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共にあらず、故に共にあり  作者: ひじゅん
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第1章その四

「大したうでだ、通り名は伊達じゃないってことか」

 諸々の準備を進める中、同行を申し出た若い兵士がカミナに話しかけた。

「あまり好きじゃないんです、あれ」

「そうか?これぞまさしくといった物だと思うぞ。俺にはあの一瞬の踏み込みがほとんど見えなったし、多分他のやつもそうだったと思う。ああいうのを神業とでも言うのかな」

 あの一連の動きに一つの裏があることを、それゆえに自分の通り名を肯定しないことを、カミナは言わなかった。

「あんたのおかげでやつらを捕まえることができたんだ。もっと胸を張ってもいいと思うぞ」

「まだ、これからが本番です」

 そうだな、と兵士は頭を軽くかいた。

「じゃあ、次も当てにしてるぞ、用心棒!」

 兵士は軽くカミナの背を叩くと準備に戻っていった。真っ直ぐな、いい人なんだな、とカミナはその明るさを、少しだけうらやましく思った。

 荷台にカミナ、人質役の盗賊五人とそれらの見張る五人の兵士、馬に乗る盗賊の青年の合計十二人を乗せて馬車の準備は整った。

「では、作戦通りまず我々が先行して陽動しますから、後詰の皆さんは合図を確認してから突入してください」

 一応の先行部隊隊長となったカミナにうむ、と答えた初老の兵長が答えた。その後ろには、門番を除いて動かせる兵士十四名を連れていた。

「つらい仕事を押し付ける格好になってすまないな。」

「謝るのは自分の方です。自分の、作戦と呼ぶのも危ういものに正規の兵士を巻き込んでしまって」

「いや、私だって君の考えに賛同した一人だ。ついていく者たちも、強制ではない、君の力を信じて自分達で行くことを選んだんだ。気に病むことはない。ここは首都リュウシンではないんだ、仮に何かあっても君を責めはしない」

「…すみません、いえ、ありがとうございます」

 カミナはリュウホウの町が好きだった。町と呼ばれているが、首都よりはるか南に位置するこの地を田舎と侮蔑的に呼ぶ者もいた。けれども豊かな資源に恵まれ、南方の交易拠点としてさまざまな品が並び、何より温かい心を持った人々が出迎えてくれるここは、彼にとって大切な場所なのだ。それを踏みにじる者には、どんな手を使ってでも報いを受けさせる、とカミナは決意を新たにした。

「では行ってきます」

「武運を」

お互いに礼をして、カミナは荷台に乗りこみ、兵長も部下たちに進軍命令を出した。それを合図に、馬車と兵士たちは門をくぐり、盗賊たちの潜む地へ進みだした。


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