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WAO!  作者: 神楽
20/38

2ー7

オルさんに、目の治療を受ける人を10人連れてきてもらったけど、壁だ壁!

最初の熊さんよりかは小さいが、デカイ事には変わらない!入り口に10人も揃って並べば圧が凄い...

モコさんが心配そうに見てくれてるのがわかる。

頑張るよと、無理して作った笑顔で答える。

入って来た人には一人づつ、並べられた椅子に腰掛けてもらう。

そこからは、さっきの人と同じ事をしていく。

慣れてくると流れ作業だ。

オルさんが一人づつ前に連れて来て、症状を説明して包帯を外す。

私が癒す。

モコさんやお爺様達が確認する。

オルさんが目にタオル当てたままの人を、部屋の外に居る人に引き渡す。

出て行った人と入れ違いで、一人部屋に連れてきて、椅子に座らせる。

またオルさんが、また次の人を前に連れてくる。

といった感じで、いい流れで治癒を施していき、あっという間にお昼休憩を迎えた。

誰も彼もが、泣いてお礼を言ってくれた。

何度も魔力負担の確認されたけど、私は呼びかける時にしか使ってないから、あまり減ってない。治療を受ける側の人のが、相当魔力使っている筈だ。

用意された部屋に、転移で連れてきてもらうと、皆んなで眩しさに目を瞑った。談話室が暗かったから、いきなりの明るさに驚いてしまって、皆んなで笑った。

昼食をとってお昼寝をし、おやつを食べながら、初日だし午後は休むかと聞かれたけど、無問題!

だって思ってた程魔力使ってないもん!

いつもより短いおやつタイムを済ませ、午後からはモコさんと、神殿騎士のみで移動した。

サリーさんは、午前中のうちに前線からお呼び出しが掛かり、お昼休憩の前には既に居なかった。お爺様達も、大丈夫そうと分かって、将軍の元へ行くそう。

お爺様達の代わりに、オルさんの部下と紹介された2人が加わった。オルさんと似たような背格好で、ウィルさんとソルさんだ。

午後の治療を再開してすぐ、今日砦に来てた、残りの聖女2人もやってきた。

呼ばれる迄の短い時間だけど、と。

実際に目で見ながら、治療する感覚をあれこれ質問された。

聖女達にも出来る様になってもらいたいな。


午後も、午前中の流れのまま処置を施し、今日はここまでにしましょう。と、モコさんに声を掛けられるまで、夢中でやっていた。

喜んでくれるのが嬉しくて、時間を忘れていたようだ。

だって、部屋の中の雰囲気が明るい!

暗いのに明るい!

見える様になった人達は勿論、お手伝いをしてくれているオルさん達、神殿騎士達、勿論モコさんも、皆んな笑顔だ。

見えないけど、期待をして座っている人達は、治る可能性にソワソワして待っているのが伝わる。

最初は怖かった大きな騎士様達にも、だんだん慣れてきた。

やって良かった!とモコさんと共に一足早く島に帰った。


良かった、良かったと布団に入る迄興奮していたけど、布団を掛けてもらった途端、コトンと寝れた。

その夜はユー君に、流石お姉様!って言われる幸せな夢を見た。


翌朝、体調を確認されたけど、絶好調なので行きますよ!

同じメンバーと、同じ流れで治癒を施し、治療を始めてから11日後には目だけを治す人は居なくなった。

次はいよいよ欠損患者だ。まずは腕の人から始めるらしく、またお爺様達が見届けに集まってくれた。

オルさんに呼ばれて部屋に入って来た人達は、目の患者さん達とは違って、私を見て、目を見開きながら自分の足で入って来た。

こんなちっこいのに治せるのか、驚いてるのだろう。

大きな騎士様に慣れたとか言ってたけど、嘘です。ごめんなさい。調子にのりました。


「大丈夫ですよ。ルゥ様、この方達も大きな熊さんです。島で熊さんのお人形の治療をしましたね。痛い、痛いと泣いてる熊さんを、私が直したら喜んでくれました。

今度は、ルゥ様が痛い痛いしてる熊さんを治してあげれるでしょうか。」

目線を合わせて落ち着かせる様に話してくれる。

いつでも、どこでも、モコさんは安心感を与えてくれる。

「あい、モコしゃん。こんどは私がなおします。」

ちゃんとモコさんの目を見て宣言し、腕を無くした熊さん達を見上げる。

砦に来て、初めて治した人を熊さんみたいだったと言ったら、モコさんが、皆んな熊さんだと思えばいいのですよと教えてくれた。

そして、熊さんのお人形を使って、人形劇をやってくれた。治癒士はモコさんで、助けを求める熊の人形の手足を、チクチク縫って治療し、仲良く暮らしました。というお話だった。

見上げた熊さん達に、

「いたい、いたい?」

と、聞けば、

「あ、ああ、とても痛いんだ。小さな妖精さん、お願いします、わたし達熊には、まだやるべき事があるので治して下さい。これでは、蜂蜜も集められない。」

ん、熊さんだ。

「あい、いたい、いたい、治しましょう。」


離れてしまった腕は、ずっと近くにいたの?

戻りたかったんだね。

まだやりたい事あるもんね、戻っておいで、

おいで、おいで、

帰っておいで。


呼んであげた腕は光に包まれ、元に戻っていった。

骨から再生されていったら怖かったけど、光に包まれていて、何も見えなくて良かった。

「あ、嗚呼、何て事だ!奇跡だ!妖精さんありがとう!」

大きな声と、いきなり立ち上がるからビビったけど、泣いて喜んでる。泣きながら腕を振り回し、動作の確認をしている。うんうん、良かったね熊さん、と思って見ていたけど、他の熊さんから熱い視線を感じる。

うん、任せない!蜂蜜取れなければ大変だもんね!


それから腕の再生の人に3週間程かけ、耳や指、足と続いた。足の欠損の人は部屋のベッドに寝てもらって治した。

大変だからと、部屋に来てもらうより、私が行った方が良いのでは?って聞いたんだけど、騒がしいから行かない方が良いと言われた。再生されたところは元に戻る訳ではないから、鍛え治しと、リハビリが必要になるようで、この部屋付近以外は煩いらしい。

私が呼んでるのは、離れて行ってしまった箇所の想いだけで、再生されたところとは、これから新たな付き合いになる。


最後は一番見た目が酷くなってしまった人達で、最後迄、小さい子に見せるのは酷だって、迷っていたらしいが、本人に一度聞いてみようとなったらしい。

「ルゥ様、このふた月、良く頑張りましたね。大変、素晴らしかったです。目の前で起きる奇跡に日々感動しておりました。」

うん、皆んな笑顔になってくれて、私もとっても嬉しかった!

モコさんが両手を握って笑顔で話してくれる。

でも、

と、先程迄浮かべていた笑顔の代わりに、悲しそうな顔で、

「次の方達で最後になりますが、この方達は、はっきり申し上げて傷が酷いんです。

火魔法を使う魔物によって受けた傷で、皮膚は勿論、耳や目、毛根が溶けてしまったり、腕と、胴体が溶けたままくっついてしまった方達です。

治癒魔法やポーションで、表面だけは良くなりましたが、溶けてしまった箇所は治りませんでした。

いかがされますか?怖いとお思いなら、無理にとは申しませんし、誰も責めたりは致しません。

もう少し大きくなってからでもいいんですよ。」


私の事を思って、気を使ってくれてるのが、握られた手と、向けられた目から伝わってくる。

ありがとうモコさん。

「だいじょうぶ。モコしゃんだってくましゃん治してくれたもん。みんな治してあげて、なかよくくらすんだよ。なかまはずれはかわいそうだもの、さいごまでやれるよ。」

モコさんは涙を浮かべながら、頭を撫でてくれた。

「そうですね。でも、時が経てば仲良く暮らせます。今が無理でも、きっと仲間は待ってくれていますから。」

「みためで決めたら、ダメなんだよ。モコしゃんが読んでくれた、ぶくぶくガエルも、なかまはずれでかわいそうだったもの。ぶくぶくガエルにいじわるしてた、女の子みたいになりたくない。」

「ふふふ、あのぶくぶくガエルですか?

確かに、あの絵本に出てきた女の子は酷かったですね。ルゥ様絵本読んで差し上げた時、初めて怒っていらっしゃいましたもんね。」


そうなのだ、モコさんに読んでもらった絵本に、顔に生まれつきブツブツがある男の子が、意地悪を言う女の子と、その友達のせいで、仲間に入れてもらえずイジメられる。

家の外に出る事も出来ず、更に太って、ぶくぶくガエルと呼ばれる。

毎日1人、泣き暮らしていると、女神様が現れ、清らかな心を持つものであればたどり着ける、精霊の泉があると教えてくれた。

その泉の水ならブツブツも治ると言われ、旅に出る。その旅の途中に出会った女の子は、見た目に惑わされず、男の子の優しい心が好きになり、一緒に泉を目指す。

そして、力を合わせて旅をしている間に、体も痩せ、やっと泉に辿り着いた。

そして、精霊がくれた水により、ブツブツも治ると、王子様のように素敵な男の子に。

ぶくぶくガエルと呼ばれた男の子は、一緒に旅してきた女の子と幸せに暮らしました。

その頃、意地悪をしてきた女の子にも、顔にブツブツが出来、男の子を真似して、泉を目指して旅に出るが、心が汚いから泉にたどり着く事が出来ず、かつての男の子の様に、1人家で泣いて暮らしました。

というお話だった。

意地悪な女の子に、初めてムキーってなった。

その絵本を読み終わってから、絶対にその女の子みたいにはならないとモコさんに誓ったのだ。


「あい、いじわる女の子にはなりたくないから、だいじょうぶ。私、ブツブツあってもいじわるしないよ。」

「ふふ、はい。わかりました。モコも隣に居ますからね。一緒に泉の精霊さんになって、ブツブツ治してあげましょう。」

私達の会話を聞いていたオルさんが、モコさんの合図を受け、1人ゆっくりと部屋に連れてきた。

入ってきた人は、確かに酷かった。

見ているだけで痛かった。

椅子に座ってもらい、

「いたい、いたいとんでいけ。とんでいけ。

とおくへ、とおくへ、とんでいけ。」

絵本の男の子と重なって見えた。意地悪を言われて心も痛かっただろう。

痛いのはあっちに飛んでって。

おいで、おいで、痛いのなくなったから、

戻っておいで、

この人は綺麗な青い目。

両目、両耳揃ってる方が素敵だよ。

髪はオルさんみたいな紺色だ。

指もくっついてるより、一本一本動かす方が、

食べやすいよ、

見た目で怖がられるのは、心が痛いよ。

帰っておいで。おいで。


酷かった箇所がキラキラし、髪の毛も生えてきた。良かったね、ほら素敵になった。

女の子と幸せに暮らすんだよ。


「いたいいたい、なくなった?

めでたし、めでたし?」


ペタペタ酷かった箇所を触っているので、オルさんが泣き笑いし、頭をくしゃくしゃ撫でまわしながら鏡を渡した。

「モコしゃん、私、いじわる女の子じゃないでしょう?ブツブツ治せた!モコしゃんと、泉のせいれいしゃんになれた!」

隣で一緒に治してくれたモコさんに、嬉しくて抱きつく!

「ええ、ええ、やりましたね!流石です!なんて素敵な精霊さんなんでしょう!」

って抱き返してくれた。

「ルゥちゃん、ようやった、ようやった!よう、頑張りよった!儂には本物の泉の精霊より、素敵に見えたぞ!」

今日は、心配してお爺様達も来ていて、皆んなで褒めてくれた。

それからも、モコさんと泉の精霊になり、ブツブツを綺麗にしていった。


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