諸沢編
梅子は諸沢に声をかけた。
「すみません。お話したいのだけど」
諸沢は「誰っすか?このおばあさん」と言うと、柏木警部はすかさず
「内海梅子さんです。探偵好きの変なおばあさんです」と言った。
「まぁ、誰がおばあさんですって?まだ、若いわよ」梅子は憤慨した。
そんな梅子をほっとき柏木警部は、
「失礼ですが、横水さんが殺害されたのをご存知ですよね」
「ええ、勿論です。ただ、彼は悪だったのでしかたないですけどね」
「悪って、あなたは、横水さんから共同経営を持ち掛けられて金をだまし取られたのよね?怒ってないの?」
梅子が問いただすと、諸沢は
「確かにそうです。しかし、殺すほどの動機はありませんよ。僕は恨みなどありません」
静かにそう言ったが、声は憎々し気だった。
「本当に、殺す気なんてなかったですか?」柏木警部は畳みかけるように言った。
「警部さんもしつこいですね。殺す気ないったら、ないですよ」
もう、うんざりした表情と声で諸沢は言った。
梅子は「有難うございました。また何かありましたら聞きに行きますから」
と言って諸沢の元から離れた。
「柏木警部、恨んでないって言ってたけど、そうとうの恨みがあるわ」
「そうですね。山口といい諸沢といい恨みはやはりありますよ」
そして、最後の容疑者候補となっている小泉春生のほうへ行った。