日本の林業ついて考えてみた
私は専門的知識はゼロでございますので、間違い等がございましたらご指摘ください。
ただちに修正いたします。
皆様こんにちは。加藤良介でございます。
今回は日本の林業の現状と未来を、考えてみたいと思います。
日本の国土のおよそ七割は森林です。
残りの三割に日本人一億二千万人が、肩を寄せ合って暮らしています。
そりゃ、細い道と狭い家に押し込まれるはずですよ。
ある意味で日本列島の本当の主人は森林地帯の植物たちと言えます。
さて、日本人はこの巨大な森林資源を有効活用しているのでしょうか。
答えは残念ながら否です。
戦後復興の一環で山野に大量に植林したのはいいのですが、貿易の自由化で安い外国産木材が入ってきた結果、日本の林業は採算が合わなくなってしまいました。
日本の林業が駄目になった理由は、政治、社会変化、材木価格など複合的な要素がありますが、現状ではビジネスとして機能していないという結論で良いと思います。
しかし、国土の七割を覆う森林資源を利用できないのはもったいない。
よく、日本は資源がない国などと言いますが、少なくとも木材はあります。しかも大量に。
今回は、どうすれば日本の林業がビジネスになるか考察していきましょう。
① 気の長い商売
林業は杉などの木材相手の商売ですから、植えた苗木がお金になるのは数十年後です。
待っていられません。
明日のご飯代はどうするんだよ。
お金になるのは、数十年前に植えた木材のみ。恐らく自分で植えた物ではありませんね。先代か先々代、もしかしたらそれ以前の昔の人が植えた木です。
考えてみますと、林業ほど長期的スパンで経営する商売もないでしょう。
こうなると林業は他に収入のある人か、先祖代々林業を行っている人 (ほとんどいないらしい)に限られます。
② 安い販売価格
時間はかかっても、将来的に大金に化けるのであれば投資先としては有望です。
販売価格が高ければ先行投資として山を一つ買って、林業に挑戦してもいいんですが、現状での材木価格は安値安定。
夢も希望もありません。
材木の自由化の向けて、採算性を上げるために林業の機械化、大規模化が試みられたようですが、結果は失敗。
高コスト、低収益という有様です。
仮に価格が上昇したとしても、野菜や果物とは違います。パッと作ってパッと売れるわけではないのです。高価格で安定してもらわなければ、追加の投資は難しいでしょう。
③ 会社経営とは違う
林業は山に根差した商売です。東京のオフィスで全体を統括しても失敗します。
現地に赴き、山と共に暮らすことが求められます。
さて、今から不便な山奥で林業やってみたいという人が、どれぐらいいらっしゃるでしょうか。
病院までは一時間、小学校は十年前に廃校。
少なからずの不便を強いられます。
これらを楽しめる精神性が求められます。本人が良くても家族は嫌がるでしょうね。
④ 新規参入がほぼ不可能
市場の活性化には新規参入が不可欠です。
仮に私がそれら諸問題を突破する画期的なアイデアが閃いたとします。
これは、行ける。林業やってみよう。
出来るでしょうか。残念ながら難しいですね。
まず山を買わなくてはなりません。その後に製材所。各種機器に従業員。一体、初期投資にいくらかかるのでしょうか。ラーメン屋のような気軽さでは無理でしょうね。
運よく、これら全てを格安で手放す事業者さんに巡り合えれば別ですが、希望的観測もいい所です。
山を買わずに請負業で運営すればいいかも知れませんが、林業は請負業に向いていません。なぜなら今の仕事がお金になるのが自分がの死んだ後だからです。
これで、請負業は無理でしょう。相手さんのいるお話ですからね。
林業は自分の山で代々行うことが必須です。さらに子供や孫も林業に従事することが求められます。
これは、初期投資金額以上のハードルでしょうね。
大儲けするなら黙っていても後を継いでくれるでしょうが、現状、採算ラインを割っているわけですから、普通は廃業です。
こうして世界的に見ても豊かな森林資源を持っている日本ですが、その資源を生かせていないのが現状です。
希望の無い話ばかりしてきましたが、ここからはどうすれば林業を再生できるか考えましょう。
⑤ 昔ながらの林業は無理
これまで述べた通り、現状のシステムではジリ貧です。
少子高齢化の上に地方から大都市への人口流出の現状で、山奥に暮らして(無理)、自分の山で(無理)、親子代々(無理無理)で林業。
とても、実行可能とは思えません。
極端な話、山で暮らさず、他人の山で、自分だけで行うようにしなければならないという事です。
可能なのでしょうか。
かなり困難ですが、方法を考えてみましょう。
⑥ 大規模な組織運営
これまで述べた通り、自営業では不可能でしょうね。かと言って今までの様な組合方式でも利益が出ないことは分かっています。
多くの山を所有する合弁会社のようなものを設立したらどうでしょうか。
それでも利益が出るまで数十年掛かるでしょうね。銀行が「うん」と言うとは思えません。
こうなると、企業でも無理です。
細々としたNPO法人で頑張るか、それ以上の力技で何とかするか。
⑦ 国営化
考えられる上で最高の力技です。
資金は税金ですから、ある意味で潤沢です。
法改正も同時に行えるので、足枷となっている法律的諸問題も一気に解決できるでしょう。
しかし、政治家や官僚の介入受け、コスト感覚の乏しい国営企業。時代に逆行する、税金の無駄使い以外の何物でもありません。
国営企業が成功するためには、林業について相当の知識と問題意識を持った政治家と官僚が必要です。しかも、代々。
無い物ねだりでしょうね。
⑧ 買い上げ方式
何を買い上げるのか。
ズバリ。山と材木です。
国なり財団なりが、一括で活用されていない山を買い上げます。
その後、安い価格で新規参入したい個人、会社に貸し出し。そこから産出される材木を一定価格で買い上げます。
財団は買い上げた材木を市場に流します。
当然、大赤字ですが、これを税金で補填します。
これを約五十年ほど続けましょう。
その間に、国内の需要を作り、同時にコストを削減しましょう。
コストさえ下げることが出来れば、需要は確実に存在するので運営できるでしよう。と、言いたいところですが、これは無理筋です。
かなりの高確率で補助金体質のぶら下がり林業になるでしょう。補助金をうち切られたらゲームセットです。
⑨ 地域密着型の林業
結論としてはこれでしょう。
山間に林業タウンを作りましょう。そこに住み着いて、子々孫々、自分の山の面倒を見るべきです。
林業は木を植えて、育ったら切ればいいだけではありません。自分の山を歩き回り、その特性を理解して、山のお世話をしなければならないからです。
山を借りておこなう請負業や、資本投下型の会社経営では手間のかかる山のお世話まではしません。
これしかないと思うのですが、この方法はまたもや無理筋です。
これは、先に否定した昔ながらの林業です。
それが出来ないから困っているわけですからね。
ビジネスモデルとして崩壊しかけている林業に、子々孫々携わりたいなどと誰が考えるでしょうか。普通はいません。余程の報酬が無い限り。
唯一考えられるのは、今現在、林業をやってらっしゃる方で、跡継ぎに恵まれており、なんとか採算ラインで踏みとどまっておられる事業者さんだけでしょう。
これだけの好条件があれば、ワンチャンあるかもしれません。
⑩ 百年後も必要とされるビジネスなのか
今植えた杉の木がお金になるのは、早くて数十年後です。
これが林業最大のネックです。
数十年後、我々は木材を建材として利用しているのでしょうか。
確信をもって答えられる方は少ないでしょう。
数年前に3Dプリンターを使った建築物が紹介されていました。安く速く作れることが売りでした。
現状では実用化にまでは至らないようですが、それでも数十年後には一般的な建築方法として確立しているとみるべきでしょう。
他にも新しい建築素材が開発されているでしょう。
その時になって、木材で建物を建てる方法は、お金持ちか、物好きかのどちらかになっているかもしれません。
少子高齢化も進み、国内の需要は見込めません。海外に売り出すしかないでしょう。
果たして海外製と戦えるのでしょうか。
心もとないと言えます。
⑪ 復興への要素
林業が復興するには。
一つ、価格が高値で安定している事。
一つ、百年後もビジネスができる見通しがある事。
一つ、子供や孫に至るまで、林業に従事させることが出来る事。
この三点が必要でしょう。
無理ゲーですね。
んな事、出来れば誰も苦労致しません。
こうして、山林には手入れされなくなった杉が立ち枯れ、大雨が降れば保水力のない植林地は地滑りを起こすでしょう。植林地は植物の多様性が無い為、緑の砂漠とも呼ばれ、生態系には悪影響を及ぼします。
しかし、手入れをする人員も予算もありません。
多くの山が放置され、日本の林業は崩壊するでしょう。
今まで通りのやり方では、労多く、益少ないので事態を打開できません。
⑫ 建材以外の利用方法
言うは易し行うは難し。
そんな画期的な手法が開発できるなど夢物語です。
木材は、太古の昔から人と寄り添ってきた素材です。今更、コペルニクス的発想の転換から、大発明がもたらされるなど、妄想でしかありません。
科学絶対主義の人が言い出しそうなことです。この世は小説じゃないんですから、そうそう新機軸など生まれません。
しかし、何もありませんでは芸がないので探してみました。
その一つがバイオマス発電の燃料です。
簡単に言ってしまうと、木材を燃やして発電する方式です。
近年では注目されている発電方法ですが、何のことはない、百万年前ぐらいから人類が使用している、一番簡単なエネルギーの取り出し方法です。
燃料に使うのであれば、建材用の木だけではなく、雑木林の木でも良い訳ですし、価格が安ければ燃料代が安いという事になりますので、発電には有利になるでしょう。
運送費などを考えると、都市部での発電に使うのではなく、地方に小型の発電所を建造してそこで消費すると良いかも知れません。
発電だけではなく排熱を利用したコージェネレーション・システムを上手く併用できれば、従来の発電方法とも戦える変換率を持っています。難しいですけど。
二酸化炭素の排出量についても、植林することにより二酸化炭素の量が釣り合いの取れるカーボンニュートラルになります。
バイオマス発電で燃焼される木材は、燃えやすくするためにペレットと呼ばれる粒上の燃焼材に加工されますが、ここにも技術改良の余地は大きいでしょう。
これならば、資本の大きな企業が投資すれば、林業再生の道があるかもしれません。
しかし、目に見える設備投資の動きとしては鈍いですね。大手の関西電力さんでバイオマス発電所は現在、三カ所だけです。
恐らくですが、実用実験中なのでしょう。良く言えば今後に期待です。
そして、この方式を取れば林業が果たして再建できるのかと問われれば、「?」ですね。
付加価値のない、ただの燃料として買い叩かれる未来が見えます。
まぁ、手間がかからない分、採算は取れるかもしれませんが。
⑬ 究極の方法
恐らくですが、市場経済による自発的解決は無理です。
頑張って延命がいい所でしょう。
ビジネスとして崩壊している上に、先行き不透明なのですから当然の結果です。
残る手段は、強制的に解決するしかないでしょう。
どうするのか。
一定の人たちに問答無用で林業をしてもらいます。職業選択の自由はありません。
形を変えた奴隷制度です。
このような条件でも働いてくれる人たちを集めなくてはなりません。
どうやって。
日本人には無理です。憲法違反ですからね。
ぶっちゃけ、移民の皆さんしかいないでしょうね。
日本に住む条件が、林業に携わる事。
アメリカで市民権を手っ取り早く得るために、米軍に志願するのと同じ手法です。
山間の限界集落に、移民の人たちの村を作り、林業をしてもらいましょう。
母国より安全な日本に住めると言うのが、報酬です。
実績を上げれることが出来れば、将来的には日本国籍の取得も可能にするべきなのかもしれません。
多くの問題が発生するでしょう。林業が崩壊した方がましな結果になるかもしれません。
ただ、私は現状ではこれぐらいの、極端な手法でないと、日本の林業は復興しないと考えます。
⑭ 最後に
ここまで色々考察してみましたが、結局は膨大な森林資源を持ちながら、活用できない宝の持ち腐れのままが、オチかも知れません。
破産したお金持ちの資産をよくよく調べてみると、活用できていない優良資産が見つかる事が多いそうです。
日本が、そのお金持ちと同じ轍を踏まないことが求められています。
終わり
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
ご意見、ご感想などございましたらお気軽にどうぞ。基本的に返信いたしております。