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WAO!  作者: 神楽
10/38

1ー8

ゆっさゆっさと肩を揺らされ

「お、起きて下さいルゥ様!ルゥ様!」

夢の世界から現実の世界への強制呼び出しに、ん、んと、目を開ける。

擦りながら目をゆっくり開けると、薄ぼんやりとすぐ目の前に自分のじゃない服が見え、

びくっと一気に覚醒した。

誰かと寝ている⁉︎

背中に回された手がとんとん、とんとんしてくれていて怪しさは感じない。

何より、慣れ親しんだ安心感ある心地いいオーラだ。

ゆっくり頭上に目をやれば、肩肘をついた12.3歳位の人外レベルにお美しい少年のお顔が見えた。

今迄見てきた人達も綺麗だったが、これはあまりにも違い過ぎる。

オーラもあってか、神が丹精込めて作り上げたまさに人外の盛りに盛った極上美だ!

他の人とは一線もニ線も違う!これが聖女達が言っていたイケメンてやつか⁉︎

艶のある濃い蜂蜜の色をした優しい目で見下ろされ、豊かな黄金色の髪を垂れ流している。

わお!頭の上には大きな三角お耳がありぴこぴこしてる!何それズルイ!可愛い!暫く耳に萌え萌えしていると、

ゴホンっとモコさんに促され、確信していたので

「ミュラージェットしゃんおはようごじゃいましゅ。」

と、普通に朝の挨拶をした。

「ん、おはようゼロ」

声や話し方まで優しい。

「きょうはおきてもいてくれたんでしゅね!

あ、モコしゃんもおはようごじゃいます!

こちらミュラージェットしゃんでしゅ!

なんか、きちゅねしゃんから、おにいちゃんにせいちょうちてましゅけど、やっとあえまちたね!」

口に手を当て、あわあわしていたけど、急に両膝をついて胸の前で手を組み頭を下げた。

お祈りの体制だ。

「おはようございますルゥ様。

そして、お初にお目にかかりますミュラージェット様。モンシュリーと申します。

お会いでき、大変光栄にございます。」

普段のおっとりとした声は、僅かに震えている。

感極まっているようだ。

感動の出会いを見守っていたが、ミュラージェットはマイペースに、先程と変わらない体制でわたちの背をとんとんしていた手で絶え間なく頭をなで、髪をすいている。

「ん、おはようモコさん。楽にしていいよ。ゼロがお世話になっているね。」

モコさん呼びである。ん?わたちがお世話になっているね?家族なの?やっぱりお母さんなの?

「お母さんじゃないよゼロ、それに僕は男の子だよ。」

あれ?声に出てた?

「声には出してないよ。僕は全ての生命を与えた聖霊樹と共にあるからね、生命あるものの意思はよめるんだよ。」

わお!プライバシーの侵害である。

「大丈夫。オンオフ出来るから。聞こえっぱなしじゃうるさいでしょう。

ゼロは生まれた時から知っているから、気になって偶に意思を聞いていたよ。

だから、モコさんに凄く良くしてもらってる事も、 ゼロがモコさん大好きなのも知ってるよ。」

やだ、勝手に告白しないで。まあ、大好きですけども!

「今日はね、モコさんにも話があるんだ。

寝ている間に魔力を調整して、やっとそれが整ったんだ。もう赤ちゃんじゃなくなったらね、本来の魔力に戻したから瞑想はもう必要ないよ。

他の人とは魔力がかなり違うから、使い方は僕が教える。

と、言っても僕もお仕事があるし、一緒にいて教えてあげる事は無理なんだ。

今日一日一緒にいるからコツを教えてあげる。

今は秋だから、ナノを大量に飛ばさないといけないからね、ちょっと忙しいんだ。

さあ、朝ご飯を食べておいで。

僕も少し仕事してくるから、そうだなぁ、2刻したら戻ってくよ。じゃあ後でね。」

言うだけで言って大気に溶けていった。

本当に忙しいんだなぁ。

何で人の姿をとっていたのかとか、生まれた頃から知っているとか、色々聞きたい事もあったが、2刻後には会えるしね。さ、ご飯食べましょ!

モコさんは、震える両手を口に当て、だあだあ涙を流して泣いていた。

良かったねぇ、一度は見てみたいって言ってたもんね、やっと会えたね。


落ち着くのを待っている間に、用意されていたものに着替えて顔を拭き、髪も梳かしてみた。

櫛が手には大きくやりにくかったが、何とか出来た!朝の支度全部一人で出来た!

また一つお姉さんになったぞ!

支度が出来て少し経つと、モコさんはふうっと息を吐き、恥ずかしそうに 、

「申し訳ございませんルゥ様、絵本や物語りに登場する方にお会い出来て、興奮してしまいました。

拝見するだけでもとても幸運ですのに、

お声をかけて頂けるなんて。嗚呼...」

まだ暫くは収まらないだろ。

でも、ほら、また2時間後に来るから!

今日は、わたちが手を引いて連れて行ってあげよう!さぁ、ごっはんー!


わたちが食事している間にモコさんは、見習いの神殿騎士にささっと書いた手紙を頼んでいた。


部屋に戻ると、20人程のいつもの茶飲み友達が全員集合してて、皆んな大興奮で、一気に喋り出すからうるさくてびっくりした。

いつもは皆んな穏やかで、面白いお爺様達だが、

ミュラージェットと共寝する様になってからのお茶会は、毛の感触やら、匂いやら、鳴き声やら、もの凄い質問攻めにあった。触発されたモコさんが身振り手振りで何があったかを再興奮状態で話す。もぅ、ほっとこ。

お爺様お婆様おじ様おば様みんな大興奮だ。泣いてる人までいる。


「しょんなにしゅきならあっていけばいいのに」

ぼそっと呟いただけなのに、皆んなの顔がぐるっとこっちを見る。何怖い。

「でも、ほら、恐れ多いし。」

ねえ?お忙しいのに、とか、お邪魔になるし、なんて口から出てくる言葉だけは遠慮しているが、周りと顔を見合わせながらも、どこか期待しているようにこちらを見る。

「でも、モコしゃんにはおしぇわになってるからってこえかけてくれたでしゅよ?

みなのこともしょうかいしゅたいでしゅ。」

感激した!とばかりに、本当かい⁉︎いいの⁉︎お忙しいだろうし纏めてでいいから、ダメでも遠くからお姿を拝見するだけでもいいっ!

イヤ、興奮し過ぎじゃないですかね?

「きいてみるでしゅ。」

こうしちゃいられないっと、皆身支度を整えに部屋を出て行った。


約束の時間までに部屋に顔を出した皆んなは、限られた時間の中で一張羅を着てきてた。

じゃあ、あの、向かいの部屋にいるから!頼んだよ!無理しなくていいからね!っと部屋を出て行った。

モコさんは着替えてないけど、鏡を見ながら髪や服装をチェックしていた。

何か召し上がるかしらとか、どの茶葉がいいかしらと、そわそわ落ち着かないようだ。

ソファに座って足をぶらぶらしながら絵本を読んでいると、隣にミュラージェットが現れて、うぉって一瞬びびった。

「やあお待たせ、早速始めようか。

と、その前に会わせたい人達いるんでしょう?呼んできなよ。」

筒抜けである。まぁいいけど。

「ありがとうございますっ!」

待つ間に、これから出かけるからねって。

え?そうなの?

ノックが聞こえ、皆んながぞろぞろ入ってきた。

祈りの態勢で挨拶、お茶飲み友達なんだってね、仲良くしてくれてありがとうとか声をかけて貰えて、モコさんと同じになった。

感涙に咽ぶ。


でも、彼はこの状態をぶった切った。

「聞いてると思うけど、今日はゼロの魔法練習するから、これから出かけるね。

部屋の中であれこれ出来るものじゃないし、安全な所で教えてくるよ。

それじゃあ行ってくるね〜。」

え?え?今?すぐ?


誰の何の返事ももらわないうちに、視界がモヤモヤに歪みながら、体が無くなっていくような感覚に思わずギュッと目を閉じた。

「大丈夫、もう着いたよ。目を開けてごらん」

恐る恐る目を開くと其処は水の上だった。


は?

水の上だと⁉︎


ミュラージェットの足にしがみつき縋ってしまうのも仕方ないよね⁉︎

「沈まないから安心して。此処なら周りに何もなくて安全だからね、さあ、始めようか。」

マイペース過ぎる。

でも、まあ、実際、足がついてる所は水紋が広がるだけで沈まないし、ミュラージェットがそう言うんだから大丈夫なんだろう。

爪先をちょんちょんすれば水紋が広がる。

靴は濡れないのか?ん、大丈夫そうと納得出来たので足から手を離す。わぁ、不思議ぃ!

神殿から出た事がなかったので水の上だろうと、視界一面に広がる湖の景色にとても感激した。

大陸の6分の1が湖って言ってたけど、とてもとても広かった。ぐるりと見渡しても水平線ばかりで、島も船も何も見えなくて、世界でミュラージェットと2人しかいないように感じた。

風もさわさわと吹いてるだけなので、とても静か。 時よりぴちゃんって音がするぐらいで、何か、別の世界へ来たみたいだ。

水の中を覗くと思わず、わああって声が出た。

図鑑でしか見た事ない沢山の魚が見えたのだ!

見たことある魚は調理されたものだけ。

生きてる!泳いでる!色んな色をしてキラキラしてる!湖草も踊っているみたい!

何処までも透明で深い所まで良く見える!

ずっと見ていられる!

いつの間にか湖面に手と膝をついて見ていて、さっきまで感じていた恐怖は、美しい景色の前にすっかりなくなってしまった。

凄い凄い!今度来るときは図鑑持ってこよう!どの魚が美味しいんだろう!

「喜んでもらえて良かったよ、きっと気に入ってくれると思ってた。図鑑に載ってるのは全ているし、載っていないのもいると思うよ。

この湖では、ゼロは入りたいと思わない限り、湖面を歩けるから、いつでも見に来ればいいよ。

そうだなぁ、気に入ったのだったらまず、水中を使ってやってみよう。」


わたちの変わった魔法と言うのは、魔力を凝縮出来る事だ。ぎゅうって纏めた魔力は、小さく、操作もしやすいし、動きも早く、効果も高い。


でも、一番変わってるのは魔力の器が6つある事。

普通は1つしか無いんだって。

だから1つの器で凝縮させ、後の5つの器にせっせと貯めている。

何か、そうしないといけないと思ったから。せっかく沢山あるし、溜めておこうと。

他の人は、1つの魔力の器の分だけの魔力だけだけど、わたちの場合、凝縮出来る上に貯めておける。

瞑想する時にしていた、こねこねぎゅっぎゅと魔力を練っていたのは、魔力を凝縮する事と、その凝縮された魔力を使う練習の為だったので、余った魔力は貯めていたのだ。

ミュラージェットのお陰?で、今までより濃く、小さく凝縮出来るようになった。

より鮮明に、自由に動かしやすくなったし、段違いに高性能になったのだ。わたち凄いって思ったけど、このお方のお陰ですね!

性能がいいから、こんな事もあんな事も出来るよって色々とやって見せてくれた。

その中でも、水中を結界で切り取って、風魔法で浮かせて見せてくれたうえに、体の周りに結界を張って、水中散策をさせてくれたのだ!魚になったみたい!結界凄い!


時間も忘れて教わった。


冬にまた会いに行くから、秋の間に何がしたいか、それにはどうしたらいいか、沢山考えて悩みなさい。

最後に、今迄通り5つの器にしっかり溜めておくように念押しされた。


じゃあ、これでお終いにして帰ろうか、と言われた時に、楽しくてすっかり忘れていたが、聞きたい事あったんだ!

成長してお兄ちゃんになったのか聞いたら、人型じゃないと話せないから、今日は人型になってるだけだって言われてみて納得したが、両方になれるのいいなぁ。

お兄ちゃん姿に可愛いお耳と、ふっさふさの三本の尻尾である!わたちも欲しい!帰ったらモコさんに相談してみよう!

ミュラージェットじゃ長いから、僕の事はレイでいいよっ言ってもらえた。ミューじゃないんだ。

わたちもルゥで良いよって言ったのに、ゼロはゼロだよって。ん?意味わかんない。まぁ、どっちでもいいけど。


来る時は大気に溶けて移動したんだって。

体が無くなるみたいで怖いと言ったら、転移で送ってくれた。

部屋に着くと、皆んながまだいたけど、じゃあまた冬にねってすぐ消えちゃった。

あー楽しかった!

ねぇ聞いて聞いて!と話そうとしたら、

一気に尿意と空腹と眠気が襲ってきた!

ギャン泣きしてしまったのは仕方ない。いきなり泣き出すから周りが慌ててたけど、ヤダヤダそれどころじゃない!

ギャアギャアしてる間にモコさんがお世話してくれて、結局食べながら寝てしまったらしい。


翌日、湖での事を色々聞かれたけど、そのうち魔法談義が熱く始まってしまった。

昨日から興奮し過ぎじゃないだろうか?皆んな盛り上がっているので、わたちはモコさんに魚の図鑑を取ってもらって一人ぽつんと昨日見た魚を探した。

次はいつ行けるかなぁ。





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