしかそんな事が出来ないと思うと先生失格かもしれない。
そして明君は倒れた私を立たせて、私は「ありがとう」と言っておいた。
「榊」
「はい」
硬直するマリちゃん。
「お前の気持ち嬉しかった。ありがとう。俺もお前の事が好きになれたよ。お前は友達思いの良い奴なんだな」
こんなみんながいる教室の中で愛の告白を受け入れるとは凄い事だ。
これは私としては恋のキューピット作戦はどうやら勝手に叶ってしまったみたいだ。
他の生徒達は「キャー」とか「すげえ」とか単に笑っている人もいたが、みんなはみんな二人の事を祝福しているみたいだ。
だから私は言ってやったのだ。
「マリちゃんおめでとう」
って。
するとマリちゃんは私に向かって「ありがとう奈々瀬ちゃん」
うちのクラスにいじめなんてない。それは委員長としての私がさせないと思っている。たとえ先生が相手でも私はへこたりはしない。
私は恋愛相談室のサイトを運営している恋のキューピット相沢奈々瀬だ。
私はどんな恋のお悩みもこうして解決させるのが、私が恋のキューピットである証なのだ。どんな相手でも、その思いは届かないかもしれないけれど、たとえ届いたとしても、その思いが叶わなくてもその女の子をもしくは男の子を見返せるような人になれば良いのだ。
私は二度の失恋に死にたい気持ちにもなったが、私はその二人に対して、私を振ったことを後悔させてやると思っている。
ここにまた新たなるカップルが生まれた。
でも相手は私の親友の榊マリちゃんなんだよな。
確かに恋愛は成就したのは良いことだが、何か複雑な気持ちでもあった。
これからマリちゃんは明君と夢を育んでいくのだろう。
やっぱり恋愛って本当に良い物だと私は思う。
マリちゃんと明君は求め合う二つの心があるんだよな。
そう思うと私は急に気持ちが高鳴ってきた。