第一話
なんてことない普通の人生。これまで普通に生まれて、普通に学校に行き、普通に生きていた。
だけど、それも今日で終わりらしい。
駅のホームを見ると、驚いてる人。目を背け、見ないようにしている人。手を伸ばし助けようとする人。気づかずこっちを見てない人。
そして、嘲笑ってる人。
死ぬ直前は時間が止まって見えるのは本当だったようだ。今は空中にいるのに、周りのことがよく見える。もちろん左から来る電車も。
どうしてこうなったのだろう。現状に満足せずに、異世界に行きたいなんて思ったからだろうか。それとも、友達に『一回死んでみたいなーw』と冗談を言って、それを本気にしたからだろうか。
もちろんわかってる。僕の近くにいた人は親友だけだと。親友以外僕の背中を押せなかったこと。
・・・まあ、そんなことを考えてももう無駄か。どうせ死ぬんだし。もし記憶がそのままで生まれ変われるんだったら魔法、使ってみたいなー。
あ、横から電車が。ちょ、ま、やっぱ死にたくな
そして僕の意識は、強い衝撃により無くなった。
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・・・何この暗い場所。死後の世界かな?なんかあったかいし、浮遊感があるし。気持ちいい。ずっとこのままでいいや。
うわ!なんか急に明るくなった!こっちはいい気持ちだったのに。
何しやがる!そう言おうとすると
「うぅあぃあぁ!」
変な声が出た。と同時に周りがうるさくなった。
なんだこの舌足らずな口は!まるで赤ちゃんみたいな、、、ちょっとまてよ?
手を上げてみる。視界に赤ちゃんの手が入る。手を動かしてみる。赤ちゃんの手が同じように動く。
なるほど。どうやら僕は赤ちゃんに転生してしまったらしい。
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転生してから一ヶ月。いろいろとわかってきた。まず、ここは日本ではない、というか前の世界とは別の世界らしい。
僕の母(だと思われる人)が魔法を使っていた。
空中から水を出したり、何もないところから火を出したりと、前の世界ではありえない現象が起きていた。
あと、言葉も違った。どこぞの小説のように最初から言葉がわかるようなチートは僕にはついていないようだった。だけど、何故か数字の読み方(だと思う)は同じらしく、よく「1000☆#」「500☆#」と言っていたので、「☆#」はお金の単位だろうと推測はできた。
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転生してから4年が経った。どうやら僕の親は行商人だったようで、僕が立てるようになると、すぐ町を出た。
言葉もだいぶ分かるようにはなってきた。ちなみに僕の名前はフィナ。父がグレッド。母がミア。お金の単位はテソだということがわかった。
ん?名前が女っぽいって?そうだよ!この身体!ついてなかったんだよ。何がって?ナニだよ。そう、今世の身体は女の子なんだよ。
・・・はぁ。凹んだ。マジ凹んだ。
ただ、いいこともあった。僕には魔法の才能があったのだ!
行商人という性質上、馬車に乗って進むのだが、たまに魔物が出てくるのだ。それを母が魔法で倒してるのをみて、真似して詠唱してみると、1センチにも満たない炎の玉が飛んでいったのだ。
まだ4歳だったこともあり、親は天才と褒めてくれた。そして僕は母から魔法を学ぶようになった。
あ、そうそう。魔物を倒すと、魔物は特定の素材と魔石を残して消えていく。
これを見たときにはびっくりした。すごい火傷を負わせても、倒ししたらきれいな素材が残るんだから。
消えた死体はどこへ行ってるのか聞いてみても「そういうものだから」と言われた。
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転生して14年。ボクは母に似たのか身長があまり伸びず、今は150あるかないかくらいだ。
母に教わった魔法も使えるようになってきて、もう少しで母を超えれるくらいにはなった。
6歳からは父に商売を教えてもらっている。
ただ、この前商売に失敗して財産のほとんどがなくなってしまった。
ボク達の生活は一気に苦しくなった。1番変わったのは食生活。これまで朝は小麦のパンに暖かいスープが普通だったのに、今では硬い黒いパンに塩と野菜を少し入れただけのスープになった。他にも、宿屋に泊まるお金を節約しようとして野宿をしたり、雑用をやってお金を稼いだりとすごく大変だ。
だけどあと少しで立て直せる。父が稼いだ金を使って王都で大口の取引をしたのだ。
利益は少なくとも50万テソ。なにも仕事をしなくても軽く4年は生きていける金額だ。失敗する可能性も低いらしい。
そして今タグラト王国の王都、バトツに来ている。
「うわ〜!すごいね!夜なのにまだこんなに明るくて人が多いなんて!」
「ええ。ここには迷宮もあって、昼夜人が絶えないのよ。」
「迷宮か〜、ボクも行ってみたい!」
「そうね、お父さんが失敗したら冒険者になって迷宮で稼ぐのもありかもね。あと、『ボク』なんて言わない!」
「はぁ〜い。でもそれじゃあ迷宮は諦めないとだね!お父さん今日は失敗しないって言ったから。」
「ふふっ。そうね。」
そんな会話をしながら歩いていると宿屋街を通り過ぎてしまった。
「ねぇ、お母さん。宿屋街通り過ぎちゃったよ?どこに向かってるの?」
「私達が今日寝る場所よ?」
え?この先に宿屋なんて見えないけど、、
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「ここが私達が泊まる場所よ。」
お母さんはスラム街に入り、ボロボロの家を見てそう言った。おかしい、まだお金に余裕はあったはずだ。
「ねえ、まだお金あったよね?なんで宿とらないの?」
「それはね、もしお父さんが失敗したらお金がなくなっちゃうでしょ?そのときに備えて今日だけはお金を使わないことにしたの。」
「へぇ、だからか〜。」
なんか釈然としないけどまぁいいか。
ボクはスラム街の家に入ると寝れそうなとこを探してすぐに横になった。寝心地は最悪だったけど、疲れていたからか、すぐに眠りについた。
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・・・ん?なんか体に違和感がある。特に首と手首に。なんだろう、、、
「おいてめぇ。おきちまったじゃねえか!」
「知らないわよ!あなたが手間取ってるからでしょ!」
「なんだと?!まあいい、後はこの足枷をつけるだけだ。」
・・・え?なにこれ、お父さんとお母さんがボクに足枷をつけてる?
「・・・お父さん?お母さん?何してるの?」
夢?ああそうか。きっと夢なんだな?
「ああ?!見てわからねえのか!このバカがっ!」
「きっとあなたに似たんでしょうねぇ。バカなところとか。ふふっ」
ああ、なんでひどい夢だ。ボクのお母さんとお父さんはそんなこと言わない。
「はぁ、そろそろ現状が分かってないこの娘に教えてあげましょう?」
「ああ、そうだな。おいフィナ!お前は今から売られるんだよ!実の母と父によってなあ!ぎゃはははははは!」
ちがうよね?そうだこれはゆめなんだから。
「あらあら。まだ理解してないようですね。もう一度言いますよ?あなたは私達に売られるのです。」
「そんな事ない!ボクのお母さんとお父さんはそんなこと言わない!そんなことしない!お前達は誰だ!ボクのお母さんとお父さんの格好をしてそんなことを言うな!!」
「いえ、私はあなたを産んだあなたのお母さんですよ?」
「違う!お前は本当のお母さんしゃない!お母さんはボクに優しく魔法を教えてくれた!料理も!」
「魔法や料理を教えていたのは奴隷としての価値をあげるためですよ?魔法が使える奴隷となるとかなり高値になりますからねぇ。」
「そんなことない!お父さんも計算教えてくれた!」
「そうだな、計算できる奴隷の価値もたかいからな。」
え、じゃあまさか。ほんとうに。いや、そんなはずは、
「やっと理解したようですよ?このバカ娘。」
「ははっ!やっと気づいたか!そうだよ俺達はお前を売るためにお前を作ったんだよ!はははははは!!」
え、だって、それじゃあこれまではぜんぶうそだったってことなの?
「ちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうぼくのおやはそんなんじゃないちがうそうだおまえらはやっぱりぼくをだましてるんだろそうだそうにきまってるおまえらはおまえらは」
「あーあ、壊れちまった。まあいいか。どうせ向こうでも壊されるんだし。じゃあな。50万テソ。」
ガンっ!
あ、いしきがしずんで、、、
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ん、ここは、、、
あ、そうだった。売られたんだった。
「☁︎☆♤♭#¥○=〒」
変な部屋だなぁ。なんか前で喋ってるけど、どうでもいいや。
「%*#^~>^£>||~*=#%$>」
っ?!ちょっと痛かった。なんだったんだろう。まぁいいや。疲れた。寝よう。
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どうやらいつの間にか奴隷になっていたらしい。
起きると
「おまえは今日から奴隷だ!これから奴隷としての教育をしていくから覚悟しとけよ!」
って言われた。
めんどくさいから「やだ」って答えたら棍棒みたいなので叩かれそうになったけど周りが止めてた。
どうやらボクは上玉だから傷をつけないように言われてるようだった。結局鞭で叩かれたけど。
その後は叩かれることはなかった。やることなんて自分の主人をご主人様と呼ぶことと、言葉遣い。マナーをちゃんとできるようになることくらいだった。
それが出来たらその後からご飯を食べて、適度な運動をすれば何も言われなかった。
そして何日か経ってボクは一人目のご主人様に買われた。
気がついたら誤字報告や、文がおかしいなどを指摘してもらえたら嬉しいです。もちろん感想を頂ければ作者がすごく喜びます。
2020/06/14少し修正しました。
友達→親友
2年が経った→4年が経った
あとは誤字脱字を直しました。