2ー14
体力作りの方針が整ったところで、今度は使った魔法について詳しく話を聞いた。
「え?うんと、レイ君が一度にたくさんの魔法を使ってたから真似するようになったんです。とても楽しそうで、綺麗だったから。」
えへへって!うちの子何て可愛いいんだ!
「凝縮した魔力に心眼を乗せて飛ばすと、離れていても見たいものが見えて、魔法を使う事が出来るんです。
それに、作り出した魔力に色んな属性を乗せて飛ばす事が出来ます。」
「なるほど、だから飛ばすと言っていたのか。」
「今回は、どうやって魔法を打ってみたの?」
「えっと、それは、いつも通り心眼で魔法を当てる土壁を見て、普段いくつも作る魔力を一つに纏めて凝縮したんです。そしたらあんな事に…。」
ごめんなさいと再度謝るので、
「責めているんじゃないんだ。ルゥちゃんの凝縮魔力を忘れていた私達の責任だ。
因みに、あれで、どれくらい凝縮魔力を込めたんだい?」
「どれくらい?良くわからないけど、初めてだったから途中で魔力込めるの止めたの。」
恥ずかしそうに、とんでもない事を言う。
「と、途中で止めてあれだったの?じゃあ、あの位の魔法ならいくつぐらい打てる?」
「あれくらいでいいなら多分10個は一度に出来るよ?」
可愛い笑顔で発した言葉に、会議室が静まり帰る。
「でも、魔力的には出来ても、筋力的には無理。
今日打った魔法だけでも、両手首が折れたの。」
はい!?
「ルゥ様!?モコは聞いておりません!?大丈夫なのですか!?」
モンシュリー殿が青い顔で手首を確認しているが、
「平気。吹っ飛ばされながら治癒かけたから。」
平然と言っているが、
「無理に魔法を使わせて申し訳無かった。途中でルゥちゃんが魔力を込めるのを止めなかったら大怪我を負っていた。」
皆、再度謝罪した。
笑顔で許してくれるが、もしもの事を考え背中に嫌な汗が流れた。
「ルゥ、気になっていたのだが、魔法を打った時、集中していて私達の声が聞こえていなかったのか?」
離れた席からサイジェストのキリアンが問いかける。
「え?魔法を使う時は内側に集中するから周りの声は聞こえないよね?」
何言ってるの?とでも問うように首を傾げている。
「ルゥ、魔法を使っていても周りの状況は常に聞こえているし、見えている。でなければ直ぐに魔物に襲われる。戦闘においては基本だぞ?」
心底驚いた顔をして、席に着いてる将軍を見回している。
「まさか、周りの状況も見えていないのか?」
恐ろしい事に首を縦に振った!
「なんと…。」
何がどうしてそんな状態になるのか、今すぐ揺さぶって問い質したいが、泣き疲れて寝ている間にモンシュリー殿に、目の奥が笑っていない、静かな笑みで、12歳の戦闘経験皆無な女の子ですが?そちらの常識を押し付け過ぎ無いようにお願いしますね。と言われたのだ。祖母に叱られているようで、全員でハイ!と良いお返事をするしかなかった。
「それは心眼とやらも関係しているのか?」
「そ、そうです。器に集中するの。器の中で魔力を凝縮するでしょう?」
いえ?凝縮出来ませんよ?
「内側にある器に集中するから、外は見えないし、聞こえないか…。」
「ルゥちゃん?そんな無防備な状態でこの前砦に行ったの?あの時、神殿騎士に離れていてもらうように言ってたよね?」
そうだ。あの時だって、いくら上空から魔法を使うと言っても無防備だったんだ。
「恐ろしいですな。」
「狙ってくれと言ってるようなものだぞ。」
「戦場には間違っても連れていけないな。」
将軍達からの声も上がる。
どうすればいいのだ?この子の魔法は必ず戦場で必要になる。突破口を開いてくれる大切な子なんだ。
「ルゥ、あの時近くに居られると心眼の妨げになるからと、神殿騎士を遠ざけたな?
その心眼は見たい物を見せるという。なら、神殿騎士も見たらいいし、周りも見えるのではないか?」
キリアン!お前頭いいな!?
「ううん。心眼では魔力を見るの。近くにいたら、その人の魔力が大きく見えて、その向こうが見えないし、景色も見えたら自然の魔力も映っちゃう。この世界、魔力持たない物なんてないでしょう?ごちゃごちゃと魔力が見えて、治癒を必要としている魔力を探すのに時間がかかるの。」
四面楚歌だ。
どうすればこの子を守れる?
開発部に行ってしまった賢者を呼ぶか?
「よろしいでしょうか。」
そこで初めて声を上げたのは、アレイヤ騎士だ。実力は充分あるが、まだ若く、本来なら、この席にまだ座れない者だ。だが、ゼロの子と友人関係にあり、頻繁に手紙をやり取りしていると聞く。お互いの事はある程度わかっているのだろう。
性別は気付いてもらえなかったが。
「発言を許可する。」
「ハッ!ありがとうございます。以前手紙で、他の魔力が見えると聞きましたが、その際、自分の魔力は見えないとも聞きました。彼女の魔力を纏えば側で守れるのではないかと愚考致しました。」
それだ!
「そうだ!そうだな!開発部に至急連絡を入れろ!」
「お待ち下さい。彼女は既に持っているかと思われます。」
「何?既に持っていると?」
一斉に向けられた視線に、ぶんぶん首を横に振っている。
「な、何言ってるのアヤちゃん?私そんな都合のいい魔道具持ってないよ?」
「シア、もう一度頭を振ってみろ。」
は?という顔をしながらも素直に頭を振っている。
シャラシャラシャラ
「ま、まさか!?女神様からのピアスか!?」
「そう思われます。手紙でピアスの事を聞いた時、何故既に魔力を貯めている器があるのに、もう一つくださったのか疑問に思いました。彼女を身近で守る者が持つよう、お渡し下さったのではと、先程からのお話を聞いて思いました。」
「ル、ルゥちゃん?ピアス一度外して試させてもらってもいいかな?」
恐れ多い物だ。なんせ、女神様からこの子宛に贈られた代物だ。
が、耳から外して、簡単に渡してくれる。
貸してとは言ったけど、こんな貴重な物をぽいぽい渡してはいけませんよ?
目の前に浮かんでいるピアスを、周りの視線を集めながら手を伸ばす。
ゴクリ
震えそうになる手を何とか抑え、そっと掌に乗せてみる。おっと、
「こ、これは持ち手を選ぶ物らしい。私の魔力とは合わず、少しビリビリ感じる。
持っていられない事もないが、相性の良い者を探す方がいいだろう。
では、ルゥちゃん、心眼で私を見てくれるかい?」
「はい。」
おお、ビリビリ、ビリビリする、少しの間なら持つ事に問題無いが、これは気になって護衛どころではないな。
「わあ!本当だ!凄いよアヤちゃん!良く気付いたね!マックスおじ様の魔力がとても薄くて、うっすら向こう側が見えるよ!」
喜んでるゼロの子の頭を優しく撫で、愛おしそうに見下ろしている。
ロノフのリックをギロリと見ると、ニヤニヤして2人を見ていた。
アヤちゃん凄いねぇと、喜んでるゼロの子には一切彼の想いは通じていないようだが、それでいい。まだ早い。お父さんは許しません。
とりあえずルゥちゃん?
都合のいい魔道具あったね?