31 閑話 天使をまとうもの
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感謝の気持ちを込め、セルマが巻き込まれる理由を書きました。
彼女の巻き込まれはなぜ起こるのか――
地球の神は万能ではありませんが、無能でもありません。
同じ神として、そう感じています。
ただ、多くのモノに好かれやすい彼女を見守ることは、地球の神には荷が重かったのです。
人助けが好きな妖精に、いたずら好きで困らせることばかりをする妖精――
神の遣いに魔の遣い――
生を終え、行き場を失くした魂――
神聖なモノも邪悪なモノも、彼女を好んでしまうのです。
特に、彼女が生まれた日本という場所がまずかったのかもしれません。
自国の八百万の神に妖怪だけでも手一杯なのに、他国の信仰までどんどん取り込む民族でしたから、地球の神も大変だったのでしょう。
日本には、見えざるモノがうようよしていました。
彼女の気を引こうと、わざと目の前にポンと他人の財布を落としてみたり、変な人間をけしかけたりもよくしていたようです。
中には彼女の魂を近くに置きたいと、彼女の命さえ狙うモノもいたとか――
そんな彼女を守ることは、神とはいえ確かに困難を極めたかもしれませんが、さすがに二度も失敗した地球の神に、私は呆れています。
実際、私の司る世界に来てからも、彼女を構おうとする聖も邪もたくさんいました。
前世の彼女が地球で生きた20歳になるまで、完璧な守護で私が彼女を保護しましたが、一生そうするわけにもいきません。
地球の神に、彼女の日本人としての人生分を守らせねばなりません。
理を崩し、彼女の魂を彷徨わせてしまいかねませんから。
しかも、彼女に力を授けると言った時、あの子ったら――
『苦しんだり、悲しんだり、困ったりしている人の、力になれるような能力がほしいです。次の生では、事件に巻き込まれる前に、相手の方を助けたいと思います』
って、言ったのよ! なんて良い子なのかしら!!
あ、あら。失礼いたしました。
とにかく、地球の神の尻を叩きながら、彼女を見守るしかありません。
彼女の肉体が衰えはじめた時には、私がしっかりと守りましょう。
それまでは、地球の神の領域を侵さない程度に、地球の民が信じているという『天使』を彼女にまとわせるとします。
清い魂を持つ彼女の背に、同じく清らかな翼があることを、感じる者がいるかもしれませんね。
まだ、私が直接的に助けることは不可能ですが、万が一、また地球の神が間の抜けたことをした時には、私がすぐに彼女を助けましょう。
それでも、これ以上、彼女が苦しいことに遭遇してほしくはありません。
事故に遭う度、さぞ苦しくて痛かったでしょう。
ですから、この世界のあの人の生まれ変わりを、彼女の側に……。
彼女の今世の生をまっとうさせることが、私の使命なのですから――