アサシンギルド
城下町アランドール。
それがここの名前らしい。不思議なことに文字が読める。初めて見る文字のはずなのに。
しかしそんな疑問はどうでもいい。
「俺にどうしろってんだよ……」
城から蹴り出すように追いだされ、街をウロウロと歩く。知り合いもいなければ銭も無い。
元の世界に帰る方法も何にも聞く間もなく追い出された。途方に暮れるしかすることもない。
レンガ調の街並み。こんな状況でなければ観光気分でウキウキだっただろう。しかし今は俺に余計な孤独感を教えてくるだけだ。
歩いていたら街はずれに着いた。人通りもほとんどなく、ガランとした雰囲気があり、風がよく通る。
置いてあった空樽に腰をかける。元の世界では滅多に見ない樽ではあるが、この街並みにはマッチしているなぁと、そんなことを思った。
「ここにいらしたのですね、ユウジ様」
「ひぃっ!!」
肩越しに突然声をかけられる。情けない声が出てしまった。
「お探しいたしました。こんなところにいらっしゃったのですね」
安堵に近い声を出し、その女は言う。
リリアンだ。城にいたときに色んな案内をしてくれたメイド。
……だけど俺は城を追い出された人間だ。理由は知らないけど。
そんな俺の所に城で働いてる人が来ていいのか?
「……わたくしは、ユウジ様に仕えろと命令されました。そしてそれもまだ取り消しの命令を受けていません」
「リリアン………!」
あまり人の感情に機敏では無い俺でもわかった。彼女は俺を心配し、理由をつけて会いに来てくれたのだと。
「リリアン……!!」
知らない土地に勝手に呼ばれ、何も説明されず歓迎され、挙げ句の果てには追放じみたマネをされ、知らない街を数時間も当てもなく歩き続けて。俺の心は既に限界だった。
涙が溢れそうになる。
リリアンは天使ではないか?
ーーグゥゥゥ
腹が鳴った。
隠しようもなく、俺の腹から鳴った音だった。
「…………フフッ」
彼女が笑った。
もしかしたら、彼女の笑った顔を今初めて見たかもしれない。
「買っておいてよかったです」
リリアンはどこからか紙袋を出し、中からパンを一つ渡してくれた。
「……いただきます!」
美味かった。昨日の料理の何倍も美味しく感じる。
そんなパンに齧り付いている俺を見ながら、彼女はいくつかのことを教えてくれた。
例えば、あの歓迎は勇者の忠誠心を国に持たせるためのもの。
例えば、アサシン含む【暗殺職】は忌み嫌われて冷遇されている。
例えば、勇者は半ば対国兵器として機能している。
そして、俺が特に大事だと思ったことがこれ。冷遇されてきた暗殺職が適性と判断された人間を集めた『アサシンギルド』という寄合の存在がある。
俺は……ここに行くしかないんじゃないか?
するとリリアンは軽く微笑み言った。
「そう仰られると思っていました、ユウジ様。ここに辿り着いたのも、ユウジ様の星周りがその方向へ向いたのでしょう」
リリアンはそう言い終わると、座っていた空樽の一つ隣の民家の小窓を軽くノックした。
すぐにその窓が数センチ開き、中から男の声がする。
「……何をお探しで?」
「17番の紅茶。砂糖付きで」
リリアンが男の問いに答えると、カタリと音を立てその民家の扉が開いた。
「ようこそユウジ様。アサシンギルド、マグノリアへ」
リリアンは、歓迎する様にドアを開けた。
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