表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
WAO!  作者: 神楽
17/38

2ー4 (途中〜フォース国王視点)

読み終わって、そっと水晶から目を上げた。

皆んな固まってるし、周りはシンと静まり返っている。

あれ?これどうしたらいいの?モコさん!と隣を見上げるも、モコさんも固まっている。

どうしよう、どうしよう。

と、焦っていると、触れている背から動揺を感じ取ったのか、


「だ、大丈夫ですよ。ルゥ様。

え、ええと、

女神様と、同じお名前の方からのお手紙みたいでしたが、魔力量も問題なさそうでしたし、

そ、その、あ!そうだわ!

少し早いですが、お昼にしましょう!

そうしましょう!ね、皆様!

ルゥ様も、初めてのこういった場で、緊張されていた様ですし、続きは、その後にでも致しましょう!そうしましょう!」


え⁉︎このタイミングで⁉︎

と、思ったけど、他の人達も、そうだな、そうしよう!って言い出して、結局、モコさんと2人別室に移り、ゆっくりお昼を頂いた。ケーキを食べちゃってたから、折角の王宮ご飯少ししか食べられなかった!




ーーーその頃の小会議室ーーー


ゼロの子と、モンシュリー殿を何とか正気に戻って見送った後、皆、どっと疲れたように椅子に腰掛けた。

女神様であろう方からの手紙?から受けた衝撃が凄すぎた。


この水晶でステータスを見ると、名前や年齢、職業、体力量、魔力量、魔法レベル、獲得したスキル、称号が出て来る筈だ。

え?そうだよね?手紙じゃないよね?


自分もそうだろうが、皆50歳程老けた様に見えるのは気の所為じゃないはず。

賢者の爺様なんて、ヤバイだろう。おい、大丈夫か?と、声を掛ける気力も無い。


と、そこへ、ドンドンドン!開けますぞ!と、

誰の返答も無いまま、各将軍を筆頭に、溢れかえるほどの人数が、凄い勢いで部屋に押し入って来て、一斉に喋り出す。

別室で話を聞いていた者達か...何て、ようやく働いてきた頭の片隅で思う。

デカイ図体共に、こんな人数で近くに寄って来られるのは、たまったもんじゃない。

「この部屋では狭い。そちらの部屋に移動するぞ。」

少し、現実逃避していたが、昼食後は昼寝をすると聞いている。起きる迄に話し合っておかなければいけない事は沢山ある!

「良し!ほら!立て!時間が無い!移動するぞ!」

賢者の爺様達は支えられて、大人数で一応、混乱を起こさない様、静かに大会議室に移動した。

部屋とドアが閉まるやいなや、皆、一同に喋り出す。


女神様からの信託なのか⁉︎

ステータスはどうなってる⁉︎

17年後の秋から冬がピーク⁉︎

水晶を頂けるのか⁉︎

女神の使徒なのか⁉︎

女神様からのピアスとは何だ⁉︎

ゼロの子とは何者だ⁉︎

どんな役目がある⁉︎


17年後のピークを乗り切れば助かるのか⁉︎


一斉に言いたい事を喚きだす。

衝撃的で、情報過多だったが、一番気になるのは、やはり。


開催国の王として片手に挙げ、注目を集め皆を黙らせる。


「『17年後の秋から冬に掛けて、魔物の数がピークを迎える。それに備えて、力を合わせ、乗り切れ。それが出来なければ、世界は魔物にのまれ、人類は滅亡するしかない。』

と、私はそう捉えた。

賢者方の意見が聞きたい。」


意見を求められた賢者達は、顔を見合わせ、代表して、最年長の賢者、聖霊島のデンウィーズ殿が答えた。


「儂もそう捉えます。17年後のピークを乗り切れ。乗り切った後、何があるかは分かりかねますが、初めて救いを見た気が致します。

ピークを乗り切れば、何かしらの影響で、深淵の森が静まり、魔物の大量発生が収まる。」


そこで、一旦言葉を切り、静かに語り出す。


「確かに、あの子は産まれ方からして特別です。

そして、女神様から何かあの子に必要であろうと、ピアスが送られる。

あの子の特殊な魔力の器に、魔力を貯めろと仰る。

だが、忘れないで頂きたい。

女神様はこうも仰られた。

『他の者も、其々できる事をし、皆で力を合わせて乗り切れ。』

と。

あの子の小さな肩に未来を背負わせないで頂きたい。

過剰なプレッシャーを掛けないでもらいたい。

確かに、魔道具の発想は我々の助けになる。

だが、考え、作り上げていくのは我々大人達だ。

あの子の事だ、今迄通り過ごしていれば、新たな魔道具は生まれる。

あの子には、女神様から言われた様に、魔力を貯めるのを第一にしてもらった方がいいと、儂は思う。

ミュラージェット様も貯める様に仰られていた。

それが、あの子がしなければならない大事な事だと思う。

お願いします。

あの子には島で今迄通り過ごして貰いたい。

今迄の流れが一番皆の為になっていると思う。」


深々と頭を下げて願い出ると、他の賢者達も揃って頭を下げる。

と、いう事は、賢者達の総意思だ。

感情移入も多少あるだろうが、賢過ぎる頭で考えた結果、今迄の流れが最適だというのが、導き出された答え。


他の王と目が合う。

軽く頷き合う。

思う事は皆同じだ。


「我々も同じ意見だ。」

そして、この部屋に集まる者達を見渡し、

「皆、聞いていた通りだ。ゼロの子にはゼロの子のやるべき事がある。

ゼロの子には聖霊島で今迄通り過ごしてもらい、我々には我々にしか出来ぬ事を、17年後に向けて、力を合わせて乗り切ってゆこう!

意義のある者はいるか⁉︎

今、申し出よ!」

騎士達は、幼な子に頼っては恥となる!

これからもっと鍛え、守り抜いてみせる!

と、意気込み、魔道具開発部も、生活魔道具から武器魔道具に応用出来る物があるかもしれない!

水晶はどの様に使う⁉︎

と、普段は同じ魔道具でも、生活と、武器。畑違いな事もあり、一緒に仕事していなかった者達も、協力し、意見を出し合っている。


その様子を見て、少しは女神が望んだ形に近付いただろうか...と、王や賢者達は思った...。


それから、昼寝から起きてきたゼロの子と、お茶をしながら、慣れ親しんだ賢者達と自由に話して貰った。その方が島での自然な姿を見られると思ったからだ。

そして、1人の島の賢者が、初めて島から出て、何か思った事はあるか尋ねた。


「んとねぇ、はじめてみる、きや、はながあってしゅごいとおもった。

あとは、ケーキのいちご、すごくおいしかった。

あとは、あとは、

てんそうまほうじんに、わたしのまりょくちゅかったら、もっとちゅかいやしゅくなるかなっておもった。」

「ん?転送魔法陣にかい?どうすればいいと思ったの?」

「んと、んとねぇ、まりょくいっぱいちゅかうって、いってたでしょ?

わたしのまりょくちゅかえば、もっとふやしぇるし、たくしゃんちゅかえるようになると、おもったの。

しょうしゅれば、こっちでふえたまものを、よゆうのあるところから、しゅぐ、たしゅけにいけるでしょう?ひゅんって。

モコしゃんが、1つでも、とりでをおとしゃれると、みんながたいへんだっていってた。」


だから、落とされない様に、ヤバい所に余裕がある所から直ぐ増援に向かえば、助かる可能性も高くなるかなって思ったの。

そう、伝えられ、わかった考えてみるね。と、賢者が軽く答えているが、それが実現出来れば凄い事だぞ!

興奮を隠し、聞き役に徹する。

後は何かある?って聞かれ、島の聖女達に言われた事を思い出した様だ。


「んとねぇ、とりでにいってる、しぇいじょしゃまたちが、うでとか、あしをなくして、たたかえるのに、たたかえなくなったしとが、たくしゃんいて、かわいしょうっていってたの。

なおしてあげたいって。」


私、たぶん、治せるよ。


ーーは?ーー


ガタンッと、大きな音を立てて、騎士達が立ち上がり、ゼロの子に凄い勢いで近付いていく!

おいっ!いきなり5人の大きな騎士に、本当かい⁉︎って詰め寄られて、泣きそうになってるではないか!

ガーナが冷めた視線で落ち着くように言ってくれた。幼な子の様子を見ろと。騎士達が、氷の眼差しで我に返り、ごめんねって椅子に座ってから、モンシュリー殿が、

「大丈夫ですよ。

このお兄さん達は騎士様ですからね、身近に手足を失い、志半ばに、前線を退かなければならない、お仲間がいるのでしょう。

私の兄も、目に毒を受け、命を預けあった仲間を置いて、家に帰って来なければなりませんでした。

家族には平気な顔を見せておりましたが、体が元気な分、一部の傷で戦えないというのは、さぞ、悔しかった事でしょう。」

モンシュリー殿ぉ〜!ゼロの子が一番懐き、頼りにしているの分かるよ!

先程のステータスという手紙の時も、王である我等より先に正気に戻り、ゼロの子のフォローにまわっていた、その手腕、頼りになります!


「ルゥ様は、ご自身の意思で治して差し上げたいと、思われているのですね?」

「あい。てや、あしがないのはかわいしょう。

でもね、あのね.....」

「はい。」

「あの.....、

いちどは、てとかなくして、こわいおもいをしてるでしょ?

こわくて、もうたたかいたくないよ、ってしとには、むりしてほしくないなっておもったの。」

「まあ、それはそうですね。良く、お気付きになりました。治りたいと思う人の意思に任せますので、そこは、このお爺様達を信じましょう。お爺様達も、ルゥ様が大好きですから、ルゥ様が嫌がる事は決して致しません。

ですよね?」


幼な子の心遣いに感動していた賢者達は、首をぶんぶん上下に動かし、勿論だよ!そこは任せなさい!と、答えていた。


ゼロの子から語られる可能性に色々突っ込んで話が聞きたい!

表情や態度には出さないが、本当にそんな転送陣の使い方、出来るようになるのか⁉︎

あいつも、あいつも、体が元に戻って、また一緒に戦えるのか⁉︎

もう、内心は大荒れである。

でも、相手は2歳児だ。落ち着け。


「ね。お爺様達も、こう仰ってます。

必ずや、ルゥ様が望む転送魔法陣を完成させてくれますし、嫌がる人に無理強いする事など致しません。

ルゥ様が、皆を思って考えてくれた事、皆分かっていますからね。

ご成長されました。すっかり、お姉様になられて。


でも、これだけはお約束下さい。

治療に当たる際、酷い傷を負った者達が殆どです。会ってみて、やっぱり怖いと思ったら、直ぐこのモコに伝えてくれますか?

先程のルゥ様が仰った事をそのままお返しします。

怖くて、やりたくないなと思ったら、無理をしてまで治療してほしくありません。

お約束出来ますか?」


もう、これ、モンシュリー殿に全て任せておけば大丈夫だね。

何だろうね、この安心感。

その場と、話を聞いていた大会議室の一同、同じ事を思った。

恥ずかしくも、我々は、目先の利益に焦り、2歳児のメンタル面を全く考えていなかった。


それからは、和やかに会話が進み、夕方帰る時が来る。

今迄沢山の会議や面会をして来て、こんなにも感情が動いた事は無かった。

残ったのは、大人に幼な子が見せてくれた、初めての希望。

これを、どう生かすかは大人の仕事だ。


700年近く続く魔物との戦いが、いよいよ終盤を迎える。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ