敬具 君へ宛てた手紙
はるか上空から、お日様の光がさしてくる。
心地よい風が、頬をなでていく。
世界が平和になって、美しいリトルシアにはいつもどおりの時間が流れていた。
もう手紙を送る必要もなくなった君に、私はいまだ時折、手紙を送る。
喧嘩したとき。
『ごめんね。まだ怒ってる?』
とてもうれしかったとき。
『ありがとう。本当にうれしい』
そして、面と向かって言えないとき。
『カイ、愛してるわ』
不思議ね。顔を見ては無理なのに、文字にすると素直に言えるの。
君が美味しそうにご飯を食べてくれるのを見るのが好きよ。
一緒に歩くとき、小さい私に歩調を合わせてくれるのが好きよ。
脱いだ服をすぐにソファーに投げてしまう、困ったところだって。
たくさんの「好き」があふれている、私の日常。
勇者と異能力者は、たくさんの夫婦と変わらない毎日を送るようになった。
私の小鳥が『愛してるわ』と言ったあとに、同じように「俺も愛してるよ」と抱きしめてくれる、その温もりが確かにここにある。
朝目覚めたときに君がとなりにいる、泣きたいほどの幸せを。
文字に変えなくても、すぐに言葉を伝えられるこの距離を。
平穏がどれだけ素晴らしいかを、私たちは痛いほど知っているから。
今、私の理想郷に、足りないものはなくなった――。
★★完結★★
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