拝啓 君へ宛てない手紙
「私、なんの取り柄もないから」と自分を笑ったあの日。
君は「そんなことはない」と本気で叱ってくれた。
精いっぱい、この小さく無力な手をほめてくれた。
空を見上げて想うだけでは、叶わないことがあるのを知っている。
側にいなければ、できないことがあるのも知っている。
いつだって、魔法のように奇跡が舞い降りたりはしない。
それを信じるには、大人になりすぎた。
だから私は神様には祈らない。
この言葉は、君に届かなければ意味がないのだから。
離れた場所で、戦い、傷つく君に。
今は心から思う。
この手が、文字を生み出すことが出来て良かった。
私は君を助けることができる。
いつも。
どこからでも。
言葉の力で君に寄り添うことができる。
抱きしめてはあげられなくても。
涙を拭ってはあげられなくても。
君の側にいられない哀しみを。
どれだけ大切に想っているかを。
こうして励ます言葉にかえて、つむぐことができる。
だから今日もここから、君に言葉を贈ろう。
君が、心から笑えるように。
前を向いて進めるように。
精一杯の言葉を贈ろう。
それしかできない悔しさを、
すべて「大丈夫だよ」という言葉にかえて――。