禁忌の対価
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私の家は錬金術の名家として有名だった。国の為に色々なモノを錬成し、忠実だった。なのに、国は私達が国家反逆と突然言い、兵士達を差し向けた。
ああ、お父様が血だらけになりながら自分はいいから家族は助けてくれと叫びながら体の皮を剥がされ首を落とされた。
お母様は何人もの男に犯されながら殺してくれと泣き叫んでいる。
産まれたばかりの弟は体を玩具を壊すようにバラバラにされ、床に転がっている。
私はお父様とお母様に絶対に声を出すなと、隠し通路に放り込まれた。私は手を口に当て、叫ばない様目を見開き家族の無残な死を唯々見ていることしか出来なかった。
最後にお母様が人形の様に事切れても、男ども……この国の兵士達はお母様の体を弄び、笑っていた。最後に兵士達は屋敷に火を放ち全てが燃えていく。家族も家も思い出の品も。
私は隠し通路をふらふらと彷徨う様に歩き続けた。お父様達に託された禁忌とされる錬金術の本を抱え込みながら。
着いた先は森の中の小さな小屋。小屋の中には沢山の器具と錬金術の本があった。それを見た私は叡智を求めた。家族を生き返らせるための叡智を。そして、この国に復讐する為の人形を。
ホムンクルンス擬。私が最初に取り掛かったのは私の命令を忠実に聞く人形。何度も何度も失敗した。だが、良い材料が手に入りやっと成功した。この国の若き英雄と言われた男の体だ。この国は火葬はせず土に埋めて土に還る風習だ。新品同然で手に入った。埋められたその夜に土を掘り返し、死体を持ち帰ったから。
「ルクス、お前の名前はルクス。私の忠実な僕」
「はい、ルーナ様」
ルクスは優秀だった。錬金術の知識を直ぐに覚え、私の助手の様なことをする。それだけじゃなく、剣の腕前も相当だ。
ルクスと私は国の至る所に錬金術式を描いていく。私達がやる事は錬金術を使った蘇生術。錬金術には対価がいる。それがこの国に住む人間全てだ。それでも足りないかもしれないが、私の復讐は成される事は確かだ。この国ごと殺してしまえばそれで良い。
「ルーナ様、誰を蘇生させるつもりなんですか?」
「家族。私の家族はこの国に奪われた。だから私のやる事は家族を取り戻す、どんな犠牲を払っても」
満月の夜、私達は国の都市の真ん中にある時計台の上に立っていた。瞼を閉じると、今でも鮮明に思い出す。体の皮を剥がされながら首を落とされた父。死んでも犯され続けた母。玩具のようにバラバラにされた弟。
「ルーナ様、大丈夫ですか?顔色が悪い」
「ねえ、ルクス。私が今からやる事はいけない事?」
「ルーナ様の心情を考えれば仕方ないのかもしれません」
「関係のない人達も全員死ぬんだよ?」
「だとしても貴女はやめないでしょう?」
「正解、よく私の事を分かってる」
足元にある錬金術式をルクスと一緒に発動させる。錬金術式は次々と発動し、この国に住む全ての人間の命を奪ってゆく。
そして錬成が終わり、錬金術式の中にいたのは三匹の化け物だった。対価が足りなかったのだ。
「……ルクス、三人を苦しまないように殺して」
「分かりました」
家族が生き返るなんて無理だと分かっていた。それでも細い糸の様な希望を捨てきれなかった。
「ルクス……私も殺してよ」
「嫌です。私は貴女の僕です。貴女がいなくなったら私は守るべきものを失ってしまう
」
「もう、疲れたの。途方もない対価を支払っても家族は生き返らなかった。もう家族の所に逝かせて」
「逝かせません。ルーナ様、対価は俺が支払います。だから生きてください、亡くなった家族の分まで生き抜いてください」
「じゃあ、私が生きるための対価を一生払い続けて。私が死ぬまで私の側にいて」
「はい、喜んで」
そして私はルクスの手を取った。
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