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共にあらず、故に共にあり  作者: ひじゅん
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第1章その二

「なぜ…計画がばれた…?」

 青年は搾り出すような声で用心棒に聞いた。被害にあった村の目撃者の証言、芋蔓式の釣り出し、馬車の不自然な音、中から聞こえたかすかな息遣い。すべて説明はできるが盗賊相手に教える気は用心棒には微塵もなく、問いを無視した。

「お前らは斥候に過ぎないはずだ、本隊はどこだ」用心棒はただ要求を突きつけた。

「教えるとでも?」盗賊の青年は反抗的な態度を返す。門をくぐるときにいた好意的な彼はもうどこにもいなかった。

「盗賊だって信用で成り立ってる組織だ。頭には恩がある。裏切れねえ」

 仲間の一人がそう言うと他の面々もそうだと合いの手を打つのを聞いて、用心棒は鼻を鳴らした。汚い犯罪者の癖に気に食わない、さっさと仲間割れしてくれれば楽なのに、と内心悪態をついた。彼には、正確には彼の依頼主には時間がなかった。

「分かっているのか?このまま捕まれば、十年以上の強制労働だ。風通しの悪い鉱山か、森人との境界近くの密林か、どのみちあまりいい目には合わないだろうな。だが、協力するならずっと短くて済むし、作業内容も変わるはずだ」

 用心棒は淡々とした口調で告げ、背中の袋から小さな木の板を取り出した。

「これが何か分かるか?」

 その板を見た青年は驚きを隠せなかった。この状況で出せる首都発行の証の印が押された札などひとつしか思い当たらなかった。

「減…罪符…」

 減罪符、罪を犯した者が関与した事件の解決に協力した場合などにその証として渡されるもので、その名の通りこれがあれば刑期を減らせるのだ。

 青年は一瞬分からなかった。これはたしか首都などの重要な地域の守備警備隊や功績を挙げ信用された兵士にしか使用できないもののはず。だがこの男は用心棒だ。一応は軍属として扱われるがこの札を扱える用心棒は数えるほどしかいない。

 まさか。

 思い当たる人物が一人だけいた。弱冠十六で用心棒となり、その一年後に減罪符の使用を許された人物。

「カミナ…『瞬き』のカミナ…」

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